解説  静かに燃える炎

 
 今回、新装版として刊行された本書には、三つの作品が収録されている。いずれもずいぶん前に書かれた作品で、もっとも古いものは、約二十年前に書かれたものだ。二十年! 年月の長さにまずは驚き、その長さに反し、まるで色褪せない作品たちのすごさを、しみじみと噛みしめてしまった。
 説明するまでもなく、現在、島本理生(しまもとりお)さんは、数多くの傑作小説を世に生み出した(そして生み出しつづけている)人気作家である。そんな彼女の、大切な最初の作品集を、今回解説を書かせていただくにあたり、数年ぶりに再読して感じたのは、ここには原点が詰まっている、ということだった。
 表題作である「シルエット」は、出だしからしてぐっと心をつかまれる。
 何ヵ月も何ヵ月も雨が降り続き、もしかしたらこのまま雨の中に閉じ込められるかもしれない。そう予感するような季節の中にいた。もちろん、わたし自身が。(中略)
 ただ一切を無視して、わたしの中に雨は降り続いた。そして自分の体内に確実に響く雨音をいつまでも聞いていた。まるでもう一つの鼓動のように。

書籍

『シルエット』

島本 理生

定価 562円(本体520円+税)

発売日:2018年04月25日

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