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レビュー

カドブンレビュアー・鶴岡エイジが選ぶ「2017年ベスト3」

2017年に発売された作品の中からカドブンレビュアーが選んだ「2017年ベスト3」をご紹介いたします。年末年始のブックガイドにお役立てください。

今年刊行された作品のベスト3ということで、今年1年を振り返って3作品を選んでみた。
どの作品も未読の方にはぜひおすすめしたい作品ばかりだ。

下村敦史『サイレント・マイノリティ 難民調査官』(光文社)
本作は、筆者の既刊『難民調査官』の続編だが、前作よりも読みやすく、物語としても楽しめるように進化した、下村作品らしい硬派な社会派ミステリだ。シリア難民を取り上げた本作は、平和な国に暮らす我々に世界の現実を容赦なく突きつけてくる。日々マスコミから発信される報道を鵜呑みにすることの危うさ、ネットに溢れる情報の不確かさ、自ら判断するための材料をどこに求めるのか、その判断すら困難な世の中を生きる私たちに、筆者はミステリという形をとって警鐘を鳴らす。「真実はどこにあるのか」を追い求めること、そこから目をそらさない覚悟を持つことの大切さを教えてくれる。今まさに目の前にある社会問題を取り上げながら上質なミステリとの両立を見事に果たした本作は、筆者の力強いメッセージを感じる傑作だ。

柚月裕子『盤上の向日葵』(中央公論新社)
柚月裕子の描く硬派で男くさい物語には毎回圧倒される。映画化が決まり話題にもなった『孤狼の血』や、過去の過ちと向き合う刑事を描いた『慈雨』、そして今年刊行されたのが『盤上の向日葵』だ。
この作品は不可解な謎を秘めた殺人事件を通して、一人の天才棋士の数奇な運命を描いている。不遇の少年時代を過ごす中で将棋と出会い、棋界の頂点を目指した主人公の上条桂介をはじめ、孤高の真剣師である東明、無頼派刑事の石破など個性的な登場人物たちが繰り広げる人間ドラマは読み応え抜群。謎解きの面白さもさることながら、それぞれの男たちの生き様を描くことこそ柚月作品の真髄なのだと確信する。作品を重ねる毎に深みを増し、もはや貫禄さえ感じてしまうのは私だけではないはずだ。名作として評価の高い佐方シリーズの続編が待ち遠しい、個人的には今最も目が離せない作家である。

恒川光太郎『無貌の神』(KADOKAWA)
これまで読んだことのなかった恒川作品に今年初めて挑戦。それがこの『無貌の神』。怪しい装丁そのままに不思議な世界が広がる短編集。どの話も現世と異界が混じり合うような曖昧な世界を舞台に、寓話的要素を交えながら人の業を描き出す。今年の春頃に読んだにもかかわらず、特に表題作のイメージはいまだに頭にこびりついて離れない。文字通り神のような癒やしの力を持つ存在「貌のない神」。その神はまた人を喰うという。その真実の姿とは…。この作品をきっかけに、筆者のデビュー作にして名作である『夜市』や『スタープレイヤー』などの他作品に触れることになった。そんな唯一無二の独特な世界を創り上げる恒川作品の不思議な魅力は、もはや魔力と呼ぶにふさわしい力を湛えて読者を異界に誘い、そして捕らえて離さない。そう、まるで『秋の牢獄』のように。

皆さまの新しい年に、素敵な本との出会いがありますように。


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