話題沸騰! 下村敦史さん『サハラの薔薇』が発売たちまち重版決定!
絶賛の声が止まらない本作の重版を記念して、カドブンでは「6人のカドブンレビュアーによる6日間連続レビュー」企画を本日よりスタートいたします。6人のカドブンレビュアーは本作をどのように読み解いたのか? ぜひ連続レビュー企画をお楽しみください。

船が難破し洋上を漂流する者が、ひとりしかつかまることのできない板を他者から奪い取って生き延びた場合、この行為は正当といえるか。
「カルネアデスの舟板」と名付けられたこの命題は、極限状態において、他者を押しのけてでも自分だけは助かりたいという、人間なら誰でも持っている衝動と、はたしてそれが許されるのかという良心への、答えのない問いでもある。

『サハラの薔薇』はその究極の命題を突き付けられた男の物語だが、やはりその選択は一筋縄ではいかない。

20年来のフィールドワークにおいて、さしたる結果をだせないまま現在に至り、研究者生命の崖っぷちに立つエジプト考古学者・峰。
ようやく発掘調査で石棺を発見するものの、中から出てきたのは数千年前の王ではなく、数か月前に死亡したと思しき何者かのミイラ。しかもその直後から峰には次々と災難が降りかかる。エジプト政府によって調査は凍結。滞在する安ホテルで黒ずくめの男に襲われ、心機一転、フランスへ向かうために搭乗した飛行機はハイジャックの末にサハラ砂漠に墜落する。
生き残った乗客のうち、峰をはじめとする6人はオアシスを目指すが、生き残りどころか命を狙われる状況に陥ってゆく。

幾度となく突き付けられる、自分自身もしくは他者の生死を分ける選択。次々と明らかになる「仲間」たちの正体。人間の数、人種の数だけある背景。テロ、民族紛争、エネルギー問題。
世界最大の砂漠、闊歩するにはあまりに危険な場所、サハラ。過酷な大自然は人間の本質を剝き出しにして、蓋をしたはずの過去の清算を無言のうちに強いる。

考古学者のくせにミイラの呪いを気にする、いかにも小物な主人公・峰が絶妙に苛立つ。彼は常に責任を問われないよう、面倒事は避けるよう行動し、ゲリラに襲われているときでさえ、自分で武器をとって戦うことをためらう。峰はさまざまな日本人像の最大公約数的存在だ。だからその言動に同族嫌悪的な苛立ちをおぼえ、悔しいことに矮小さに親近感を抱いてしまう。

本書の根柢には、「カルネアデスの舟板」という命題がある。峰の姿をみて思うのは、結局最後は「何が正しいか」「許されるか」ではなく、「自分がどうしたいか」なのだろうということだ。
悩みぬいた末の選択が本当に正しいかどうかは、すぐには誰にもわからない。後悔しないかというと、後悔なんてするに決まっている。

物語の終わりに至っても、峰はやっぱり小物くさい。ヒーローにはなれない。世界を変えるなんてできない。現状の生き方さえ、理想に描いたものとはほど遠いありさまだ。人生はほろ苦い、けれど悪いものでもない。峰を差し置いて徹頭徹尾大活躍だった美貌の踊り子・シャリファの台詞が余韻を醸す。
あなたも生き延びた。私も生き延びた。今はそれで充分

下村敦史インタビュー『サハラの薔薇』砂漠に旅客機が墜落。生き残った六名は、究極の葛藤に直面する。"

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書籍

『サハラの薔薇』

下村 敦史

定価 1728円(本体1600円+税)

発売日:2017年12月21日

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