いつの世の中でも、人の心は似ている──『翡翠色の海へうたう』レビュー【本が好き!×カドブン】
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『翡翠色の海へうたう』レビュー【本が好き!×カドブン】
書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
第35回のベストレビューは、Nさんの『翡翠色の海へうたう』に決まりました。Nさん、ありがとうございました。
▼先月のベストレビュー
エジプト考古学の知識が活かされた「エジプト伝記SF小説」──『ツタンカーメンの心臓』【本が好き!×カドブン】
なんで人は物語を読んで書くのでしょう。
レビュアー:Nさん
なんで人は物語を読んで書くのでしょう。
この物語の主人公は、平々凡々の冴えない女性。文章を書くことは得意だったので、何か一山当てたいと小説家を目指して応募していました。
賞にノミネートはされるけれど、審査員には「いまいち何か足りない」と評価されてきました。
そんな折、好きな韓国アイドルが慰安婦問題を取り上げていて…そこに主人公は着目し、次の応募作は、慰安婦問題のことをテーマにしようと決めるのですが…。
遠い世界で、自分とは身近ではないかもしれないけれど。主人公は沖縄に連れてこられた女性を通して、歴史からいなかったことにされる人の気持ちを残したいと思いました。
それは、始めは自分の小説のためだったけれど、知っていくうちに、社会から爪弾きにされる自分とどこか重なることを感じんだと思います。
どこにいても、それがいつの世の中でも、人の心って似てると思いました。
遠い知らない誰かのことでも、知るきっかけを持って寄り添うことって大事だと思いました。
当時の人のことを知れば知るほど、分かってあげられるか分からないけれど、前より身近に感じました。
正直、なんと言葉にしたらいいのか迷いました。
私は慰安婦問題も国と国の事柄だと避けてきました。
けれどこの本を読んで、ただ関係ないことだとも言えない気持ちがあります。
分からないことも多いけれど、この本の中ような女性がいたこと、こんな思いをした人もいたんだよと知れただけでも、よかったです。
書誌情報
翡翠色の海へうたう
著者 深沢 潮
定価: 1,760円(本体1,600円+税)
発売日:2021年08月31日
国も、時代も、性別も、そのすべての境界を越えてゆけ――深沢潮、渾身作!
派遣社員、彼氏なし、家族とは不仲。冴えない日々を送る葉奈は作家になる夢を叶えるべく、戦時中の沖縄を舞台に勝負作を書くことを決める。しかし取材先で問題の当事者ではない自分が書くことへの覚悟を問われ……。
▼書籍の詳細はこちら
https://www.kadokawa.co.jp/product/322010000475/
▼Nさんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no13312/index.html