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レビュー

カクヨム文芸部 「注目の書評家・三宅香帆が選ぶ、カクヨム新作金のたまご 9月~10月新規投稿作品」

注目の書評家・三宅香帆さんのカクヨム公式レビュー

はじめまして! 今回レビューを担当させていただく三宅と申します。
私は普段、書評家としてさまざまな本の紹介や解説を書いているのですが、このようにWeb小説サイトの小説について書くのははじめて。カクヨム、ちゃんと読んでみると本当に多種多様な書き物が掲載されているところがいいですよね。いろんなジャンルの作品を取り上げながら、その作品の面白さについて語れたらと思っております! どうぞよろしくお願いいたします!
今回は「金のたまご」ということで、まさに、まだ多くの人の目には触れられていない(?)、光る新作を取り上げたいと考えてます。今回は、こういう作品が増えるといいな、こういう作品がこれからたくさん読まれてほしいな、と思う四作を選びました。楽しんでもらえますよう!
(本記事は「カクヨム」に2021年11月5日に掲載された内容を転載したものです)

評者:三宅香帆

小説家という夢がかなった後の光景

『◆第6回ネット小説大賞を受賞した、書籍化作家(?)のエッセイ◆』
https://kakuyomu.jp/works/16816700427437593345

小説家ってどうやったら稼げるの? そんな答えがあまり出なそうな命題に全力で取り組む作者のエッセイである。
作者はなんと書籍化経験のある小説家。WEB小説サイトにコツコツ自分の作品をあげていたところ、ある時から急に人気作品に! ブックマークも増え、人々の目に留まるようになった。夢の書籍化、小説家の印税生活も目前! と思ったものの、その作品はシリーズ化することなく、書籍は一冊で終わってしまう。
商業出版で稼げないならば、ほかに方法はないのか? シリーズの続編をどこかに載せて、収入を得ることはできないのか? 作者は、さまざまな小説掲載サービスを比較検討してゆく。
このエッセイの面白いところは、作者が金額まで赤裸々に紹介しながらサービスの検討をしているところ。素人からしたら、小説掲載サイトなんてどこも同じに見えるが、意外と金額にしろサービス内容にしろ違いはあるものだ。書籍化の夢の後の光景、「小説でお金を稼ぎたい」あなたは必見だ。

あの古典文学を生み出した天才作家の日常を読める!?

『紫式部日記 舞夢訳』
https://kakuyomu.jp/works/16816700427595848925

誰もが教科書で読んだことがあるであろう『源氏物語』。あなたは、その作者の日記が残っていることをご存知だろうか? 『紫式部日記』。原文から、現代語訳してくれているのがこの「紫式部日記 舞夢訳」である。
古今東西、有名な作品をつくった作者の話というのは面白いものである。「へえ、こんな人があの物語を作っていたのか!」とわかる。日本文学の原点ともいえる『源氏物語』の作者なのだ、日記が面白くないわけがない。
たとえば、晴れの舞台用にと、藤原道長が「映える女房」を選んだ時のこと。(「第34話髪上げたる女房は、」)。
「若い女房達が「恥ずかしくて辛くてなりません」「大変なお役目を」などと言い出して、泣いてみたり嫌がって見たりする始末でした。
このような醜態は、縁起が悪い、そんなことまで感じてしまいました。」

舞夢訳はそう訳す。なんとも、紫式部の「チッ、晴れがましい舞台なんだからちゃんと仕事しろよ」と若い女房たちに舌打ちしている様子がわかる、ちょっと笑ってしまう場面だ。無料で読める『紫式部日記』、ぜひ読んでみては。

アイドルだって楽じゃない!

『底辺アイドル四月一日さんは、元親友の人気アイドル八月一日さんを見返したい』
https://kakuyomu.jp/works/16816700427935157363

アイドルといえば、いま一番「野心のある女の子」を描くのに適した舞台ではないだろうか。
この作品は、アイドルに憧れた主人公・四月一日あかりの物語。
しかしアイドルになって事務所に所属したはいいものの、まったく鳴かず飛ばず。事務所は弱小事務所、ほとんどコンビニバイトの日々。アイドルの仕事は中学生からやっているわりに、自分はもう二十代なかば。
自分はもうこれ以上のしあがることはできないのか? このままコンビニバイトをやってて終わるのか? そう考えているときに、あかりのもとに、九州での仕事が入って来た!
この物語の魅力は、地方ローカル局でのあかりの奮闘や、そこで出会う女の子との交流。ちょっと百合展開!? と読者は期待してしまうような、可愛いアイドルの女の子たちの奮闘を読むことができる。
アイドルだって楽じゃない。でも、楽じゃないからこそ、あかりには頑張ってほしい。そんな期待を寄せてしまう作品なのだ。

近現代史好きにおすすめしたい、あのIFを考えるシリーズ

『異世界ドイツ帝国 ~”もしも”ドイツ帝国が第一次世界大戦で勝利していたら?~』
https://kakuyomu.jp/works/16816700427600589554

世界史の授業で近現代史を勉強したとき、「歴史ってけっこう偶然によって左右されてるよなあ……」と驚いた記憶がある。とくに近現代史は、さまざまな国の思惑が絡み合う。ある国の状況がすこしでも違っていたら、歴史は大きく変わっていたのかもしれない、と思わされる。
この作品は、そんな妄想ともいえる歴史好きの「もしもあのとき……」と考えてしまう癖を最大限に生かした、妄想近現代史を描いたシリーズである。
たとえば、ドイツ帝国が第一次世界大戦で勝利していたら、どうなっていただろう? 
そりゃ歴史は変わるよ、と世界史の先生は言うだろう。しかし実際、どうやって、どんなふうに? どの国に影響があるのか? 現ドイツだけじゃなくて他の国は? そんな妄想を真っ向から綴る作品だ。歴史好きはぜひ読んで欲しい。


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