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レビュー

【『サハラの薔薇』カドブンレビュー​⑥】​​井口徹也「読んでいるだけで喉が渇いてくる」

話題沸騰! 下村敦史さん『サハラの薔薇』が発売たちまち重版決定!
絶賛の声が止まらない本作の重版を記念して、カドブンでは「6人のカドブンレビュアーによる6日間連続レビュー」企画を行います。6人のカドブンレビュアーは本作をどのように読み解いたのか? ぜひ連続レビュー企画をお楽しみください。

舞台はエジプト、見渡す限り砂で覆われている。そんな中で、日本人とエジプト人の混合チームで、遺跡の発掘調査が行われていた。主人公の峰隆介は考古学に魂を燃やしてきたが、思うように成果が出ず、研究費用がかさんでいく状態に焦りを感じていた。

物語は、峰のチームが遺跡で石棺を発見したところから始まる。石棺の中にあったのは、なんと死後数ヶ月しか経っていないであろうミイラであった。

そのミイラをめぐって峰は何者かに襲撃され、ミイラや遺物が謎の武装グループによって強奪されるのである。なぜそんなものが盗まれるのか……。

疑問が晴れないままではあるが、別の仕事の依頼を受けフランスに飛び立つ峰。だが、飛行機がサハラ(砂漠)に墜落してしまう。峰を含めた生き残りメンバーは、明日を生きるためにオアシスを目指し、僅かな水と食料をもとに、歩き始めるのである。

メンバーは、呪術師やベリーダンサーなど多様な顔ぶれであるが、その中でも日本人の永井は峰にとって特別な存在であった。それは、様々な人から「永井を信用するな」と釘を刺されているからである。オアシスに向かう方向も果たして本当に合っているのか分からないが、歩みは止められない。次々と窮地をむかえることでお互いに疑心暗鬼になり、一行はどんどん荒んだ人間関係になっていってしまう。

その中で少しずつ各人の過去やミイラの秘密が明るみになり、やがて峰はこの物語全体を覆う謎に近づいていく。本のタイトルにもある「サハラの薔薇」がキーワードとなり、物語の核心に触れる……。

物語はまさに怒涛の展開であった。
本を開き、物語の世界に没入しようと意識する間もなく、多くの謎と死が待ち受けていたのである。

メンバーの過去や秘密が次々と明らかになり、やがて一行は分裂してしまう。場面はずっと砂漠をさまよっているのだが、物語は次から次へと移り変わるのである。

過激な戦闘シーンが多く描かれている一方で、ハッと目が覚めるような場面もある。1つ、謎が明らかになるたびに、メンバーの不思議な言動の伏線が回収される。だから先を読みたくなってしまうのだ。そう、本を読んでいて止めどころがまったくない。読んでいるだけで喉が渇いてくるような、熱射の砂漠気分を存分に堪能しながら、物語がサクサクと進んでいくのは爽快だった。

最後の最後まで物語が展開し続けるため、結局、一気に読み進めてしまった。本当に夢中になって本にかじりついてしまうので、この本を読む際は空き時間をしっかり作って読むことを強くオススメする。


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