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レビュー

【解説:竹達彩奈(声優)】小野不由美が描くパニックホラー。女子高に渦巻く怪奇現象と超能力の哀しい謎『ゴーストハント3 乙女ノ祈リ』

文庫巻末に収録されている「解説」を特別公開!
本選びにお役立てください。

(解説:竹達 彩奈 / 声優)

「ゴーストハント」。このシリーズに初めて出会ったのは私が小学3年生ぐらいの頃です。当時「なかよし」などで漫画版が連載されていましたが、ホラー作品を連載している少女漫画雑誌は、90年代当時なかなか珍しかったと感じます。

 漫画版もかなり怖く、可愛らしい絵柄とは裏腹に丁寧に描かれたホラーストーリーで、幼い頃ホラー漫画が好きだった私はあっという間に夢中になりました。お小遣いを貯めてコミックを全て買い、すっかり「ゴーストハント」ファンになっていた私ですが、2010年に刊行された新装版の小説を読み、より一層ファンになってしまうのです。

 初めて読んだ小説版は、漫画では描かれなかった丁寧な状況描写、麻衣や事件に巻き込まれていく人々の心の機微が細かく描かれていて、あっという間に小説版「ゴーストハント」の魅力に引き込まれていきました。

 このシリーズの魅力の1つは、皆さんもうご存知の通り、個性あふれる素敵な登場人物たちにあると思います。

 都内の学校に通う、普通の女子高生の谷山麻衣。

 17歳でありながら渋谷サイキックリサーチの所長であり、ナルシストのナルこと渋谷一也。

 謎に包まれているナルの助手、無口なリン。

 実はスタジオミュージシャンだったロン毛の坊主、ぼーさんこと滝川法生。

 ド派手な見た目ときつめの性格をもつ自称・巫女さん、松崎綾子。

 おかっぱの髪型と着物がトレードマークのお嬢様美少女霊媒師、原真砂子。

 甘いフェイスとめちゃくちゃな関西弁が可愛らしい、神父でありエクソシストのジョン・ブラウン。

 麻衣をはじめとする魅力的な登場人物たちは、奇妙な心霊現象事件の依頼を受け、一緒に調査をしながら次々と起こるハプニングを乗り越えていきます。誰か一人でも欠けていたらきっと上手くいかない、絶妙なバランスで事件を解決していくのです。

 霊や呪詛といった、ホラーシリーズならではの恐怖もふんだんに盛り込まれているのに、時に切なさやあたたかさを感じるのも、「ゴーストハント」シリーズの魅力ではないでしょうか。

 そして、事件を起こしている霊や、呪詛をかける加害者たちも、胸が痛くなるような悲しい体験をしていることが多く、シリーズを通して読んでいくと「ゴーストハント」シリーズには「絶対的な悪」はなかなか無いということに気づかされます。

「ゴーストハント」シリーズに出てくる「霊」や「呪詛」に関わる人たちを、私はどうしても嫌いにはなれません。被害者も加害者も、皆それぞれに抱えている不幸は、生きている私たちにとっても決して他人事ではないと思うからです。

(※ここから先は、1~3巻のネタバレを含みますので、未読の方は小説をお楽しみになってからお読みください)

 例えば1巻目。「旧校舎怪談」に登場する黒田女史。私は彼女の心情を深く想像します。誰だって寂しいときはあるし、誰かに構ってほしい、認めてもらいたいという気持ちを持つことだってある。そういう気持ちが超能力とリンクしたら……。

 2巻目、「人形の檻」。もし、自分の大切な娘や家族が誘拐されたり、喪われることになったら? それはもう想像しきれない程の悲しみと絶望に襲われると思います。自分がそうならない、とは言い切れないと思います。そんな状況に追い込まれた人が何をやっても許される訳ではありませんが、決して嫌いにはなれないかもしれない……。

 そして今回3巻目となる、「乙女ノ祈リ」では、ラスト、事件が解決したのにモヤモヤとしたやるせない気持ちにさせられました。それはこの物語の事件の犯人が、ある意味被害者だったからかもしれません。だからこそ、犯人に人を助けたいという気持ちがあったことも本当だったと、私は信じたいです。

