『クローズド・ノート』『検察側の罪人』の雫井脩介が執筆時、最も悩み苦しみ抜いたという、渾身のサスペンス小説『望み』(角川文庫)。
読者満足度は驚異の100%(ブクログ調べ)を記録し、累計発行部数は20万部超えのベストセラー小説が、満を持して映画化。10月9日(金)公開となる。
本作の舞台挨拶中継付き完成披露試写会が9月27日(日)に行われ、舞台挨拶には主演の堤真一、石田ゆり子、岡田健史、堤幸彦監督が登壇。無観客で実施された舞台挨拶だったが、その模様はTOHOシネマズ日比谷・梅田に中継され、会場に登場したキャスト・監督は中継先の様子を見ながら楽しそうに反応していた。
撮影を振り返って
メガホンを取った堤監督は、今作の撮影について尋ねられると、「今回ほど、キャストの皆さんに助けられて、まるで演劇を作っているような、そんな緊張感のある撮影を毎日できたのは、今まで経験したことのない現場でした。堤さんとは今回初めてご一緒したのですが、念願叶って嬉しかったです。一言一言、ものすごい熱量をかけていただいて、本当に助けられました。石田さんとは『悼む人』以来で、大変さを強いてしまいましたが、強い母を体現していただいて本当に感謝しています。岡田くんには誰も敵わない。振り向いて、目線で何かを残していくところがポイントで、彼の未来を決する作品になっていると思います。そのほかの皆さんも含め、素晴らしい作品になっていると思います」と答えた。
そんな監督に堤は「最初に台本を読んだ時に、いい話だけど難しすぎたので、最初はお断りしようと思ったのですが(笑)。言葉と体の状態のズレが大きくて、言葉通りじゃないけど、嘘でもない。強いことを言っているけど、体は疲労していく、と乖離していくものがあったので、本当に大変でした。なので、撮影以外は楽しく過ごそうと思ってベラベラ喋っていましたね」と撮影を振り返ると、石田も「撮影以外の堤さんは、薪ストーブの話をずっとされていて、それが今欲しいです(笑)」と話しつつ、「想像を絶する話なので、お話を全部理解した上で、飛び込むしかないと思っていました」と話した。
岡田は「事件の加害者か被害者か分からない、という僕の役どころ的に、今日何を言えるかなと思っていたのですが、役作りに関しては、社会性を無くすということを意識して、それを突き通しました。父親からは“反抗期”って思われるように、母親には“おかしくなってしまった”と思われるように、という点で今までの作品とは全く違うアプローチだったので、皆さんの印象に残る映画になっているといいなと思います。堤監督には最初の衣装合わせの段階で、反抗期を出して欲しいと言われ、準備していたことは間違っていなかったんだなと思いました。撮影中は声が小さいから上げてくれと言われたくらいで、監督が最後まで肯定してくれたことで、のびのび規士を演じることができました」と話した。
本当の夫婦、親子なら何を望む?
夫婦を演じた堤と石田は、もし本当の夫婦だったらお互いに何を望むか尋ねられると、堤は「石田さんに望むことは本当にないです! ちょっと、トンチンカンなところがあっておもしろいので、それを期待します(笑)」と会場を沸かせた。石田が「撮影中に堤さんに、本当に手順覚えない人なんだねって言われましたよ(笑)」と話すと、堤は「こんな人いるんだって思ったんだよ。天然記念物みたいでしたね」と仲睦まじい様子を見せる。「私そういうのを覚える能力がなくて、忘れてしまうんですよ。洗濯物をたたみながら喋るシーンがあるのですが、とても大変でした」と撮影を振り返る石田に、「あ、だからカメラマン手を(撮影で)切っていたんだ(笑)」と堤監督が返し、さらに会場を盛り上げた。
堤が夫だとしたら何を望むか尋ねられると、「堤さんは本当に楽しそうに薪ストーブの話をしていたので、もう薪ストーブの話はしないで欲しいです(笑)、これは冗談ですが。本当に素晴らしい、私が何をやっても受け止めてくれる方だったので、本当に頼りになります」と石田。
その息子を演じた岡田は、2人が本当の両親だったら何を望むか尋ねられると、「堤さんがお父ちゃんだったら、これから寒くなってきますし、薪ストーブで温めて欲しいです。石田さんがお母ちゃんだったら、クラシックギターを弾きながら、僕を眠らせて欲しいです」と話した。堤は「あっためるよ。ピザも作るから!」、石田も「こんな息子がいたら毎日やりますよ」と、本物の家族さながらの仲の良さを覗かせ、「皆さん想像してみてください。石田さんが奏でるクラシックギターと堤さんがくべる薪ストーブ、絶対よく眠れると思います!」と嬉しそうに岡田も反応した。
今、一つだけ“望み”が叶うとしたら?
