文庫巻末の「あとがき」を特別公開!
本選びにお役立てください。
本格ミステリ、社会派ミステリ、ハードボイルド、そしていわゆる広義のミステリ。ひと口にミステリといっても、作品ごとにさまざまなジャンルに分類され、それぞれに独自の呼称が定着していることは、皆様もよくご存じのとおりです。
ミステリ小説の形式についても同様で、長編、短篇集、連作短篇など、同じ一冊の本でもいろいろな形態があり、その区分はゆるぎないといっても過言ではありません。
かくいう私自身、新しいミステリに出会うたびに、「これは本格だな」とか、「これはどっちかというと社会派で、本格度は低いかな」などと勝手にジャンル分けをしているわけですが、よく考えてみると、その線引きはけっこう
どんなミステリにも大なり小なり謎の提示とその論理的な解明。そして理不尽な社会への告発や、頭脳
そういう目で見れば、一話ごとに登場人物が代わる短篇集と毎回お
だとすれば、自分が書くミステリもあまり形にこだわることはないのではないか。そしてもっといえば、事件の背景となる世の中も現実社会そのものである必要はなく、縦横無尽に空想をめぐらせた一種の架空世界であってもいいのではないか。
デビュー以来、自分が書くものはつねに本格でありたい。それもいまある現実社会の中での本格を書きたい。これまでかたくなに歩んできた私にも心境の変化が訪れたということでしょうか。
そんな気持ちから、個々の話は独立した短篇でありながら、全体としては起承転結を踏まえた長編になっている。それも、たんなる本格の
二〇一九年九月に単行本として
そこでこのたびさらに四話の短篇を書き加え、タイトルも『罠』と改めて、一つの長編小説として文庫版での刊行になったわけですが、単行本を読んでくださった方々にも、完成版としていま一度最初から読み直していただけましたら幸いです。
なお、この小説はいうまでもなく便利屋が主役の本格ミステリなのですが、見方を変えれば、異色の刑事・
すでに本作を読み終えた方にはお分かりのように、この作品では、全七話にわたる個々の事件の中で便利屋が担った役割は何か。そして便利屋の正体を探る都築と便利屋のつかず離れずのバトルの
本作を読む前にこのあとがきをパラパラとめくっていらっしゃる方は、ぜひとも謎解きに挑戦してみてください。
ちなみに、その都築についてですが、担当編集者氏のアドバイスにより、外伝「インタールード 刑事の恋」なる小品が出来上がりました。県警の
最後になりましたが、ご愛読どうもありがとうございます。お楽しみいただけたことを、作者として心より願っております。
二〇二〇年十二月吉日
深木 章子
▼深木章子『罠』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322009000319/