角川文庫キャラ文通信
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ちょっと不思議で、絶対に泣ける、極上の恋愛ミステリ『君の想い出をください、と天使は言った』が今月、角川文庫より刊行されました。作者の辻堂ゆめさんは、2014年に『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、翌年に同作単行本でデビュー。いま、最も注目されている書き手の一人です。本作への思いをたっぷりうかがいました!
――まずは、この作品が生まれたきっかけを教えてください。
辻堂:「今の辻堂さんにしか書けない話を」と、編集者さんから執筆のご依頼をいただいたのがきっかけです。当時、私は会社員と作家を掛け持ちする社会人3年目でした。打ち合わせの中で最初に決めたのは、「20代半ばになり、社会人として生活することに少し疲れてきた主人公が、ストーリーを通じて前向きになれる話」というテーマです。そこに私の好きな不思議要素やミステリ的展開を絡めていくことで、《銀行員として働く3年目の女性主人公が、“天使”の介在により突然2年分の記憶を失くす》という本作の設定ができあがりました。「絶対にイケメンを登場させてください」という編集者さんからの謎要望(?)もしっかり反映されています(笑)。
――なるほど! 作中では、主人公が銀行での業務に悪戦苦闘するシーンも描かれ、お仕事小説としても、とても面白いものに仕上がっていると思います。今回、銀行員として働いている女性を描く上で、取材などはされましたか? また工夫したところなどもありましたら教えてください。
辻堂:地銀に勤めている友人2名に取材協力してもらいました。私が働いていたIT系企業と銀行とでは、上司の呼び方から仕事のルールまで何もかもが異なっていて、驚かされる点が多かったです。そのぶん仕事の描写は苦労しましたが、友人たち自身が主人公とほぼ同い年くらいの女性だったので、経験や立場をそのまま参考にできたのはよかったですね。
工夫したのは、2年分の記憶を失った主人公が、社会人3年目としていきなり職場復帰しなければならなくなったときの心情描写です。2年間で自分はそこまで成長していたのかと驚いたり、だからこそ元の自分に早く追いつかなくてはと焦ったり……。普通ではありえない状況だからこそ、主人公の気持ちを丁寧に追うように心がけました。
――新刊の読みどころはどこですか? また、気に入っているシーン・書くときに苦労したシーンなどがあれば教えてください。
辻堂:消えた2年分の記憶の中身を含むすべての謎が一気に明らかになっていく、終盤の展開です。ここには……渾身の思いをぶつけました! ほかに気に入っているのはラストシーンでしょうか。これまでに書いた作品は、最後に悲しさや苦さが少し残る読後感のものが多かったのですが、本作に関してはとても爽やかなハッピーエンドに仕上げられたと思います。ぜひ、安心して読んでください(笑)。
――新刊が出たばかりで気が早いですが(笑)、よろしければ、今後書いていきたいものを教えてください。
辻堂:ミステリという枠を広く捉えた話を書いていきたいです。謎解きの楽しみが味わえるだけでなく、最後まで読んだ後に心に温かいものが残るような、そんなストーリーを作っていけたら。家族愛などもテーマにしてみたいですね。
――最後に、読者に一言メッセージをお願いします!
辻堂:夏の終わりの想い出に、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
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