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レビュー

織守きょうやさんが語る! 心霊探偵・濱地健三郎の魅力

東京・南新宿に事務所を構える心霊探偵・濱地が助手のユリエとさまざまな怪奇現象の謎を解き明かす、有栖川有栖さんの「濱地健三郎シリーズ」。作家、脚本家、書評家など、物語世界に関わり活躍される方々は、どのように読み解くのか。最新作『濱地健三郎の呪える事件簿』の魅力について語っていただきました。
(本記事は「怪と幽vol.012」に掲載された内容を転載したものです。)

織守きょうやさんが語る! 心霊探偵・濱地健三郎の魅力

「謎と解決」のある物語が好きだ。
 こう書くと、「つまり、ミステリでしょう?」と言われてしまいそうだが、手がかりに基づいて推理で謎を解いていく物語に限らない。もちろん、ロジカルでスマートな謎解きは、有栖川有栖作品の大きな魅力だが、濱地健三郎シリーズは、そういった本格ミステリとは少し違う。
 頭と両手首のない幽霊は、何故小屋の入口で手招きをするのか? 探偵事務所にかかってきた電話の、助けを求める声は誰のものなのか? 毎夜の金縛りとともに、ベッドへと寄せてくる冷たい幻の波は何なのか? どれも魅力的な──と言っていいのか、恐ろしく不気味だが、興味を引かれる謎だ。
 しかし、心霊探偵濱地健三郎が対決するのは、もとより論理によって説明できる存在ではない怪異たちだ。これらの謎には、探偵によって答えが示されることもあるし、彼にもはっきりとしたことはわからないまま、ただ、祓うしかないこともある。探偵の経験や感覚からの推測は語られても、証拠をひもといて、推理によって答えを導き出す手順は描かれない。しかしそこには確かに謎があり、探偵による解決がある。
 ミステリには、真相を推理する探偵役がつきもので、その存在はミステリの大きな魅力のひとつだが、ホラーにおいては、探偵役が現れて解決してしまうと、怖くなくなる―そう言うと語弊があるだろうか。ホラー作品としておもしろくなくなる、という意味ではない。ただ、事態を解明し、事件を解決する存在であるところの探偵が登場してしまうと、怪異はその正体を分析され、そうでなくとも「解決できるもの」になってしまい、まったく得体のしれない、どうしようもないものと比べると、怖さが薄れるのだ。
 それをよしとしないホラーファンもいるだろう。私も、最後まで人間にはどうしようもない怪異のほうが怖いと思う。しかし、しかしだ。それでも、私は、ホラー作品におけるヒーローが大好きだ。安心する。安心したい。見たことのない怪異、それに直面し怯える登場人物たちに自分を重ねて震えあがっても、最後は「ああよかった」で終わりたい。
 そしてできれば、ただ怪異を祓っておしまいではなく、それが何なのか、何故現れたのか、どうすればいなくなるのか。そこに何等かの説明がほしい。心霊専門の名探偵、濱地健三郎は、まさにそれを叶えてくれる存在だ。
 最後に彼が解決してくれることを差し引いても、依頼人たちが見舞われる怪異は十分に怖い。そんな中で、穏やかで、知的で、紳士的なこの探偵の存在が、依頼人にとっても読者にとっても救いとなっている。


読み切り形式で複数の事件が収録されていて、ここから読んでも楽しめる!
『濱地健三郎の呪える事件簿』の情報はこちらから。

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楽天ブックスはこちら
詳細ページ:https://www.kadokawa.co.jp/product/322104000334/

書籍紹介



濱地健三郎の呪える事件簿
著者 有栖川 有栖
発売日:2022年09月30日

江神二郎、火村英生に続く、異才の探偵。大人気心霊探偵シリーズ最新刊!
探偵・濱地健三郎には鋭い推理力だけでなく、幽霊を視る能力がある。彼の事務所には、奇妙な現象に悩む依頼人のみならず、警視庁捜査一課の刑事も秘かに足を運ぶほどだ。リモート飲み会で現れた、他の人には視えない「小さな手」の正体。廃屋で手招きする「頭と手首のない霊」に隠された真実。歴史家志望の美男子を襲った心霊は、古い邸宅のどこに巣食っていたのか。濱地と助手のコンビが、6つの驚くべき謎を解き明かしていく――。



彼女はそこにいる
著者 織守きょうや
発売日:2023年06月30日

「人が居つかない家、というものは存在する」恐怖が3度襲うホラーミステリ

第1話「あの子はついてない」
母と共に庭付きの一軒家へ引っ越してきた中学生の茜里。妹の面倒を見ながら、新しい学校に馴染んでゆく茜里だが、家の中で奇妙なことが起こり始める。知らない髪の毛が落ちている。TVが勝手に消える。花壇に顔の形の染みが出来る。ささやかだが気になる出来事の連続に戸惑う茜里。ある夜カーテンを開けると、庭に見知らぬ男性の姿が――。
第2話「その家には何もない」
不動産仲介会社に勤める朝見は、大学の先輩でフリーライターの高田に「曰わく付きの物件」を紹介して欲しいと頼まれる。次々に貸借人が入れ替わる家の話をしたところ、「内覧したい」という高田に押し切られて現地へ向かうことに。そこは最近まで中学生の娘と母親が暮らしていた庭付きの一軒家だった。
第3話「そこにはいない」
その家にはなぜ人が居つかないのか? 新たな住人をきっかけに、過去の「ある事件」が浮かび上がる。

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322210001446/
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