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連載

横溝正史ミステリ&ホラー大賞創設によせて vol.2

【連載】横溝正史ミステリ&ホラー大賞創設によせて 第2回 伊岡瞬

横溝正史ミステリ&ホラー大賞創設によせて

長い歴史を持つ「横溝正史ミステリ大賞」と「日本ホラー小説大賞」が統合し、ミステリとホラーを対象とした「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」として募集を開始しました(締切は9月30日)。これを記念し、歴代受賞作家の皆さんからメッセージをいただきました。
第2回は、『いつか、虹の向こうへ』で、第25回横溝正史ミステリ大賞・テレビ東京賞をW受賞した伊岡瞬さんです。

>>第1回 澤村伊智

 デビュー前と後とでは、「書く」ことに関する環境が、当然ながら違ってきます。決定的なのは、やはり自由度の差でしょうか。社会的責任という面もありますが、何よりお金を払ってでも読みたいと思ってもらえる文章を書かねばならないのですから、まあ当たり前です。一方、応募作には、応募規定以外のしばりがありません。それこそ、何をどう書いてもいいのです。そんなのは今だけです。
 たとえば、現代に猟奇殺人犯として生まれ変わったホームズを、無頼刑事となったワトスンが追い詰める、という話なんてどうでしょう。ラストで進退窮まったホームズが「思考の伴わない行動ほど恐ろしいものはないね」とうそぶいて、愛人のアイリーンと滝壺たきつぼに身を投げるシーンなんて面白そうだと思いますが、担当の編集さんがついたあとでは「はい、却下」が怖くて言い出せません。しかし、もっと途方もない話でも、今なら挑戦できます(ただし、あくまで自己責任で)。
 さて本題です。この歴史ある2つの賞が1つにまとまると聞いて、「ちぇっ、競争率が高くなるじゃねえか」と嘆くあなたは誤解しています。プロを目指すなら、これはむしろ好機だと考えるべきです。理由はいくつも思いつきますが、文字数に制限があるので簡潔に――。
 何よりはくがつきます。これは、新賞が創設されて歴史が浅いほど効果が期待できるのでは。世間は「すげえ競争率を勝ち残った人」「実質、ダブル受賞じゃん」と受け止めます。この賛辞はやがて自信のもととなり、デビュー直後の不安満載の御身にとって大きな支えとなるはずです。創作なんて結局、根拠のない自信の産物ですから。
 あまたの先輩作家さんが異口同音におっしゃっていますが、「作家としての試練は、デビューしてから」始まります。「賞が統合されたおかげで、同期のライバルがひとり減ったぜ」ぐらいの気概ある才能が求められているのではないでしょうか。
 ぜひ、頑張って下さい。

伊岡 瞬(いおか・しゅん)1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をW受賞しデビュー。14年に刊行した『代償』は16年啓文堂書店文庫大賞の第1位を獲得。ドラマ化もされ大ヒットとなる。その他の著書に『145gの孤独』『瑠璃の雫』『教室に雨は降らない』など。


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