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レビュー

笑い飯・西田幸治さんがハマった! 謎多き作家の異色短篇集『満月と近鉄』「著者のイケてない臭にシンパシーを感じました」

書評家・作家・専門家が《今月の新刊》をご紹介!
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(評者:西田幸治 / お笑い芸人)

この本は、4篇の奈良が舞台の話で構成されているのですが、奈良といえばやはり歴史が長い故にどうしても堅苦しい重厚感に溢れた説明が多分にあって、読んでいてしんどーいとなりがちです。

しかし、この本は読んだところそんなものは微塵もなく、むしろ軽快といった感じでした。

特に1作目の「佐伯さんと男子たち1993」は、男子たちがとてもアホなのでサックサクの歯ざわり、ゴクゴクいける微炭酸な感じで読め、重厚感は全くありませんから重厚感アレルギーの方でも安心です。

タイトルにある1993年頃は私も学生で、しかも男子たちとほぼ同じような行動範囲だったので、作中での会議場所である駅前のマクドナルドの二階とかはめちゃくちゃ目に浮かびます。幼稚園生のとき誕生会をしてもらったマクドです。

そして高校生の時ですが、ラブレターを書いた事もあります。

一晩かけて書いたラブレターをポストに投函して帰ってきたら、切手を貼り忘れていた事が分かり、郵便局員さんが回収に来たタイミングで切手を貼らせてもらうために、切手と舐めて貼るのも汚いだろうからと水を入れたコップを持ってダッシュでポストまで戻り、ポスト横でコップ片手につっ立って回収待ちしている姿を近所のおばちゃんに見られ、後に西田さんちの息子が外で日本酒を飲んでいたと噂された事があるので、著者の前野さんにも似たようなイケてない臭を嗅ぎ取り非常にシンパシーを感じた話でした。

2作目「ランボー怒りの改新」は、大化の改新とランボーの融合した作品ですが、タイトルから予想はついてもイメージできない内容です。

何故融合しようとしたのかは理解できませんが、見事な融合でした。どう融合するのか期待していると、すぐランボーでした。すっごいランボーでした。しかし、ちゃんと大化の改新しているのです。めちゃランボーなのに。怒ってました。

3作目「ナラビアン・ナイト 奈良漬け商人と鬼との物語」はアラビアンナイトを奈良バージョンにアレンジしているのですが、この作り込み具合と完成度が凄いです。丸々一冊ナラビアン・ナイトで読んでみたいと思いました。

そして4作目「満月と近鉄」。これは他の3作と毛色が違います。作家志望の若者が主人公で、著者の自伝的な内容なんですが、今までの3作のイメージもガラッと変わるなんとも不思議な話。

え? どっからどう? まるで奈良から出発した近鉄電車が乗り換え無しで難波こえたらシームレスに阪神線になっていくような、うーん、どうやら違います。違いました。

とにかくこの4篇を畳屋さんが書いたというのが不思議です。文豪なんかが和室で頭をガリガリ掻きながら執筆しているイメージですが、いぐさには何かそういった文学的創造に働く成分でもあるのでしょうか。

ちなみに学生時代の私らの会議場所は、マクドよりもうちょい駅寄りのミスドでした。たまたま混んでいたときにマクドにしたんですが、そのとき近くの席からいぐさの香りがしていたような。そうか、あれはきっと。



前野ひろみち『満月と近鉄』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000284/


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