角川文庫キャラ文通信
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実はすご腕の陰陽師としての顔を持つ吉祥寺の庭師・久世啓介が、庭にまつわる不思議な事件を解決する「吉祥寺よろず怪事請負処」略して「よろず処」シリーズ。人気シリーズの誕生秘話、そしてこれからの展開について、結城さんに語っていただきました!
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――「吉祥寺よろず怪事請負処」シリーズが生まれたきっかけを教えてください。
結城:新人時代に担当だったN崎女史と「また一緒に物語を作りたい」という思いがずっとありまして。「デジタル野性時代」という電子雑誌媒体で執筆のお話を頂いて、現代を舞台にした作品をやることになったのが始まりでした。
たくさんのひとが知っている、聞いたことのある街で普通に生活をする登場人物を描こうと思ったのと、書きはじめた当時あの辺りに住んでいてそれなりに土地勘があったので、吉祥寺を舞台に決めました。
あの街に、これまで書いてきたのとちょっとアプローチを変えた陰陽師がいて、そこにおかしなことや不吉なことや怪しいことが集まってくる、というのが最初に固まった物語の軸です。
一から物語を立ち上げる苦労もありました。一番は、辣腕編集者のN崎女史に久しぶりに容赦なくびしばしツッコまれて、とことんぶつかり合った新人時代の気持ちにはからずも立ち返ったことでしょうか。初心の大切さを思い出しました。相変わらずどころかさらに輪をかけて、ほんっと腹が立つんですよ!(笑)
――す、すみません、そんなにツッコミ厳しかったですか? いやこれでも昔にくらべると、わりと穏やかになったんですよ……(モゴモゴ)。
気を取り直して、インタビューに戻ります! シリーズも4巻目となりましたが、今回の読みどころはどこですか?
結城:作中時期はお盆の前です。あの世から帰ってくる人たち。向こうに連れて行かれやすい季節。この世のものではないものと行き交う時刻。いつの間にか境界を越えていることに気づかない。ふと違和感を覚える瞬間を、もしかしたら誰しも味わったことがあるのに忘れているだけなのかも。
主人公の保は結構怖い目に遭っているんですが、本人がどんなにもう関わらないと思っていても向こうはそんなことを考慮してくれないんですよ。考慮してくれないんだから、自分たちでどうにかするしかない。
今回は珍しく本の発売時期と作中の季節がちょうど合っていることもあり、そういう部分が際立つ巻になったような気がします。意図はしていなかったんですけどそんなふうになっていました。
N崎女史からは「私、この巻が一番好きです」とのお言葉を頂きました。
――はい。楽しさあり、怖さあり、涙ありの、とても贅沢な巻になっていると思いました。 次に、お気に入りのキャラクターについて教えてください。
結城:みんな気に入っているんですが、物語を振り回してくれてとてもいい味を出すという意味で、庭師な陰陽師久世啓介の異母弟・弓弦は大きな存在感があります。実は弓弦のファッションを考えるのが結構大変なんです。どう見てもおかしい色と模様の目にうるさすぎる組み合わせをいかにそれっぽく書くか、毎回自分の中の常識と戦っています(笑)。
一方、主人公の保はその辺にいそうな地味な大学生なので、あのふたりが一緒にいたらそれはもう目を引くでしょうね(笑)。
保も啓介も食にそれほどの情熱を持っていないので、細かく情報収集をして意欲的に食べ歩く弓弦のおかげで物語に吉祥寺っぽさを出せている気がします。
あとは、2巻に出てきた「三郎太」に大変強い思い入れがあります(笑)。
――シリーズの今後の展開を、可能な範囲で教えてください。
結城:これまで知らなかった久世家のことを保が知っていく、という展開になる予定です。
知るということは知られるということですので、否が応でも巻き込まれていくことに。
保自身に重大な秘密があるかというと、そんなことはないはずなんですけど。主人公は大変だなぁと思います。
啓介が家を出るに至った詳しい事情や、久世一族の派閥争いやお家騒動などなど。そこにはた迷惑な破戒僧我聞も絡んでくるかと。
あと、造園やガーデニングの資料を大量に揃えたので、ちゃんとそれらを活かして庭師らしいエピソードも盛り込んでいきたいのですが、果たしてできるのか……。
――ありがとうございました。最後に、読者に一言メッセージをお願いします。
結城:「吉祥寺よろず怪事請負処」略して「よろず処」は、もしかしたら本当にこういうことがあるかもしれないと読者の方に思ってもらえるような話、を目指しています。
超スローペースで書いてきたシリーズですが、おかげさまでご好評いただき、このほど4巻が発売になりました。
今後は書き下ろしで定期的に出させて頂けるように、また、長くつづけていけるように、物語が更に面白くなるよう頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。
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