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特集

堤真一×石田ゆり子初共演! 息子の無実を信じたい父と、ただ生きていて欲しいと願う母。映画「望み」公開記念特別インタビュー

撮影:黒羽 政士  取材・文:木俣 冬 

雫井脩介さんによるベストセラー小説を原作とした映画「望み」がいよいよ10月9日(金)に公開! 公開を記念して、本作で夫婦を演じた堤真一さん・石田ゆり子さんのインタビューをお届けします。

息子が殺人事件の加害者か被害者かわからない、究極の状況


――映画「望み」でおふたりが演じられた役をどう思われましたか。


堤:映画のような状況に立たされたとしたら、僕は一登ほど冷静に対処できるかわかりません。僕には息子はいませんが、もし自分の息子がこのような事件に巻き込まれて行方不明になったとしたら、がむしゃらに探しに行ってしまいそうです。


石田:真相を知りたいから?


堤:万が一、加害者であったら、法に任せる前に、父である僕が裁きたいという気持ちになるかもしれないですね。


石田:私の場合、母親の気持ちは想像でしかありませんが、とにかく生きていてほしいという想いはシンプルにわかりました。まず、息子は悪人ではないことが貴代美には前提で、たとえ加害者であっても彼なりの理由があるはずで、そこに寄り添いたいという気持ちはとても母親的だなと思いますね。


堤:僕はまず世間体を考えてしまうかも。それは一登と同じですが。


石田:私は、貴代美の世間体を一切考えない気持ちはわかるような気がします。


堤:父親と母親の気持ちの違いはあるかもしれないですね。僕は台本を読んだとき、規士と過去の自分を重ねてしまったんです。彼と似ていて、僕も部活の野球部を辞めたとき、抜け殻のようになってしまって、学校にも行かず家にずっといるようになってしまったんです。そうすると世間はいろいろと噂をたてるんですよ。僕は何もしていないのに不良になったみたいなことを勝手に言う。そのとき母親が「私はどう言われても息子を信じる」と言ってくれていたと人づてに知って、母親を哀しませることだけは絶対にしてはいけないとその時に思いました。

夫婦役で初共演


――おふたりは初共演。お互いの印象はいかがでしたか。


石田:堤さんの出演された舞台や映画を拝見して、ぜひ一度共演したいとずっと思っていたので、今回、やっとご一緒できることが楽しみでした。


堤:僕も同じ気持ちでした。


石田:そうしたらーー


堤:そうしたら?


石田:さすがだなと思ったのは、台本をすべて頭に入れて現場にいらっしゃるんですよ。もちろんそれは俳優として当たり前のことではありますが、私は現場の空気優先で、そのとき考えようみたいなところがあって。それを堤さんは全部受け止めてくれるんです。ご自分はセリフも段取りも完璧にもかかわらず、私が何か違うことをしたら、その場ですぐに切り替えてくださる。ものすごく頼もしい俳優さんだと感じました。


堤:石田さんは演じるたびに、少しずつ演技が違うんですよね(笑)。


石田:例えば、洗濯物を畳みながら話しているシーンですよね(笑)。何枚目を畳んだときにセリフを言うという段取りが決まっていたにもかかわらず、感情を優先して、枚数を気にしなかったことがありました。でもそれには理由があって。家のなかで何日も、帰らない息子を待っているので、どんどん辛くなっていくわけです。その貴代美の気持ちになったら、洗濯ものの枚数なんて覚えていられなくなってしまって……。


堤:わかります、その気持ち。映画やドラマはカットをたくさん撮っていい画をつなげていくから、どれをつなげても同じに見えるようにしておかないといけない。そこであらかじめ、洗濯物の何枚目でセリフを言いはじめるとか、時計の針が何分を指したらとか、左右どちらの手でものを持つかといった制約のなかで僕たち俳優は演技をする。それをチェックするスクリプターという仕事もあるくらいで。でも石田さんは自由でしたよね。


石田:段取りと違うじゃないかと怒ってました?(笑)


堤:そんなことないですよ。感情と段取りを一生懸命すり合わせようとしている姿がチャーミングで、話がシリアスな分、石田さんのそういう雰囲気が現場を和ませた気がします。細かい段取りを徹底しようとピリピリしていたら、ただただ重たい空気になっていくばかりですから。


© 2020「望み」製作委員会

追い詰められていく家族


――緊張感のあるシーンの連続だったのですね。


堤:だからこそ僕は撮影していないときは、できるだけ明るく振る舞おうと心がけていました。


石田:順撮りだったから、最初は家族で笑っているような場面もあったけれど、じょじょに心が苦しいシーンばかりになって……。


堤:ここまで追い詰められたとき、人の身体はどういうふうになるか探ることはすごく難しくなかったですか。息子のことが心配だからといって、ずっと眉間にシワを寄せていればいいのか……。