今、一つだけ“望み”が叶うとしたらどんなことを望むかを尋ねられると、堤は「早く家に帰りたい(笑)。今帰れば上の子がまだ起きていて、会えるかもしれないので!(笑)」、石田は「早くコロナが収まって、海外に行ったり、海外の方に日本に来ていただいたりしたいですね」、岡田は「僕も石田さんと同じく、コロナの終息です。世界中の誰しもが家族とはどういうものなのかということを考えたし、このタイミングでこの作品を出す意味があるなと思うので、この作品が皆さんに届くといいなと思います」と話し、堤監督は「『望み』が全国津々浦々で大ヒットすることですね。今(中継先に)いらっしゃる皆さんお1人お1人が5人ずつに広めてくだされば嬉しいです!」と話した。
父と母、どちらの望みに共感するか?
劇中の父と母、どちらの望みに共感したかという質問には、「どちらにも共感できますよね。父親と母親の役割とか、立ち位置とかで変わるものだし、役を演じていてもどちらの気持ちも分かりました。母親の望みももちろん理解しますし、分かるけど、っていうことですね。息子にも娘にも共感できますね。娘の言っていることも分かる。それぞれの言っていることは正しい。でも、っていう話ですね」と堤。
石田は「息子が加害者か被害者かというのがテーマでもありますが、加害者でも被害者でもないという真実もあるのではないか、母親というのはとにかく子どもに生きていて欲しい、そこにこじつけるためには、どんな妄想もすると思います。それが母親というものなのではないかと思っていました。ただ、ただ、生きていて欲しいという気持ちでした」とそれぞれ話した。
最後に
最後に堤が「いろいろな視点で観ることのできる映画だと思います。それぞれの視点で観ていただければと思います」、石田が「この映画は石川家の家の中でのシーンがほぼ全部なのですが、時間がとても濃くて、1秒の中に凝縮されて気持ちが詰まっているので、あっという間に過ぎてしまうと思います。ぜひ集中して観てください」、岡田が「僕は若い人たちが観て、ご自身のご両親だったり、お子さんのことだったり、皆さんの家族のことを思い起こして、家に帰ったら、家族を愛でる時間を設けてくださることを望みます」、そして堤監督が「この映画のどこかに皆さんが所属していると思います。それくらい皆さんの心に刺さりたいという気持ちで作ってきましたので、観ていただけると嬉しいです」と語り、イベントは幕を閉じた。
映画情報
出演:堤真一 石田ゆり子 岡田健史 清原果耶 ほか
監督:堤幸彦
原作:雫井脩介『望み』(角川文庫刊)
脚本:奥寺佐渡子
音楽:山内達哉
主題歌:森山直太朗「落日」(UNIVERSAL MUSIC)
© 2020「望み」製作委員会
配給:KADOKAWA
公式サイト nozomi-movie.jp
公式Twitter @nozomimovie
原作情報
著者:雫井脩介
定価:748円(本体680円+税)
ISBN:9784041082096
https://promo.kadokawa.co.jp/nozomi/
期間限定で試し読み&読書メーター感想投稿キャンペーンを実施中!
試し読みはこちらから▼
https://kadobun.jp/trial/nozomi/doi6otxmsz4s.html
読書メーター感想投稿キャンペーンの詳細はこちら▼
https://promo.kadokawa.co.jp/nozomi/
あらすじ
一級建築士の石川一登とフリー校正者の妻・貴代美は、一登がデザインを手掛けた邸宅で、高一の息子・規士と中3の娘・雅と共に幸せに暮らしていた。規士は怪我でサッカー部を辞めて以来遊び仲間が増え、無断外泊が多くなっていた。高校受験を控えた雅は、一流校合格を目指し、毎日塾通いに励んでいた。冬休みのある晩、規士は家を出たきり帰らず、連絡すら途絶えてしまう。翌日、一登と貴代美が警察に通報すべきか心配していると、同級生が殺害されたというニュースが流れる。警察の調べによると、規士が事件へ関与している可能性が高いという。さらには、もう一人殺されているという噂が広がる。父、母、妹――それぞれの<望み>が交錯する。
『望み』関連記事
- 堤真一×石田ゆり子初共演! 息子の無実を信じたい父と、ただ生きていて欲しいと願う母。映画「望み」公開記念特別インタビュー
- 「読者が揺れ動いてくれればこの作品は成功」【『望み』映画化記念 原作者・雫井脩介インタビュー】
- 【解説:中江 有里】それぞれの望み 『望み』