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角川文庫キャラホラ通信

【キャラホラ通信3月号】『海棠弁護士の事件記録 消えた絵画と死者の声』刊行記念 雨宮周インタビュー

角川文庫キャラホラ通信

第5回角川文庫キャラクター小説大賞〈大賞〉を受賞した『海棠弁護士の事件記録 消えた絵画と死者の声』がついに今月発売! 本作がデビュー作となる作家・雨宮周さんに作品への想いをたっぷりうかがいました。

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――まずは、第5回角川文庫キャラクター小説大賞の受賞、本当におめでとうございます。法的な専門知識をストーリーにうまく組み込まれていて、選考委員のお二人も絶賛されていました。なぜこのような作品を書こうと思われたのでしょう?

雨宮:とある判例を読んで、「これはミステリのネタに使えるんじゃないか?」と思ったことがきっかけです。思いついた当初は短編のつもりだったんですが、プロットを練ってみるとネタを成立させるための状況設定が意外と大変で、あれよあれよという間に長編になってしまいました。ところが長編として見ると、今度はボリューム的に物足りない。そこで「フロスト警部」シリーズのように複数の事件が同時発生する展開(モジュラー型というそうです)にしたらどうだろう、と考えたことで、この話の原型ができあがりました。

実際に書いてみてつくづく思ったんですが、弁護士ものってモジュラー型にぴったりなんですよ。なにしろ遺言作成や離婚といったごく身近なことから、自己破産に不動産トラブル、刑事弁護、果ては株式会社のお家騒動まで、ありとあらゆるタイプの厄介事が持ち込まれるお仕事なので。こんな事件を絡めたらどうだろう、あんな依頼者を出したら面白いんじゃないかとあれこれ考えるのも楽しかったです。


――投稿先にこの賞を選ばれた理由はありますか?

雨宮:横溝正史の著作をはじめ大好きな作品を数多く出しているレーベルなので、もともと角川文庫さんには憧れがあったんです。また受賞作品を拝見したところ、お仕事小説からゴシックホラーに至るまでまことにバラエティに富んでいて、まさに「面白ければなんでもあり」の懐の深い賞であるところにも魅力を感じました。こうしてデビュー出来たことは本当に幸運だったと思います。


――実際の刊行までには、改稿や修正作業など、いろいろな過程があったと思います。印象的だったことはありますか?

雨宮:作中に主人公二人が対立するシーンがあるのですが、投稿作ではわりと他愛もないことが原因でした。しかし担当さんの指示を受けて、対立に至るまでの二人の心情や考え方の違いを掘り下げる形に修正しました。また「瑞葉の服装やしぐさに特徴が欲しい」と言われて思いついたのが、瑞葉がいつも身に着けているロケットペンダントの設定です。いずれも自作をキャラクター文芸として磨き上げていく感覚が新鮮でとても印象的でした。



――雨宮さんが考える、作品の読みどころはどこでしょうか?

雨宮:第一に挙げられるのは、やはり随所に出てくる法律ネタ、そしてモジュラー型の面白さでしょうか。法律ネタについては、私が法律書や判例集を読んで「法律って面白いな」「判例って面白いんだな」と感じた部分を作中にぎゅっと詰め込んだので、同じように面白いと思っていただけたらと思います。また海棠たちが遭遇する様々な事件があとになってパズルのように繋がっていく、モジュラー型ならではの快感を読者の皆様に味わっていただけたら嬉しいです。

さらに後見人と被後見人という主人公二人の関係性も読みどころの一つだと思います。未成年後見人は法的には被後見人の親代わりですから、ある意味非常に近しい関係だといえます。その一方で、弁護士にとって未成年後見はあくまで通常業務の一環であり、また被後見人が成人したら終了という期間限定のお付き合いですから、ビジネスライクな関係ともいえるわけです。そういう立場で相手にどこまで踏み込むべきか、踏み込んでいいのか。海棠と瑞葉が互いに軽口を叩き合いながらも、どこか手探り状態で関係を築いていく過程や、海棠の新米保護者としての成長ぶりにも注目していただけたらと思います。


――主人公の二人は、今はやさぐれているけれど、昔は熱血弁護士だったのだろうなと思わせる海棠忍と、清楚に見えて生意気な天才少女、黒澤瑞葉です。キャラクターにはどういった思い入れがありますか?

雨宮:まずはストーリーありきで作られたキャラクターだったので、どちらも最初はそれほど思い入れがなかったんです。法律ものだから視点人物を弁護士にして、探偵役は「大の大人が十五歳くらいの女の子に振り回されたら面白いんじゃないか」という発想から被後見人の少女に決めて、詳細は詰めずに書き始めたのですが、書いているうちにどんどんイメージが膨らんでいきました。

海棠は冷めた態度の皮肉屋ですが、根はお人よしの常識人。新人の青臭さはもうないけど、全てを割り切れるほど達観も出来ない、ある意味とても人間臭い男です。一方の瑞葉はミステリ好きの天才で、いつも人を食ったような笑みを浮かべた少女ですが、その裏には意外な脆さや繊細さも持ち合わせています。

この二人がコンビを組んで事件に関わる姿を書くのがとても楽しくて、執筆を終えるころには、このまま別れるのが惜しいと思うほどに愛着がわいていました。


――ずばり、次回作はどういったものにしたいですか?

雨宮:まだまだ書きたい法律ネタがたくさんありますし、次も弁護士ものでモジュラー型の作品を書きたいです。もしこの作品の続編を書かせていただけるなら、海棠が過去に関わった事件や、瑞葉の複雑な生い立ちについてもぜひ掘り下げていきたいと思います。


――最後に、読者に一言メッセージをお願いします。

雨宮:『海棠弁護士の事件記録 消えた絵画と死者の声』は私自身とても楽しんで書いた作品です。読者の皆様にも私と同じくらい楽しい時間を過ごしていただけたら、それに勝る喜びはありません。



▼『海棠弁護士の事件記録 消えた絵画と死者の声』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321911000212/



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