二〇一四年五月に刊行された拙著『物を売るバカ——売れない時代の新しい商品の売り方』は、たくさんの人に読んでいただきました。
消費者が心から欲しいものがない時代、「物を売らずに物語を売る」ことで「欲しい気持ち」を沸き上がらせようという内容に反響があったのです。
多くの企業で課題図書にしていただきまして、マーケティング系の新書では異例のベストセラーとなり、台湾・中国・韓国でも翻訳されました。
それから四年半。続編を出版することにしたのにはワケがあります。以下のような意見を少なからずいただいたことがきっかけでした。
「理論にしたがって『物語』を構築しようとしたが、すぐに結果がでなかったのでやめてしまった」
なぜうまくいかないのか? それは現場に「熱」が足りないからです。
大きな鉄板で焼きそばを作る時のことを思い浮かべてください。どんなにいい具材を集めたところで、鉄板が温まってなかったらおいしい焼きそばはできません。理屈は通っていても熱がないと結果につながらないのです。
そこで実践編的な位置づけで、「現場に熱を生み出し感情を揺さぶる売り方」の事例をひたすら紹介する本を書こうと思いつきました。
難しい理屈は書いてなくても、現場に熱を生み出す参考になる本。数多くの事例が書いてあることで、自分もやってみようかなと思わせてくれる本。それでいて表面的な施策だけでなく、バックストーリーもある程度わかり、読み物としてもおもしろい本。なにより「物を売るバカ」にならないための「優秀なアンチョコ(お手軽な参考書)」になるような本です。
タイトルは悩みましたが、ストレートに続編であることがわかる『物を売るバカ2』にしました。
この本では感情(エモーション)を揺さぶる売り方の事例を集め、それを七つに分類しました。
それが「エモ売り7」です。
●エモ売り7
①「体験」を売る
②「心動く」を売る
③「世界観」を売る
④「共創・協創」を売る
⑤「インスタ映え」を売る
⑥「ここにしかない」を売る
⑦「懐かしい」を売る
書籍の中では、この七つの分類にそって、以下のような「感情を揺さぶる売り方」の事例を72紹介しています。
・小松菜にヘヴィメタルを聴かせたら味は変わらないのに驚くほど売れた
・憧れの「あのテニス選手」と対戦できる権利を売る会社
・女子中高生にメークを手ほどきしてファンを増やす原宿の店員
・並んでまで食べに行きたくなった「福岡の至宝」
・広島の1万個以上の廃棄キャベツが「1行の言葉」で完売
・仙台の笹かまぼこ屋の店長の決まり文句でファンが急増
・納豆嫌いの大阪人が思わず食べたくなる納豆
・ひたすら褒めて生徒数が急増した三重の自動車教習所
・SNSで書店員たちが協創してベストセラーを生み出す
・尾道の漁師が1年穿くことでジーンズの値段が倍に
・日本一「本を読みたくなる街」盛岡
また、事例を紹介したあとにはできるだけ「こんな風に応用できませんか?」という問いを投げかけるようにしました。
自ら新しい売り方を思いついて欲しいからです。
この問いかけに本気になって取り組めば必ず現場に「熱」が生まれ、成果が生まれます。「物を売るバカ」にならずにすみます。それから「理屈」に戻っても、遅くはありません。
この本で、まずあなた自身の「熱」を高めてくれたらうれしいです。
>>川上徹也『物を売るバカ2 感情を揺さぶる7つの売り方』
紹介した書籍
関連書籍
-
試し読み
-
レビュー
-
連載
-
試し読み
-
連載