なりたくて、なっておいて、何ですが、編集者ってつくづく妙な商売だなと思います。
執筆しない、印刷しない、デザインしない、営業しない、店頭でカバーひとつかけやしない。
天下無敵の「なんにもしない商売」なんだけど、だいたい全部に関わっている(カバーはうまくかけられない)。なんだろうこの仕事。
昔、あるひとが「火のないところに煙を立てる仕事」と言ったのを思い出します。確かにそうかもしれない。それぞれのクリエイターや、本を売る、広めるひとたちの中にある「燃料」を見定めて、エイっと火のついたマッチを投げる。うまくいくと大きな炎が上がる、ときどき巻き込まれて黒焦げになる。
そう、編集者の本質は「プロの巻き込まれ野郎」なのかもしれません――なので、巻き込まれたあげく、時に物語の起点になったりもする。
そういう、羨ましくも大変な目に遭う同業者たちが登場する小説を集めました。いろいろあるけど、みんな、無事でいてね。
物語の裏方は、物語に巻き込まれがち 編集者からはじまるホラー&ミステリー7選
和田正雪『噓つきは同じ顔をしている』(KADOKAWA)
怪奇現象が起こる《事故物件》マンションの謎を探れ。驚愕のどんでん返し!
弱小出版社の若手編集者・山城龍彦は、社長命令で、事故物件だと言われているマンションに住むことになった。そこで起きている怪奇現象の検証や取材をして本にまとめろというのだ。優秀過ぎる学生バイト・小野寺はるかの援軍も得て聞き込みをし、このマンションがお化け屋敷と呼ばれている証言を得るが……。
マンションに住む武藤大樹の小三の息子が行方不明になってしまった。そんな状況で妻は、「きっと悪魔に攫われた」と言い出す。霊感があるという妻の突拍子もない発言は初めてではなかった。
売れない役者兼ホストだったがスカウトされ、深夜番組で霊能力者を演じて人気を博していく葛木竜泉。もちろんニセ霊能力者なのだが、番組の企画で心霊マンションでロケをすることになり……。
オカルトYouTuber・サーナこと冴木早菜。マンションを仕事場にしてさっそく怪奇現象が起こり、ネタになるとほくそ笑むのだが――。
さまざまな思惑が絡み合う《事故物件》マンション。そこに隠された驚きの真実とは……!?
(KADOKAWAオフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322409000977/
背筋『近畿地方のある場所について』(KADOKAWA)
情報をお持ちの方はご連絡ください
近畿地方のある場所にまつわる怪談を集めるうちに、恐ろしい事実が浮かび上がってきました。
(KADOKAWAオフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322304000496/
木犀あこ『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』(角川ホラー文庫)
臆病作家が怪異に挑む! 第24回日本ホラー小説大賞・優秀賞受賞作
霊の見える新人ホラー作家の熊野惣介は、怪奇小説雑誌『奇奇奇譚』の編集者・善知鳥とともに、新作のネタを探していた。心霊スポットを取材するなかで、姿はさまざまだが、同じ不気味な音を発する霊と立て続けに遭遇する。共通点を調べるうち、ふたりはある人物にたどり着く。霊たちはいったい何を伝えようとしているのか?
怖がり作家と最恐編集者のコンビが怪音声の謎に挑む、第24回日本ホラー小説大賞・優秀賞受賞作!
(KADOKAWAオフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/321706000415/
塩田武士『騙し絵の牙』(角川文庫)
圧倒的にリアルな筆致で出版界の<光と闇>を描いた前代未聞の小説
出版大手の「薫風社」で、カルチャー誌「トリニティ」の編集長を務める速水輝也。
中間管理職でもある40代半ばの彼は、周囲の緊張をほぐす笑顔とユーモア、コミュニケーション能力の持ち主で、同期いわく「天性の人たらし」だ。
ある夜、きな臭い上司・相沢から雑誌廃刊の可能性を突きつけられ、黒字化のための新企画を探る。
大物作家の大型連載、映像化、奇抜な企業タイアップ。雑誌と小説を守るべく、アイデアと交渉術で奔走する一方、
巻き込まれていく社内政争、部下の不仲と同期の不穏な動き、妻子と開きつつある距離……。
交錯する画策、邪推、疑惑。
次々に降りかかる試練に翻弄されながらも、それでも速水はひょうひょうとした「笑顔」をみせる。
しかしそれは、どこまでが演技で、どこからが素顔なのか? やがて、図地反転のサプライズが発動する。
出版業界の現状と未来を限りなくリアルに描いた群像小説……“人たらし”編集長が、ラストに牙を剥く!
(KADOKAWAオフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/321905000408/
北村薫『太宰治の辞書』(創元推理文庫)
時を重ねて変わらぬ本への想い……《私》は作家の創作の謎を探り行く――。
みさき書房の編集者として新潮社を訪ねた《私》は新潮文庫の復刻を手に取り、巻末の刊行案内に「ピエルロチ」の名を見つけた。たちまち連想が連想を呼ぶ。卒論のテーマだった芥川と菊池寛、芥川の「舞踏会」を評する江藤淳と三島由紀夫……本から本へ、《私》の探求はとどまるところを知らない。太宰が愛用した辞書は何だったのかと遠方にも足を延ばす。そのゆくたてに耳を傾けてくれる噺家、春桜亭円紫師匠!
(東京創元社オフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488413071
レックス・スタウト『編集者を殺せ』(ハヤカワ・ミステリ)
美食家探偵シリーズ屈指の名作
探偵ネロ・ウルフを、事故死した娘は実は殺されたのではないかと考える父親が訪ねてきた。娘は編集者で亡くなった晩はアーチャーなる作家と会う約束をしていたという。ウルフはこの作家の名前に聞き覚えがあった。先日、弁護士事務所で起きた殺人事件にも同じ名が登場したのだ……。
(早川書房オフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/g/g0000211767/
アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件<上>』(創元推理文庫)
アガサ・クリスティへの愛に満ちた完璧なるオマージュ・ミステリ!
1955年7月、サマセット州にあるパイ屋敷の家政婦の葬儀が、しめやかに執りおこなわれた。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、あるいは……。その死は、小さな村の人間関係に少しずつひびを入れていく。余命わずかな名探偵アティカス・ピュントの推理は--。
(東京創元社オフィシャルサイトより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488265076
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