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レビュー

これは江戸の“スパイ小説”だ!「暴れん坊将軍」の脚本家が贈る鉄板エンタメ小説『江戸の御庭番』

【カドブンレビュー】

 
どうもどうも。
カドブンを訪れて下さっている皆様、こんにちは。
「明けましておめでとうございます」も言わないまま二月になってしまいました。
今年も素敵な物語と出会いがありますように、そして楽しく読書が出来ますように!
というわけで、新年第一弾は藤井邦夫著の『江戸の御庭番』でございます。
何を隠そう、昨年「この中からレビュー作品を選んで下さい」とリストを頂いた時、

「江戸の庭師の話!? それは面白そうじゃないか!」

と即決したのが本書。
本当に勘違いというか、そそっかしいにも程があります(笑)。
「御庭番」は庭師ではなく、八代目将軍徳川吉宗が設置した隠密職で、現代でいうならば、テロ対策ユニットとか公安にあたる部署と考えていいでしょう。
そんなお役目を担う倉沢家に婿入りしたのが主人公の喬四郎きょうしろう
そんな喬四郎がやってきた江戸では、盗みに押し入り目撃者を無情に殺害し、牛頭馬頭の印を残していく盗賊が世を騒がしていたのです。
このような輩が野放しのままでは将軍の威信に関わると、吉宗より盗賊の退治を命じられ、喬四郎はさっそく捜査を開始。
盗賊団を追うにつれ、背後に蠢く巨大な陰謀の姿が明らかになっていくのでした!

このように、本書は舞台こそ江戸の都ですが、主人公が膨大な時間を尾行や張り込みに費やし、手がかりを手に入れながら黒幕に近づいていく様は、時代物というよりも、「スパイ小説」や「探偵小説」に属するのでしょう。
江戸の町や運河を駆け巡り、刃を振るった後に辿り着く敵の正体にビックリさせられたりと、まさにエンターテインメント。
徹底的に削ぎ落とされた描写も非常に印象的でした。
時に読みづらいと感じるかもしれない情報量の少なさですが、その厳選された少ない言葉の裏には、読者が想像する余白が大きく残されています。
こんなに少ない言葉なのになぜこんなにも情景が浮かぶんだろう。
何も説明されていないのに、なんで登場人物の胸の内がこうも伝わってくるんだろう、そう何度も思わされる文体でした。
こんな文章が書けるのは一体どんな人なんだろう、そう思って調べてみると、著者の藤井邦夫は「暴れん坊将軍」などの脚本を手がけた脚本家でもあるんですね。
映像化されることを前提としたドラマの脚本は、小説と比べたら圧倒的に情報も描写も少ない。だからこそ、こんなにも少ない言葉で情景や心の動きを伝えられたのかもしれない、ふとそんなことを思いました。
さてさて。
この『江戸の御庭番』は今後シリーズ化され、続いていくようですよ。
倉沢家にやってきた隠密、そして婿養子の喬四郎、今後どう成長し、どんな活躍をみせてくれるのでしょうか、楽しみです!


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