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連載

北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」 vol.22

北上次郎の勝手に!KADOKAWA 第22回・柚月裕子『検事の信義』

北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」

数々の面白本を世に紹介してきた文芸評論家の北上次郎さんが、KADOKAWAの作品を毎月「勝手に!」ご紹介くださいます。
ご自身が面白い本しか紹介しない北上さんが、どんな本を紹介するのか? 新しい読書のおともに、ぜひご活用ください。

志水辰夫の解説を読む


柚月裕子『検事の信義』
定価: 748円(本体680円+税)


 志水辰夫が文庫解説を書いていると聞いたので、柚月裕子『検事の信義』(角川文庫)を買ってきた。志水辰夫が文庫解説を他にも書いているのかどうか、詳しいことは知らないのだが(他にもあれば読みたい)、志水辰夫のファンであるので、そうと聞いたら黙っていられない。
 それに、志水辰夫と柚月裕子が、私の中では繋がらない。これまでの作品が似ているわけではないのだ。
 ずいぶん昔、広瀬正の作品が直木賞の候補にあがるたびに、司馬遼太郎が選評で絶賛していたことを思い出す。広瀬正と司馬遼太郎の作品が似ていたわけではない。SFと歴史小説だからジャンルがそもそも異なっている。しかし、司馬遼太郎は広瀬正の中に自分と同質のものを感じたのだ。そういうふうに思える選評だった。この一点から司馬遼太郎論を書けるなと考えたことを思い出す。書いてないけど。
 志水辰夫の今回の解説を読むと、広瀬正・司馬遼太郎のような関係ではなかった。純粋に読者として、批評家として、あるいは先輩作家としての柚月裕子論だった。
 そのなかで、「作者の描く母親像はありきたりで、精彩があるとは言えない」とは手厳しいが、「それが父親像となるとじつにせいで、陰影に富んだものとなる」と続けていることも書いておかなければならない。
 しかし今回、いちばん驚いたのは、この短編集が実に面白かったことだ。いまさらこんなことを書くのは大変恥ずかしいが、『孤狼の血』とか『盤上の向日葵』などの長編は読んでいたものの、柚月裕子の短編を読んだことがなかったのである。
 佐方貞人という主人公の設定がいいこともあるけれど(それを事務官の視点で描くのもいい)、その構成が群を抜いている。ストーリーに緊迫感が漲っている。そうか、柚月裕子は短編作家だったのだ、と今回初めて気がついたという話である。


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