石田:そうですよね。貴代美はじょじょに家事にも着替えにも気を使わなくなっていきます。台本では着たきり雀の設定だったのですが、女はもっと強いだろうと私は思って、監督に相談しました。その結果、あるきっかけから、息子を信じて生きていこうと覚悟を決めるところで、白いシャツに着替えることになりました。


© 2020「望み」製作委員会


――堤幸彦監督が、あるシーンで堤さんが咄嗟にスマホを取り出して写真を撮りはじめる演技が良かったとおっしゃっていました。そういうことは撮影前に提案されるのですか。


堤:一登がある被害に遭遇するシーンで、原作だとデジカメを持ってきて撮るのだったかな。それはリハーサルしながら、一登のどこにぶつけていいかわからない怒りや、被害の証拠を残しておく冷静さなどを表現したくてやってみました。


石田:一登も貴代美も追い詰められて、最後のほうはすごい表情になっていますよね。私は試写を見て驚いてしまいました。こんな顔をしていたなんて……と。


堤:つい役に没頭してしまった場面がありましたね。

頼もしい子供役のふたり


――おふたりの子供役の清原果耶さんと岡田健史さんとの芝居はいかがでしたか。


堤:撮影に入る前に、1回、家族で会わせてほしいとお願いして、監督も一緒に食事会をしました。映像だと「はじめまして」の日に、いきなり親子役を演じなくてはいけないことが多々あります。言葉では「おとうさん」とか「おかあさん」と呼び合うけれど、どうしても表面的になってしまうので、とにかく、1回会いたいと思ったんです。


石田:そういう提案をしてくださってすごくありがたかったです。たしかに家族の雰囲気を自然に醸し出すことは難しいですよね。日常生活を共に過ごすうえでそんなに仲良しこよしでもいられないでしょうし。


堤:芝居の打ち合わせはひとつもしなかったけれど(笑)。


石田:確かに(笑)。


堤:事前に一度会いたいとスタッフの方にお願いしたら、「じゃあディズニーランドに行きますか?」と言われたんですよ。


石田:そんな案もあったんですか(笑)。


堤:初対面でディズニーランドに行ったら、逆にお互い遠慮してしまいそうですよね。「僕はこれに乗りたい」「いえ、私は……」なんて(笑)。


石田:撮影現場ではなごやかな家族のシーンが少なく、緊張を要する場面ばかりでしたが、岡田さんと清原さん、ふたりとも集中力があって頼もしかったですね。


堤:ほんとに若いのにしっかりしていますよ。


石田:清原果耶ちゃんは、まだ十代なの?と驚くほどで、むしろ私がしっかりしなければと引っ張られました。


© 2020「望み」製作委員会


堤:岡田健史くんは、役は拗ねている設定だけれど、本人は明るくて素直で、話もたくさんしました。彼がそういう感じだったから、一登が怒るシーンでも抑制できた気がします。やんちゃ過ぎる子だったら、もっと厳しい演技になっていたかもしれません(笑)。


石田:お芝居は相互関係であって、相手役の芝居によって変わりますよね。


堤:若いふたりが愛せる俳優さんだったからこそ、僕も一級建築士をやっているしっかりした父親になれた気がします。


© 2020「望み」製作委員会


石田:シリアスな話ではありますが、現場は不思議と和やかでしたよね。食べ物がいっぱいあってホッとできましたし。食事シーンも多かったので、フードコーディネーターの方が常時いらしたから、待ち時間にスタッフやキャストが何かをつまめるようになっているケータリングのコーナーに美味しそうなものがたくさん並んでいました。


堤:小さいおにぎりをいっぱい作ってくれるなどの気遣いがありがたかったですね。それと、石川邸のセットに本がたくさんあって、待ち時間に料理の本などを見ながら雑談もよくしましたね。石川邸が広くてそこで待機できるのも良かったですよね。

家族それぞれの「望み」


――家族とはどういうものだと思いますか。


堤:基本的には家族であっても考え方は違うと思っているべきだと思っています。石田さんや岡田くんや清原さんの醸し出す雰囲気によって僕の芝居が変化していったこともそうですけれど、人の感情や考え方はひとつの角度に決められなくて、刻々と変わっていくものなんですよね。


石田:おっしゃるとおり、やっぱりお互いを尊重し合うしかないと感じます。ただ、そう思えるようになるには時間も必要かもしれません。子供の頃、きょうだい喧嘩をして、ひとりっ子だったら良かったと思うことが誰しもあると思いますが、年を経るとほんとうにありがたい存在に感じるものです。


