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特集

直木賞ノミネート! 作家・加藤シゲアキ8年間の軌跡

2020年11月に発売された最新小説『オルタネート』(新潮社刊)で、第164回直木賞にノミネートされた加藤シゲアキさん。アイドルグループNEWSの一員として活躍する傍ら、2012年から作家として執筆を続けてきました。1作1作、新たな試みを重ね、デビュー作『ピンクとグレー』や短編集『傘をもたない蟻たちは』は映像化もされるなど大きな話題を呼びました。
ノミネートを機に作品を読んでみたい方のために、作品の魅力をご紹介します。

“作家・加藤シゲアキ”の原点
ピンクとグレー』(2012年)


《 あらすじ 》
大阪から横浜へ越してきた小学生の河田大貴は、マンションで同い年の鈴木真吾と出会う。性格は全く違う2人だったが、すぐに惹かれあい親友に。やがて高校生になった2人は、読者モデルにスカウトされたことをきっかけに芸能活動をスタートさせる。同居する家からオーディションに通い、お互いを励ます日々だったが、真吾だけがスターダムを駆け上がっていくことでかけがえのない仲は決裂してしまい……。ステージという世界の魔法、幻想に魅入られた2人の青年が抱える愛と孤独を鮮やかに描いた、作家・加藤シゲアキの原点。

おすすめポイント:切ない青春小説度★★★★★
自分の理解者はこいつしかいない、というくらい仲がよかった2人。しかし、その友情が続かなかったことは、小説の始まりから明らかにされています。「24歳」「9~11歳」「25歳」「17歳」……現在と過去を行き来するような章立てによって、読者は「なぜ彼らが仲良くなったのか」と「なぜ彼らの友情は壊れたのか」を同時に知ることになります。そして訪れる崩壊の瞬間。有名になればなるほど周囲との距離が広がる、スターの苦悩も余すことなく描かれています。著者自身、文庫版あとがきで「僕にとって特別な作品です」と語るデビュー作は、胸を締めつける青春小説です。

エンタテイメント性の追求
閃光スクランブル』(2013年)


《 あらすじ 》
人気アイドルグループのメンバー・亜希子は、迫る世代交代に思い悩み、現実から逃げるように大物俳優と不倫を続けている。そのスクープを狙うゴシップカメラマンの巧もまた、妻を亡くしてから写真への情熱を失い、どうしようもない痛みを抱えていた。敵対する立場の2人だったが、ある事件を機に思いがけない逃避行が始まる。渋谷スクランブル交差点で激しく交錯する女性アイドルとパパラッチの人生。瞬く光の渦の中、2人は本当の自分を見つけられるのか――。

おすすめポイント:サスペンス度★★★★★
いまや女性アイドルの宿命のように言われる「卒業」。それがスキャンダルを機に引き起こされるとしたら……。危険だと分かっていても不倫を止められない亜希子の心理描写は、見ているだけで手に汗握る焦燥感に溢れています。一方、彼女を追うパパラッチの巧も、行き場のない感情を抱えて生きる一人。黒い仕事を回してくる知人に促され、時に夜を徹してスキャンダルを追う彼の行動は、サスペンスフルな疾走感を物語に与えています。アクションなど派手なシーンも交えながら2人の人間の運命を描く第二作は、高いエンタメ性を兼ね備えた、芸能界のインサイドストーリーです。

主人公と共に成長する
Burn.-バーン―』(2014年)


《 あらすじ 》
演出家として成功し、子どもの誕生を間近にする夏川レイジは、不慮の事故により、失っていた20年前の記憶を取り戻す。当時天才子役としてもてはやされていたレイジの現実は、ただの孤独な少年だった。同級生にいじめられ、母親とも心が通わなかったが、渋谷の宮下公園で出会った心優しきホームレスとドラッグクイーンと奇妙な友情を築くうちに、冷め切った心は溶け始める。しかし、本物の感情を知るうちに、機械のように精密だった彼の演技は鈍り始め……。愛と家族の本質に迫る、一人の少年の成長物語。

おすすめポイント:心あたたまる度★★★★★
『ピンクとグレー』『閃光スクランブル』に続き、著者が学生時代からよく知るという渋谷を舞台にした本作。しかしメインになるのは人で賑わう有名なスポットではなく、宮下公園の片隅で暮らす路上生活者の“家”や、事情があって他所で働けない者が集う酒場です。社会的には決して恵まれているとは言えないが、信条をもって生きる人々と交流することで、自分の中に潜む感情に気づいた主人公。忘れていた少年時代を思い出すことで、仕事や家族に向き合い直す彼の感情描写は、経験を重ねることでしか出せない温かみに溢れています。“作家・加藤シゲアキ”の第一期を締めくくる、光に向かうような物語です。

その他にも、2021年上演の舞台「染、色」の原作を含む短編7作が収められた『傘をもたない蟻たちは』、タイトルをテーマに6人の作家が競作したアンソロジー『行きたくない』でも、さらに磨かれたストーリーテリングを楽しむことができます。
パフォーマンス、演技、作詞、ステージ演出、舞台脚本など、様々な表現方法でチャレンジを続ける加藤シゲアキ。ぜひこの機会に、作家としての才能にもご注目ください!

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