KADOKAWA Group
menu
menu

レビュー

何が、彼を犯行に駆り立てたのか――?15歳の頃の自分を振り返りつつ読みたい『15歳のテロリスト』

【朗読つきカドブンレビュー】

「新宿駅に爆弾を仕掛けました。これは嘘ではありません」

動画共有サイトにアップされたその1時間後、予告どおりに新宿駅のホームで爆発が起きる。
首謀者と目されるのは15歳の少年、渡辺篤人。
警察と少年犯罪を追うジャーナリストが事件の真相に迫るにつれ、少年がなぜ「テロリスト」にならざるを得なかったのか、その理由が徐々に浮かび上がってくる……。
今回はそんな本書『15歳のテロリスト』を紹介致します。

本を選ぶきっかけというのは人それぞれだと思いますが、今回はタイトルに惹かれての選択。
15歳の少年がテロリスト?
ちょっと現実味なくない?
つーか、自分が15歳だったのっていつよ? 
32年前!
そんな若い主人公に感情移入出来るの?
一抹の不安を感じつつ読み始めると、次から次へと新事実が浮かび上がり、渡辺篤人、彼を追うジャーナリスト、そして少年犯罪の加害者家族である少女のそれぞれの立場が交錯し、話はクライマックスへとなだれ込んでいく。
スピーディーで非常に読みやすく、あっという間に読み終わってしまいました。

15歳の頃の自分を振り返ると、濃い霧のような感情に押し潰されそうになりながら、なんとか生きていたような気がします。
そんな感受性の強い時期に、自分は主人公の篤人少年のような重荷に耐えられただろうか。
同じ立場なら、彼のような行動に出ただろうか。
本書は少年犯罪や少年法の矛盾に疑問を投げかける社会派ミステリの一面もありますが、むしろ篤人少年の心情に寄りそい、丁寧に描くヒューマンドラマという側面が大きいのでしょう。結論を言わせて頂くと、現実味はあったし、感情移入もできたし、しっかり楽しませて頂きました(笑)。

映画も小説も年と共に受け取り方が変わるなんて言いますが、この本をもし15歳の時に読んでいたら、まるで違った風に感じたんだろうなあ、なんて思ったり。
若い頃の自分に思いを馳せたり、年を重ねたことを噛みしめたりと、気持ちのいい読後感と共に、そんなことも感じられる一冊でした。



紹介した書籍

関連書籍

新着コンテンツ

もっとみる

NEWS

もっとみる

PICK UP

  • 森 絵都『デモクラシーのいろは』特設サイト
  • 畠中恵KADOKAWA作品特設サイト
  • ダン・ブラウン 特設サイト
  • 楳図かずお「ゾク こわい本」シリーズ
  • 「果てしなきスカーレット」特設サイト
  • 辻村深月『この夏の星を見る』特設サイト

MAGAZINES

小説 野性時代

最新号
2025年11月・12月号

10月25日 発売

ダ・ヴィンチ

最新号
2025年11月号

10月6日 発売

怪と幽

最新号
Vol.020

8月28日 発売

ランキング

書籍週間ランキング

1

天国での暮らしはどうですか

著者 中山有香里

2

まほうのるんるんきせつごはん

まいのおやつ

3

キジバトくん日記(2)

著者 初丸うげべそ

4

まだまだ!意外と知らない鳥の生活

著者 piro piro piccolo

5

見仏記 三十三年後の約束

著者 いとうせいこう 著者 みうらじゅん

6

意外と知らない鳥の生活

著者 piro piro piccolo

2025年10月20日 - 2025年10月26日 紀伊國屋書店調べ

もっとみる

レビューランキング

TOP