――ご出演にあたって原作はお読みになられましたか。


堤:撮影中、原作を持ち歩いて、時々、確認していました。台本は原作の核になる部分を抽出したものですから、演じるうえで、このシーンの前後は原作だとどんな表現になっているかなと参考にさせてもらっていました。


石田:私も現場に持ち込んで参考にしていました。ただ、この作品に限らず、原作と台本では情報量が違いますので、あまり原作を読み込み過ぎても……といつも悩むところです。


堤:そういうこともあって、僕は基本的には原作を全部は読まないようにしています。原作から脚本家や監督がピックアップしたい部分と僕がピックアップしたい部分が万が一食い違ったとき、個人的な好みに引っ張られないようにしたいからです。


――最後に。原作を、読んでから見るか、見てから読むか。どちらをおすすめしますか。


堤:お好きにどうぞ(笑)。


石田:私だったら、まずは原作を見ないでまっさらな状態で映画を見ますが、どちらもありでしょうね。

映画情報



出演:堤真一 石田ゆり子 岡田健史 清原果耶 ほか
監督:堤幸彦
原作:雫井脩介『望み』(角川文庫刊)
脚本:奥寺佐渡子
音楽:山内達哉
主題歌:森山直太朗「落日」(UNIVERSAL MUSIC)

© 2020「望み」製作委員会
配給:KADOKAWA
公式サイト nozomi-movie.jp
公式Twitter @nozomimovie

原作情報



著者:雫井 脩介
定価:748円(本体680円+税)
ISBN:9784041082096
https://promo.kadokawa.co.jp/nozomi/

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あらすじ

一級建築士の石川いしかわ一登かずととフリー校正者の妻・貴代美きよみは、一登がデザインを手掛けた邸宅で、高一の息子・規士ただしと中3の娘・みやびと共に幸せに暮らしていた。規士は怪我でサッカー部を辞めて以来遊び仲間が増え、無断外泊が多くなっていた。高校受験を控えた雅は、一流校合格を目指し、毎日塾通いに励んでいた。冬休みのある晩、規士は家を出たきり帰らず、連絡すら途絶えてしまう。翌日、一登と貴代美が警察に通報すべきか心配していると、同級生が殺害されたというニュースが流れる。警察の調べによると、規士が事件へ関与している可能性が高いという。さらには、もう一人殺されているという噂が広がる。父、母、妹――それぞれの<望み>が交錯する。


堤 真一

1964年、兵庫県出身。舞台を中心に俳優活動をはじめ、96年、SABU監督『弾丸ランナー』で映画初主演。以後、『フライ、ダディ、フライ』(05/成島出監督)、『ALWAYS三丁目の夕日』(05/山崎貴監督)、『クライマーズ・ハイ』(08/原田眞人監督)、『孤高のメス』(10/成島出監督)、『容疑者Xの献身』(08/西谷弘監督)などに出演。日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、優秀主演男優賞、毎日映画コンクール 日本映画大賞 俳優部門男優主演賞、報知映画賞最優秀主演男優賞等、数々の映画賞を受賞している。映画、テレビドラマ、舞台、助演から主演、シリアスからコメディまで演技の幅は広い。近年の主な出演作品に『一度死んでみた』(2020/浜崎慎治監督)、『決算!忠臣蔵』(19/中村義洋監督)、『泣くな赤鬼』(19/兼重淳監督)などがある。『砕け散るところを見せてあげる』(監督・脚本・編集:SABU)が来年公開予定。

石田 ゆり子

1969年、東京都出身。88年、NHKドラマ「海の群星」でデビュー。以降、映画、ドラマ、舞台、執筆活動など、多岐にわたり活躍。森田芳光監督『悲しい色やねん』で映画初出演。『北の零年』(05/行定勲監督)にて第29回日本アカデミー賞優秀助演女優賞受賞。近年の主な出演映画作品に『マチネの終わりに』(19/西谷弘監督)、『記憶にございません!』(19/三谷幸喜監督)、『コーヒーが冷めないうちに』(18/塚原あゆ子監督)、『僕だけがいない街』(16/平川雄一朗監督)など多数。堤幸彦監督とは『悼む人』(15)に続いて2作目となる。『コクリコ坂から』(11/宮崎吾朗監督)、『もののけ姫』(97/宮崎駿監督)、『平成狸合戦ぽんぽこ』(94/高畑勲監督)などスタジオジブリ作品では声優としても活躍。『サイレント・トーキョー』(波多野貴文監督)が今年12月4日公開予定。

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