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角川文庫キャラ文通信

「おどろし」とは何だ!? 五感で感じる強烈な怖さ 『おどろしの森』刊行記念・滝川さりインタビュー

角川文庫キャラ文通信

昨年、横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈読者賞〉を受賞しデビューした注目の新鋭・滝川さりさん。新作『おどろしの森』は発売前からSNSで話題沸騰中! 作品に込めた思いや創作秘話をうかがいました。


――昨年デビューされて、これが2作目になりますね。本作はどのようなきっかけで生まれたんでしょうか。

滝川:デビュー作の『お孵り』は少し複雑な設定だったので、今度は化け物が襲ってくるシンプルなホラーを書こうと思いました。じゃあどんな化け物にしようかとお風呂でうんうん唸りながらふと鏡を見たとき、『エイズ・メアリー』の話を思い出しました。行きずりの女と一夜を過ごした男が、朝になって鏡に「エイズの世界にようこそ」と口紅で書かれているのを発見する都市伝説です。そこから、口紅をシンボルにした化け物にしようと考えたことがきっかけです。


――その化け物が「おどろし」なんですね。かなり強烈な怪異が生み出されたと思うのですが、今回「おどろし」や、ホラーな展開を描かれる際に、どのような怖さを目指されましたか?

滝川:おどろしは、見た目以外に「お香の匂い」や「笑い声」、「冷たい肌」などの描写を多めにして、五感で楽しめる怖さを目指しました。存在のアピールがうるさいかなとも思いましたが、「妻と娘にはおどろしが感じられない」という設定を加えることで、得体の知れない怖さに昇華できたかと思います。


滝川さり『おどろしの森』


――他にもこの物語の読みどころがありましたら教えてください。

滝川:登場人物たちの成長です。特に霊能力者・ミヤの成長ですね。私自身は、おどろしという怪異の恐怖を描いたつもりでしたが、青依青さんのカバーイラストを見たときに「これはミヤの物語なんだ」と気づかされました。葛藤しながらも呪いに打ち克とうとするミヤの姿を見守ってもらえると嬉しいです。

もちろん、怪異「おどろし」にも注目してほしいです。おどろしは家の中にも我が物顔で現れます。在宅ワークが増えた人も多いと思うので、ぜひお手に取っていただき、ご自宅で彼女の吐息を感じてください。


――ミヤのパートナーである霊能力者・波瀬もなかなかユニークな人物で印象に残りました。彼とのコンビというのはどういうところから思いつかれましたか?

滝川:元々はミヤだけを登場させるつもりでしたが、そうすると鬱々とした話になってしまい、「この子には支えが必要だ」と思えたんです。波瀬はミヤとは対照的にホラーっぽくない飄々とした性格にしましたが、今は出してよかったなと感じます。ミヤにとってもこの物語にとっても、彼は添え木のような役割を担ってくれました。


――呪いのせいで2人にはある「できないこと」があるのですが、それが大変切なくて……。なので、ラストシーンは特に胸に響きました。滝川さんは、特に思い入れのあるシーンはありますか?

滝川:主人公の拓真が、妻の茉祐や霊能力者の鳳におどろしの存在を訴えるけど、一向に伝わらないシーンですね。構想の段階でこのシーンは絶対に入れようと思っていました。霊能力者すら欺くおどろしの狡猾さが出ていますし、笑っている茉祐と鳳の向こうでおどろしが――……という光景がシュールで気に入っています。


――そのシーン、かなり怖かったです……。ぜひその光景を実際に読んで味わってほしいですね。今後はどんなものを書いていきたいですか?

滝川:ホラーエンタメはもっと書きたいですし、ミステリも書いてみたいですね。もし本作をシリーズとしてお届けできることになれば、まだまだ霊能力者として駆け出しのミヤの成長を描きたいです。この子は書いていてすごく楽しかったので。凶悪な呪いと理不尽な人間に苦しめられながらも、カワイくカッコよく活躍する姿をお見せできればいいですね。


――最後に、読者に一言メッセージをお願いします。

滝川:ぜひお香を焚きながら読んでいただければと思います。おすすめは沈香です。よろしくお願いします。

滝川さり『おどろしの森』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322006000124/



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