【キャラホラ通信2月号】『COPY』刊行記念 内藤了インタビュー
角川文庫キャラ文通信
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波瑠さん主演で2016年に連続ドラマ化もされた、大人気警察小説シリーズ「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」。シリーズ最新刊の『COPY』が、2月24日に発売となりました。
著者の内藤了さんに、その読みどころなどをうかがいました。
シリーズを読み続けている読者のかたも、本巻から手に取っていただくかたも、どうぞご注目ください!
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── : いよいよ「藤堂比奈子」シリーズも第9弾になりました。ここまで巻数が続いてきていることについてはいかがでしょうか?
内藤:『ON』でデビューした時は、「シリーズで」といわれて頭が真っ白になりました。
でも、自分を叱咤して書いてきてよかったと思っています。自分も比奈子と一緒に成長させてもらいましたから。
── : 『ON』を書かれた時はシリーズになるなんて考えもしなかったのですね!(注:『ON』は第21回日本ホラー小説大賞の〈読者賞〉受賞作)比奈子の成長、またご自身の成長については、具体的にはどういったところを感じておられるでしょうか?
内藤:『ON』は公募作品だったので計算する余裕すらありませんでした。無差別殺人への怒りを書こうと思ったら、警察やその他の知識が必要だっただけのこと。
だから、シリーズ化が決まって勉強を始めた。比奈子とまったく同じですね。
ありがたいことに、巻を重ねるにつれ、『書く』という覚悟ができました。何事に対しても立ち向かう姿勢が大切なんじゃないかと思うようになれました。
── : 『COPY』の内容紹介文の「クライマックスへ!」という文言にドキドキしている読者も多いのではと思います。シリーズはいよいよ佳境を迎えるのでしょうか?
内藤:自分のほうがもっとドキドキしています(笑)。
ご質問のように、シリーズはいよいよ佳境へ向かいます。ラストまで一気に盛り上がっていきたいです。
── : 今回は、遺体の心臓がくりぬかれ、現場は血痕で奇妙な「魔法円」が描かれているという事件に比奈子たちが挑みます。「猟奇犯罪捜査班」のサブタイトルに違わないこのような事件は毎回どうやって思い浮かぶのでしょうか?
内藤:内藤は偏執的猟奇マニアだと思われるかもしれませんが、そうではありません。
動機や心理が初めにあって、それを事件へ結んでいきます。作中で野比先生がする「潜入」の逆バージョンが、発想の元になっています。
── : 野比先生の「潜入」とは、事件の様相から犯人の心理を追うプロファイリングの方法ですね。その「逆」というのは興味深いです。とはいえ、動機や心理から、事件の具体的な状況を思いつくのはご苦労もあるのではと思います。取材などもされるのでしょうか?
内藤:取材もしますし、あとは資料を検討します。取材の利点は現地を肌で感じて文章に起こせることですね。自分は、読者さんが作中世界で登場人物と一緒に活動するような作品を書きたいので、情景を想起できることは大切なのです。
殺害方法の根底にはいつも「犯人の思い」があって、この犯人がこういうことを考えるとこういう殺し方になる。というように着想します。そこに苦労はないのですが、奇抜な殺害方法だと回収に苦労します。
たとえば『LEAK』では、生きた人間にお金を詰める方法を考えるのが大変でした。あの時は、既存機械の改造方法や簡易設計図を考えるという、ほぼ変態の所業をやりました。情報手段が文字なので煩雑な説明はできませんでしたが、読者さんの読む速度を殺さずに書く技術があったら入れたかったです。
── : 『COPY』第一章では、人気キャラクターである鑑識官の三木と、恋人の麗華との結婚式も描かれますね。登場人物もにぎやかで、シリーズを追って読んでいる読者は嬉しいのではと思います。このシーンはどうやって生まれたのでしょうか? 込められた思いなどございましたらお聞かせください。
内藤:二人の結婚式は前からイメージがあったというか、三木も麗華も個性が強いので、作者が翻弄されるほどすべてが決まってしまっていました。今回、作品のクライマックスと重なって、蓋を開けたら、登場した皆さんがお招きされていた。二人の優しさだと思います。
── : ではキャラクターが自然に動いて出来た場面なのですね。二人の様子がとても幸せそうで、また結婚式の演出も彼ららしくて、思わず笑ってしまいます。 比奈子シリーズはそのように、キャラクターが作者を翻弄するような執筆スタイルなのでしょうか。初めからそうでしたか? 異なる場合、いつごろからでしょうか?
