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特集

【ブックガイド】居場所なんか、なくたっていい さすらう小説6選

ひとりで東南アジアをふらふらしていた頃、帰路の空港で毎回思っていたことがあります。
帰らないって手もあるよなあ……。
このままくるっと回れ右して、とりいそぎきのう泊まった安宿に戻って、おばさんフロントとカフェでてんてこまいだったから手伝って小銭もらって、ちょっと店番やった屋台でも雇ってもらえるかもしれないし、あ、日本語習いたいひといないかな。お金がたまったら、南のほうに行きたいな。金子光晴とPANTAを愛する勢としてマラッカを見ないわけにはいかない……。
って、妄想だけは広がるんですが、当然現実味のカケラもあるわけなく(だいいち言葉ぜえんぜんできない。英語ですら)、すごすごと出国手続きに向かうのでした。
安心したい、安定したい、明日の心配なく暮らしたい。でも、なにもかもを振り捨ててさすらいたい。人間には、行き倒れる自由だってある。矛盾しまくりだし、だいいち自分にそんな度胸がないのは知ってるけど、仮想のさすらう自分は心のはじっこをキャンプ地としていて、そこから何度でも出かけてゆくのです。いつか、帰ってこないこともあるかもしれないけど、それはそれで祝福するべき事態、というか、そのときは実体の自分にもさすらう時が来たんだと思う。
そんなわけで、物語のなかのさすらうひとたちは、みんな友人です。

居場所なんか、なくたっていい
さすらう小説6選

佐藤正午『熟柿』(KADOKAWA)



取り返しのつかないあの夜の過ちが、あったはずの平凡な人生を奪い去った。

激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子・拓を出産する。出所後息子に会いたいがあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は、息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。自らの罪を隠して生きる彼女にやがて、過去にまつわるある秘密が明かされる。

(KADOKAWAオフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322310001098/

江國香織『神様のボート』(新潮文庫)



これほど手放しに、一人のひとを恋うることができたら。

昔、ママは、骨ごと溶けるような恋をし、その結果あたしが生まれた。“私の宝物は三つ。ピアノ。あのひと。そしてあなたよ草子”。必ず戻るといって消えたパパを待ってママとあたしは引越しを繰り返す。“私はあのひとのいない場所にはなじむわけにいかないの”“神様のボートにのってしまったから”――恋愛の静かな狂気に囚われた母葉子と、その傍らで成長していく娘草子の遥かな旅の物語。

(新潮社オフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.shinchosha.co.jp/book/133919/

絲山秋子『逃亡くそたわけ』(講談社文庫)



「くそたわけ」たちの、どうしようもなく切実な逃亡記。

「どうしようどうしよう夏が終わってしまう」軽い気持ちの自殺未遂がばれ、入院させられた「あたし」は、退屈な精神病院からの脱走を決意。名古屋出身の「なごやん」を誘い出し、彼のぼろぼろの車での逃亡が始まった。道中、幻聴に悩まされ、なごやんと衝突しながらも、車は福岡から、阿蘇、さらに南へ疾走する。

(講談社オフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000204520

金子光晴『マレー蘭印紀行』(中公文庫)



虚実を往還しながら、詩人はさすらい続ける。

昭和初年、夫人三千代とともに流浪する詩人の旅はいつ果てるともなくつづく。東南アジアの自然の色彩と生きるものの営為を描く。

(中央公論新社オフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.chuko.co.jp/bunko/2004/11/204448.html

宮内悠介『偶然の聖地』(講談社文庫)



ここではないどこか、どこにもない場所へ。

地図になく、検索でも見つからないイシュクト山。
時空がかかった疾患により説明不能なバグが相次ぐ世界で、
「偶然の聖地」を目指す理由(わけ)ありの4組の旅人たち。
秋のあとに訪れる短い春「旅春」、世界を修復(デバック)する「世界医」。
国、ジェンダー、S N S--ボーダーなき時代に鬼才・宮内悠介が描く物語という旅。

(講談社オフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000349133

阿佐田哲也『麻雀放浪記 (一) 青春編』(角川文庫)デジタル版



悩めるすべての者に贈る珠玉のアウトロー小説

終戦直後の上野不忍池付近、博打にのめりこんでいく“坊や哲”。博打の魔性に憑かれ、技と駆け引きを駆使して闘い続ける男たちの飽くなき執念を描いた戦後大衆文学最大の収穫!!

(KADOKAWAオフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/199999145951/

中山可穂『中山可穂コレクション 1 長編小説『感情教育』『マラケシュ心中』』(集英社e単行本)



「恋がいつか必ず終わるものなら、わたしたちは恋人同士になるのはやめましょう」

あえて男名前を使う、女性歌人の緒川絢彦が短歌結社の歌会で出会ったのは、師と仰ぐ大歌人の若く美しい新妻だった。近づいてはいけない相手、恋をするにはあまりに危険な存在。しかし、募る思いは止めることができずに、やがて。逃避行の果てに恋人たちを待っていた運命とは……。

(集英社オフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?jdcn=08000000948472000000

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