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試し読み

【最終回間近!山田孝之×菅田将暉W主演ドラマ】小説第2弾『dele2』試し読み②

山田孝之×菅田将暉のW主演、そしてハイクオリティな映像と展開で話題沸騰中のドラマ『dele(テレビ朝日系毎週金曜よる11:15~ ※一部地域を除く)。最終回が迫る中、小説版1作目の試し読み公開につづいて、2作目の試し読みも実施します! 小説の著者は、ドラマ原案と3話分の脚本を担当したベストセラー作家の本多孝好。ドラマとは異なるオリジナルストーリーに注目!
>>試し読み第1回へ 
 

 圭司との間で、足の話が正面切って出たことはほとんどない。祐太郎にしてみれば聞きにくい話だったし、圭司が自分から話してくれるようなこともこれまでなかった。今、圭司は両足とも膝から下の感覚がない。それを祐太郎に教えてくれたのは舞だった。
「高校二年のころだったかな。足先がしびれるって言い出して、病院へ行った。でも、原因はわからなかった。いろんな治療を試してはみたんだけど、どれも効果はなかった。そのうちにつま先の感覚がまったくなくなって、それが徐々に上に向かって広がっていった。最近では、広がりは収まっているみたいだけど、この先、また広がるのか、今のままで収まるのかは誰にもわからない」
「治らないんすか?」
「運動療法だけは続けようって医者は言ってたんだけど、二十歳を超えたころに、ケイは病院へ行くの、やめちゃったの」
「どうしてっすか?」
 運動療法がどんなにきつくても、圭司がそこから逃げ出す人間だとは思えなかった。
「たかだか歩けるようになるために、そこまでしなきゃいけないですかね」
 ぶっきらぼうな口調で言って、舞は呆れたような笑みを浮かべた。
「え?」
「そのときケイが医者に言った言葉。あれはそういうやつだよ」
「ああ」
 一向に効果の出ない運動療法に見切りをつけ、強がりの言葉を足がかりに、這い上がる道を自分で切りひらこうとした。二十歳すぎの圭司の可愛げのない顔が思い浮かび、祐太郎も笑ってしまった。
「父も、生前、ケイのことをとても心配していた。足のことより、あの性格のことをね。だから、この前、病院へ行ったって知って、私は嬉しかった。ケイはケイなりに少しずつ変わっているんだろうって。たぶん、それは祐太郎くんのおかげでもあると思う」
 舞がそんな話をしてくれたのは、先週のことだった。が、「病院の用事はもう終わった」というのなら、圭司に治療を再開する気はないのだろう。
 そのことについて、圭司ともう少し話してみるべきかどうか、祐太郎が考えていると、モグラが目覚める音がした。祐太郎はソファから立ち上がった。
dele.LIFEディーリー・ドット・ライフ』と契約すると、依頼人はまず、該当するデジタルデバイスに、圭司が作ったアプリをインストールする。アプリは『dele.LIFE』のサーバーと定期的に交信する。依頼人が設定した時間以上、そのデバイスが操作されなかったとき、サーバーが反応し、モグラが目を覚ます。それを受けて、祐太郎は依頼人が本当に死んでいるのかを確認する。死亡確認が取れたら、モグラを通じて、圭司が依頼人のデジタルデバイスから指定されたデータを削除する。
 祐太郎はデスクの前に進んだ。圭司はモグラで依頼内容を確認していた。
「今回の依頼人は、横田英明よこたひであき氏、三十五歳。パソコンが七十二時間以上、操作されなかったとき、そのパソコンからあるフォルダを削除するように設定している」
 圭司はタッチパッドを操作して、軽く舌打ちした。
「そのパソコンにアクセスできないな。依頼人が操作してないのではなく、単に三日間電源が切られていたか、オフラインにされただけかもしれない」
 アプリはバックグラウンドで動いているので、契約者がそれを意識する機会はほとんどない。契約を忘れて、設定した時間以上、サーバーとの交信ができない状態にしてしまっただけというケースも、これまでに何度かあった。
「まずは、死亡確認を取ってくれ。これが電話番号。もし依頼人が本当に死亡しているなら、どうにかしてパソコンをオンラインにしてくれ」
「んっと、他に情報はない?」
 祐太郎は聞いた。依頼人のことを少しでもわかっていたほうがコミュニケーションは取りやすい。
「スマホの中は見られないの?」
「今回の依頼対象はパソコンだけだ。緊急連絡先として電話番号が登録されているだけで、依頼人はうちのアプリをモバイル端末にはインストールしていない」
「じゃ、ネタは何もなしか」
「モバイル端末がガラケーではなくスマホなら、今からマルウェアを仕込むって手もなくはないけど、必要か?」
「マルウェア? って、ん? ウイルス? ハッキングってこと? いや、そこまでは、うん、わかった。何とかする」
 凝った身分を偽ることができなくても、死亡確認ぐらいはできるだろう。そう考えて、祐太郎はモグラの画面にある携帯番号に電話をかけた。つながらない、あるいは誰も出ないというケースも多いのだが、幸い、今回は応対があった。
「はい」
 応じた声は女性のものだった。若い声ではない。どこか外のようだ。背後にざわめきがあった。祐太郎は意外そうな声を上げた。
「あれ? これ、横田さん、横田英明さんの携帯ですよね? 俺、真柴っていいます。横田さん、いますか?」

(第3回へつづく)
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>>本多孝好『dele2』 書籍詳細ページ


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