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レビュー

教師として忘れられない卒業式、世界中の人たちにとって特別だった一年半を、この本を読みながら思い返す【重松 清『かぞえきれない星の、その次の星』書評② 神内 聡】

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かぞえきれない星の、その次の星
著者 重松 清



▼世界の形が変わり誰もが挫けそうな今だけど、未来を信じてもう少しだけ生きてみよう【重松 清『かぞえきれない星の、その次の星』書評① 杉江松恋】
https://kadobun.jp/reviews/97dhmbo34noc.html

『かぞえきれない星の、その次の星』書評②

評者 神内 聡
教師・弁護士(スクールロイヤー)

 この本の最初の作品、「こいのぼりのナイショの仕事」を読みながら、私は2020年3月のことを思い出していました。高校3年生の担任として迎えた卒業式。そのわずか数日前に告知された一斉休校と、卒業式の変更。いつもは体育館の厳粛な雰囲気の中でステージに立って、たくさんの保護者の前で1人1人生徒の名前を読み上げる。でもこの年の卒業式は教室でした。生徒たちも担任の私も慣れ親しんだホームルームの教室で、生徒の名前を1人1人読み上げながら万感の思いを込めて卒業証書を渡す担任としての最後の仕事。生徒はいつもの卒業式とは違うアットホームな雰囲気の中で、笑い声も交えながらとても明るく素晴らしい卒業式を実現してくれました。
 そして、読み進めるうちに出てきた「こいのぼりのサイショの仕事」。私は今は講師として非常勤で学校に勤務していますが、今度は緊急事態宣言が解除された学校で元気に登校する生徒たちを思い浮かべながら読んでいました。
 世界中の日常が変わったこの一年半の間、私たちは本当にいろいろなことを経験しました。この本は読みながらそんな誰にとっても特別だった一年半を思い返すことができるように、一つ一つの物語が一年の時間の流れの中で配置されています。その中でも私が印象に残った作品が「コスモス」です。主人公は日本人の父と日系ブラジル人の母を持つ女子。この作品は昭和の時代の学校に通っていた人たちからは想像もつかないほどグローバル化が進んでいる今の学校現場を生々しく描いています。多くの法律家は教育を未だに「国家の形成者」を育成するための事業だと考えていますが、日本という国家にはもはやかつての国民国家の実態はありません。それにもかかわらず、教育基本法は「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」態度を養うことを示しています。私はこの「コスモス」の中で描かれている学校現場の実情を読みながら、私自身も教師としてグローバル化に対応してきた経験を思い返していました。
 この本のクライマックスは本のタイトルでもある作品「かぞえきれない星の、その次の星」です。何か胸が熱くなるようで、寂しさと安心感が交錯するような、少し不思議なお話です。教師の仕事、弁護士の仕事、研究者の仕事。私自身が3つの仕事をしている時に、それぞれの仕事の中でこの作品に登場する「おじさん」に語りたい気分の時があります。それはきっと、それぞれの仕事で「自分を甘やかして許してくれる星」を探したくなるからでしょう。この作品にはいくつもの人生が描かれています。「おじさん」の人生。「おじさん」が書いている小説に登場する人たちの人生。そして、実は読んでいて一番気になるのは作品自体の主人公である「ぼく(コウキ)」の人生。「ぼく」の現実がどういう状況なのかは、ぜひ読んで解釈してみて下さい。
 この本の一番の魅力は、世界中の人たちにとって本当に特別な気持ちで過ごしたこの一年半が、これからの未来のために何を残してくれたのかを読みながら考えることができる点だと思います。私もまた、教師として忘れられない特別な思い出になった新型コロナウイルスの中での卒業式を、この本を読みながら思い返すことができたことに感謝しています。

作品紹介『かぞえきれない星の、その次の星』



かぞえきれない星の、その次の星
著者 重松 清
定価: 1,870円(本体1,700円+税)
発売日:2021年09月17日

さみしさは消えない。でも、希望は、ある。11の小さな星たちの物語
さみしさは消えない。でも、希望は、ある

かぞえきれないものを、ときどき見たほうがいい。
ぼくたちは皆、また間違えてしまうかもしれないから――
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322011000446/
amazonページはこちら

重松清『かぞえきれない星の、その次の星』試し読み



重松清『かぞえきれない星の、その次の星』発売! 夜空にちりばめた、11の小さな星たちの物語 試し読み#1
https://kadobun.jp/trial/kazoekirenaihoshino/9lp7b1w5ct8g.html


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