内藤:キャラクターが勝手に動き出す作品のほうが、面白くなるように思います。
比奈子シリーズでいえば、最初に翻弄されたのは『ON』の死神女史でした。あの人は登場させる予定すらなかったキャラなのに、あのシーンで突然出て来てしまい、現在に至るまで一切の制御が効きません。もう好き放題です。死神女史に引っ張られるように他のキャラも命を持って、今は作者が各キャラを追いかけながら書いているような感じになってしまいました。
── : シリーズが進むにつれ、様々な人物の思惑が交錯するようになってきました。本巻の読みどころはどこでしょうか? お気に入りのシーンなどはありますか?
内藤:シリーズを通して読んでくださった方々は、『COPY』でも「あ」と思うところがあるはずです。もちろん単体でも楽しんでもらえるように書いてはいますが、せっかくシリーズなのだから思惑や事象が絡み合う楽しみも忍ばせたいと思っていて、そこが伝わったら嬉しいです。
衝撃シーンが多い今作ですが、お気に入りは、なんの変哲もない食事シーンです。日常はとても大切だから、必ず入れるようにしています。絶対美味しいメニューです。
── : 食事のシーンは、登場人物たちのやり取りが楽しかったり、人柄が見えたりして印象深いですよね。比奈子シリーズといえば、長野の名物もたくさん出てきます。比奈子が持ち歩いている「八幡屋礒五郎」の七味や、そのほかの名物など、登場させようというきっかけはなんでしょうか?
内藤:優秀でもなく美人でもない比奈子という主人公を印象づけるため。というのが先にあり、お祖父ちゃんの代からファンだった八幡屋さんの七味唐からしにピンと来ました。長野にはこんなに美味しい七味があると自慢したいという、ごく個人的な理由です。
長野のオススメ自慢はまだ続くので、楽しみにしていてください。
── : お気に入りのキャラクターは誰ですか? 理由も教えてください。
内藤:自分は、周囲でツボにはまった人を見つけるとキャラにする場合が多いです。
だから作家内藤としてはみんな好きなのだけど、個人で言うなら東海林かな。
ああいう人が近くにいると、人生が上手く回るような気がします。
── : 東海林は比奈子の先輩刑事で、ドラマでは横山裕さんが演じてくださいました。ドラマと原作ではキャラクター設定が多少異なっていますが、どちらの東海林も佳い味がありますね。 キャラクターは、内藤さんご自身の周りのかたがモデルなんですね!
内藤:実はそうです。デザイン事務所をやっているため様々な人と交流があり、人間を描くという意味では恵まれた環境にいると思います。また、たまたま見かけた知らない人の行動などが強く印象に残り、それを作中やキャラに応用することも多いです。
東海林はそうした人々の複合体ですが、三木や高山ケイジケイジ(注:名前が「啓治」の刑事)のようにモデルがいる場合もあります。(本人たちには出演料として、毎回新刊を届けています・笑)
── : そういえば東海林は、内藤さんのほかの作品にもちょっと登場するのですよね?
内藤:はい。読者さんの感想に「八王子西署には彼らがいるから大丈夫」というようなものがあるのを読んで、その感覚を守りたいと思いました。作中人物が現実世界に肉薄しているということですから。昨年、幻冬舎から『ゴールデン・ブラッド』という作品を出したのですが、事件が警視庁管内で起きると、警視庁捜査一課へ異動した東海林も当然事件に関わることになる。そういう意味では、同時系列上で起きる事件の場合、他作の誰かが登場する可能性は今後もあると思います。
── : 大きな敵と対峙する流れが強まっている比奈子たちですが、今後の展開についてうかがえることを教えてください!
内藤:シリーズも9巻を迎えて、登場人物も増えてきました。けれど、使い捨てキャラは一人もいません。いらない人なんかいないんだということを、突き詰めて行けたらと思います。比奈子と保は答えを出すのか、永久やセンターの人たちは、ガンさんと女史は、そして猟奇犯罪捜査班の仲間たちは。
結末は私にもまだ見えていません。書き切れるように応援してください。
── : 最後に、読者に一言メッセージをお願いします。
内藤:藤堂比奈子シリーズは読者賞選考委員の続編を望む声で誕生しました。つまりこの作品は最初から内藤一人のものではありませんでした。書かせてくれたのはみなさんです。
楽しんでもらえるように頑張りますし、進みます!
ありがとうございました。
── : 内藤さん、ありがとうございました! 猟奇犯罪が題材であり、事件のハラハラドキドキはたっぷり。そして主人公の比奈子の思いや、捜査班のチームワークなどに読後は温かい気持ちも溢れる新感覚の警察小説シリーズ。ぜひお手に取ってみてください!
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