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特集

「愛がなんだ」東大上映会 登壇:今泉力哉監督、原作者・角田光代さん、熊谷晋一郎准教授〈第2回〉

主人公の女の子・テルコの片想いと人間模様を描く恋愛映画『愛がなんだ』は、今年4月に公開され、いまもなお上映され続けているヒット作。本作の上映会が東大駒場キャンパスで開催され、その後、監督の今泉力哉さん、原作者の角田光代さん、そして東京大学先端科学技術研究センター・准教授の熊谷晋一郎さんが登壇。トークセッション後半では観客からの恋愛相談に、その場でパネリストのお三方が即答する流れに。その模様を2回に分けてお伝えします!

構成/アンチェイン

原作


角田光代『愛がなんだ』(角川文庫刊)
https://www.kadokawa.co.jp/product/200501000062/

映画

『愛がなんだ』
監督/今泉力哉
原作/角田光代
出演/岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也、江口のりこ
aigananda.com
©2019映画「愛がなんだ」製作委員会

参加者からの質問その1

私もテルコのように、ある男性と関係をダラダラと続けていて、周りからは「セフレじゃん、そんな人やめなよ」と言われました。彼と過ごしたけだるい日曜日の朝や深夜眠れなくてコンビニで買って食べたカップラーメンとか、そういう日常がどうにも愛おしくて、ただ体の関係しかないセフレなんて言葉で片付けてほしくなかった。そのような思いをSNSで挙げたところ、「付き合ってないのに体の関係がある時点でクソ、汚い」というリプが来ました。


左から、今泉力哉さん、角田光代さん


角田:私、これびっくりなんですけど、今ってこんなプライベートなことを、誰もが見れるようなSNSに公表してしまうんですか! 私も以前、すごく好きになった人がいたんですが、相手は私のこと大して好きでもなくて。でも便利だから飲み会のにぎやかしみたいのに呼ばれて、よく駆けつけたりしてたんです。でもそういう扱いを受けてるっていうことが恥ずかしくて、そのことを私は友達に言えなかったので、公にする、ということにまず驚きました。それとはべつに、規定できない関係や、その関係のなかでの時間を幸せだなと思うこともあるし、別に世の中の常識に自分の気持ちを当てはめる必要はないだろうと思います。

今泉:こういう匿名の場だからこそ言えて、友達にはちゃんと言えてないっていう可能性はあると思います。僕はセフレとかいた経験がないし、セフレになったこともないので引き出しが少なすぎてわからないですけど……。

熊谷:いやこれ、難しいですね。映画の文脈に則して考えたときに、男と女の一対一の関係とはまた違う広がりとして、シスターフッドという女同士の絆ってありますよね。ドロドロな恋愛をしているテルコを絶妙な距離感で誘い続けるすみれは、その象徴的な立ち位置だな、というふうにも思っていて。この匿名の方に、もしシスターフッド的なかたが存在すれば、そういう相談は可能なのかなと思いました。
 一方でテルコと親友の葉子の関係は、互いに「大きなお世話だ」というところまで踏み込んでしまう。こういう打ち明け話も、相手から「そんな男やめときなよ」っていう距離感で来られたら、反発する気持ちもわかります。でも「何かあるよね」っていうふうに寄り添ってくれるシスターフッドが一人でもいたら、それだけで希望が生まれるような話だなあというふうに思いました。

参加者からの質問その2

両親が離婚していることもあって、幸せはいつか終わる、と悲観的に考えてしまいます。恋人ができても毎回、「いつ終わっちゃうのかな」とビクビクしています。好きであればあるほど不安が大きくなって、恋人にかける言葉も、「どこにも行かないでね」とか「ずっと一緒にいようね」とか、つい重くなりがちです。ずっと続く幸せってあるのでしょうか。


左から、田川菜月(主催)さん、熊谷晋一郎さん


今泉:確かにこれは重いなと思いますね(笑)。これで成り立つ恋愛って、お互いその重さを求めてる人たちなんだと思います。たとえば、1ヶ月記念日をお互いに大事にしたり、毎日頻繁にメールをすることを喜びと感じたりする人っているので、そういう人同士で一緒になればいいんでしょうけど、やっぱり相手がそれを求めてない人だったときには、つらいですよね。
 結婚式で「病めるときも健やかなるときも永遠の愛を誓います」っていう言葉があるじゃないですか。僕にはあれがどうにも嘘くさくて(笑)。付き合ってたり結婚したりしてても、ほかの誰かを好きになることっていうのはふつうにあることだと思うし。自分の結婚式のときにも、「今は好きですけど、十年先はちょっとわからないんです」っていう気持ちを手紙を書いて伝えたら、二次会の終わりに、妻の職場の人から「浮気しないでくださいね」とか「別れないでくださいね」って念を押されて(笑)。女性って期待値がすごいですよね。

角田:「ずっと一緒にいてね」とか「どこにも行かないでね」っていう女性が求めているのは約束じゃないんです。そのときに「うんそうだね。ずっとどこにも行かないよ」って言ってくれればよくて、十年後の保証じゃないんですよ。ただ、いまの監督の話を聞いてもわかるとおり、男性はこう言われたときに「十年後一緒にいろよって言われても、それはわからない」って馬鹿正直に言っちゃうんですね(笑)。流しとけばいいんです。「わかったよ」って言っとけば万事丸く収まる。

今泉:なるほど。聞いてたら、なんか俺の相談会みたいになっちゃった(笑)。

参加者からの質問その3

マモちゃんは、テルコの前では「湯葉いらない」と言っていて、好きなすみれの前では「湯葉うまいわ」と言ってました。好きではないのに好きなふりをしたり、相手のことを考えて自分のことを殺すことについて、みなさんはどのように考えていますか。



角田:私個人の考えですが、人に合わせて自分が本当に好きじゃないものを好きになったフリができるのは、8年が限度だと思います。それ以上は無理だと思う。

今泉:なんで8年?

角田:私もそうやって相手に合わせがちなので。昔、付き合ってる人が野球が好きで、一緒に8年も東京ドームに通い続けたことがあって。でも結局、セ・パはおろか、何一つルールがわからなかったんですよ。そうしたら、たまたま読んだ小説の中で、Aさんという人と恋愛しながらも、Aさんが妻帯者で一緒に暮らせないのでBさんという別の恋人を作るという話があって。それもちょうど8年で破綻がきていた。だから、湯葉が好きでもないのに好きというなら、8年限定で頑張ってみたらいいと思います(笑)。

熊谷:興味のない野球に8年っていうのはすごいですね。でも、8年という年数を聞いて、なんか納得する部分もあって。無理が利かなくなるタイミングというか、人生をリセットするようなタイミングで、走馬灯のように一度軽く振り返ってみたら、案外8年くらいがちょうどいきりがいいのかもしれない。

角田:それこそ私自身も、「自分をなくすことが恋愛だ」みたいな感じで、好きだと思い込んでいたんでしょうね。だから野球の開幕シーズンになるのが単純に楽しみだったし、ファンクラブイベントにも出てユニフォームをもらったり選手と投げ合ったりとかして、ふつうに楽しいと思ってたんですけど、彼と別れてもう野球を見なくてもいいんだ、ってなったときに、実は野球にはまったく興味がなかったって気付きました(笑)。

第3回へつづく



映画『愛がなんだ』
Blu-ray & DVD 好評発売中
発売・販売元:バンダイナムコアーツ




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