 実は私、子供の頃一度だけフォークを曲げたことがあります。超能力特集のテレビ番組を観ていて、真似してやってみたらフォークがぐにゃぐにゃになりました。爪の部分があっちこっちいって、使い物にならなくなってしまうくらいに。次の日もう一度やってみたら、まったく出来なくなっていたので本当に一瞬で力は無くなってしまったのですが、もしかしたらあれはゲラリーニだったのかも? と今作の「乙女ノ祈リ」を読んで知りました。

 そんな小さい頃の記憶があるからなのか、犯人に対してどこかやるせない気持ちになってしまうのかもしれません。が、どんな理由があっても人を呪ってはいけません!



 しかし、もしかしたら一番怖いのは生きている人間なのかもしれないと、今作を読んで思わされるのです。

 もし自分が呪詛をかけられたら?

 もし自分が呪詛をかけたくなるくらい辛い経験をしたら?

 そんなことを考えたくはありませんが、もし自分の周りに万が一にでもそんな人がいたら。もし自分が、人や世界を呪いたくなるくらい嫌いになってしまったら。

 面識はなくとも知らず知らずのうちに嫌われて悪意を向けられていたら……。

 相手が生きている人間でも幽霊でも、一番怖いのは、思いがけない「悪意」を向けられること。同じくらい、悪意を向けることも怖いことだと思います。想像するだけでゾッとするのですから、きっと麻衣たちはもっと怖かったのだと思いますし、本当に命に関わる前に解決して良かったと心から思います。

 そしてもう1つお伝えしたい「ゴーストハント」シリーズの魅力は、ストーリーが進むに連れて明かされていく、「実は」だと思うのです。

 3巻でいうと、ストーリーの最後に行われた、サイ能力テスト。4つある窓から、どれが光るか予測してスイッチを押すもの。

 麻衣は100回のランに対してヒットが16。ナルが言うには確率上は4分の1は当たって当然なのに。このテストから、麻衣が潜在的にセンシティブなサイ能力者だということがわかります。前作2巻「人形の檻」でも、過去夢や幽霊を見たり、不思議な体験をしていましたし、今作3巻では予知夢といえるような鬼火を見たり。麻衣はいつの間にか「普通の女子高生」ではなくなりつつあるのです。でもどんな体験をしても、麻衣はずっと麻衣でいてくれます。素直で、明るくて、一緒にいると不思議と周りが明るくなるような魅力は、シリーズ通しても変わりません。

 ずっと変わらないキラキラした魅力と、「実は」そうだったのか! と明かされていく意外性のある真実。これが「ゴーストハント」シリーズの、重要なキーになっていると思います。

 麻衣たちはますます危険で、恐ろしい事件に挑んでいくでしょう。どの巻もそれぞれ違った怖さがあり、気がつけば存分に詰め込まれた謎に引き込まれます。

 3巻まで読んでいらっしゃるならもうご存知と思いますが、このシリーズは全7巻、1冊ずつ読める読み切りミステリ&ホラー長編になっています。それぞれの巻で張り巡らされていた伏線が、最終7巻で一気に回収されていく展開は読んでいてとても気持ちが良いので、ぜひ最後までご自身の目で確認していただきたいです。もちろん、「乙女ノ祈リ」にも、まだ明かされていない伏線はちりばめられています。

 これからも続いていく麻衣たちの物語を、どうか最後まで見守って、時には一緒に泣いて怒って、笑ってください。もちろん極上の恐怖も、一緒に味わっていただけますように。て、笑ってください。もちろん極上の恐怖も、一緒に味わっていただけますように。一緒に泣いて怒って、笑ってください。もちろん極上の恐怖も、一緒に味わっていただけますように。

小野不由美『ゴーストハント3 乙女ノ祈リ』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322001000199/

『ゴーストハント』文庫解説


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▲小野不由美『ゴーストハント』特設サイト


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