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特集

宮部みゆきが紡ぐ、怪しく怖いけれども癖になる、壮大な変わり百物語『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』

文庫巻末の「あとがき」を特別公開!
本選びにお役立てください。

 本書を手に取っていただきまして、ありがとうございます。たった一冊の本との出会いにも因果の糸が絡んでいる──なにしろ本書のタイトルがタイトルですから、そんなことを申し上げてみたくなりますが、むろん、全てはフィクションの怪談でございますので、どうぞ安心してお楽しみくださいませ。

 第一巻『おそろし』からこの三島屋シリーズをご愛読いただいている読者の皆様には、亀の歩みのような刊行ペースにお付き合いをいただき、感謝の言葉しかありません。いつもあたたかいご声援をありがとうございます。

 今作、『変調百物語伍之続』をもちまして、三島屋の黒白の間でずっと聞き手を務めてきたおちかが「卒業」いたしました。従兄いとこの富次郎がバトンを受けて二人目の聞き手となり、現在、『くろたけじん殿てん 三島屋変調百物語六之続』へとつながっております。

 変わり百物語の聞き手を交代させることについては、かなり以前から考えておりました。おちかを描いているうちに、このに幸せになってもらいたいなあと思うようになったり、こうした一対一の語りでは、聞き手が代わることでもお話の傾向が変わり、シリーズの幅を広げることができるのではないかと思ったり、つまりは作者の欲が募ったことが大きな理由です。

 私は昔から実話怪談のファンなのですが、書籍はもちろんウエブ上のまとめでも、編者や記録者によって、似たようなエピソードでも違う味わいが生まれることを、ずっと興味深く思っていました。

 変調百物語は、「人はなぜ語るのか」というテーマでスタートしたのですが、書き続けるうちに、「人はなぜ聞くのか」というテーマも生まれてきました。そもそも、この二つのテーマを切り離して考えようとすることが間違っていたのでしょう。

「なぜ」の次は「どのように」です。三島屋の奥の黒白の間では、今までもこれからも、「どのように語る人が来て、聞き手はどのようにそれを受け入れるのか」というお話が続いていきます。ご縁がありましたら、今後もどうぞお付き合いをいただきたくお願い申し上げます。

 百物語という趣向は、昔から、百話完結させてしまうと怪事が起こるので、九十九話で止めなければならないと戒められています。一方、九十九話まで到達せずに途中でやめると、足りない話数分の怪事が起きるという戒めもまた存在するのです。私は大変なことを始めてしまったわけでして、健康に留意しアイデアをめながら、この戒めを破らぬよう、こつこつ努めていかねばなりません。

 おちかは嫁いで新妻になり、やがては子供に恵まれておっかさんになる予定ですが、過去におちかを苦しめ、またおちかによって苦しめられた者の因果が消えたわけではありません。それを解消できるように生きてゆくことが、聞き手の立場を離れたおちかの務めになると、私は思います。

 二人目の聞き手の富次郎は、就活中の大学生と同じくらいの年齢ですし、おちかのような辛い目に遭っていない分、おちかほど腹が据わってもいませんので、おろおろしながら聞き手を務めるうちに、少しずつ成長してゆくことになります。先輩のおちかが、そんな富次郎のよき相談役として登場することもあるかもしれません。

 KADOKAWAさんが、おちかの卒業を「第一期完結」と評してくれたので、ありがたくそのお言葉をいただくことにしました。第一期を見守ってくださいました読者の皆様に、あらためて厚くお礼を申し上げます。第二期以降も、ますます怖くて興味深い話をしてくれる語り手を描きたいと心しております。

令和二年一月吉日
宮部 みゆき 



宮部みゆき『三島屋変調百物語』特設サイト
https://promo.kadokawa.co.jp/mishimaya/


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