『RDG レッドデータガール』は、絶滅のおそれのある存在とされた日本の「少女」が主人公の物語だ。荻原規子らしい日本の神話世界を下敷きにし、修験道、忍術の戸隠流、陰陽道が学園を舞台に入り乱れる、言わずと知れた和風ファンタジーの名作である。
さて、小学生の頃から荻原さんのファンであり、『勾玉三部作』の影響から神話世界に興味を持ち大学進学をした私は、このシリーズを初めて読んだ際にはその舞台設定の新鮮さにとても驚かされた。すっかり荻原作品の時代ものの香りに慣れて親しんでいたせいもあるが、そういえば現代の学園ものもお得意なのだった、と改めて思い知らされたようだった。
今回めでたく刊行となった『RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴』は、二〇一二年に一応の完結を迎えた本シリーズの番外編という触れ込みであるが、題名にもなっている中編「氷の靴 ガラスの靴」に関しては、スピンオフであると同時に本編の正統的続編であると断言できるだろう。
かつて私は、最終巻とされる第六巻の最終ページを読み終えた時、素晴らしい満足感を味わっていくらもしないうちに叫んでいた。「え、これで終わり?」と。ネタバレに配慮して言うと、このシリーズのとあるキャラクター達の恋愛模様は、並走するナメクジですら驚愕するほどの進展度なのである。そこがまたイイのだし、急かすつもりは全くないのだが、二人がようやくそれらしい形となるのが最終盤も最終盤なので、長らく見守っていた読者は「良かったねえ」と母親のような気持ちで涙を拭ってから、ちょっと待て。全部ここからやぞ」と我に返り地に倒れ伏すような気持ちにさせられるのだ。
いや、作品的には完結しているし、落としどころにも納得はいく。ただ、なまじキャラクター達が魅力的なだけに、恋愛模様の続きを見たい!と強烈に思ってしまうのだ。そういえば私自身、完結させたつもりの作品に「続きは?」と言われたことがある。書いている側の時は「もうこれ以上は必要ないでしょ。後は読者さんの想像にお任せしますぞー」と結構のほほんとしていたのだが、それをさせられる側は堪ったものではないな……と思わず反省してしまった。閑話休題。
とにかく、RDG六巻読了後、私と似たような感想を持った読者はきっと少なくないと思う。そんな荻原規子クラスタの皆さん、是非この本を読んで下さい。こんな続編が読みたかった、ときっと満足してくれるはずだ。
それには、前半に収録された短編の内容も関わってくる。読者にじれったい思いをさせる戦犯の片割れである某少年が、シリーズ初期のあの時、あのシーンで何を思っていたのかということが、その若干ひねくれた視点で語られるので、余計に後半のデレというか――ささやかながら格段の進展を見せる描写に、涙を禁じえなくなる。
某初々しいカップルの件にやたらと紙幅を割いてしまったが、「氷の靴 ガラスの靴」でが本編で多彩な活躍を見せてくれた戸隠の三つ子、特に三つ子の紅一点、宗田真響にスポットライトが当たっている。はきはきとしていて美しい、皆の憧れの存在的な真響であるが、なんと今回、実家から見合いの話が持ち込まれてしまう。バレンタインデーに急遽開催されたスケート教室。一筋縄ではいかない実家や、各派閥の思惑や策略が入り乱れ、過去に兄のように慕っていたインストラクターが愛を囁いてくる――そんな状況の中で、一筋縄ではいかない弟達に囲まれた彼女は、自身の「恋」をどう解釈するのか。真響の気持ちは、是非、ご自身の目で確かめて頂きたい。
最後に、個人的に嬉しかった点として、いたるところに顔を出しては相変わらずの嫌みっぷりを発揮する若手陰陽師、高柳君に再会できたことを挙げさせてもらいたい。私は犬派なので、作中で「ポチ」と渾名される彼がさりげなく邪険にされる度、言いようのない萌えを感じてしまった。全国の高柳ファンの皆さん、必見ですよ!
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