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特集

発売たちまち重版決定! 話題沸騰中のミステリ&ホラー、横溝賞受賞作『虚魚』(そらざかな)著者・新名智さんインタビュー

第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈大賞〉受賞作『虚魚そらざかな』刊行記念 新名智インタビュー

第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈大賞〉受賞作『虚魚そらざかな』は、賞の名にふさわしい、ミステリとホラーが融合した作品。選考委員の絶賛を浴びて刊行された本作は、発売たちまち重版が決定するなど、各所で話題を呼んでいます。
本作がデビュー作となる新名智さんに、担当編集者がお話を伺いました。

『虚魚』試し読みはこちら
https://kadobun.jp/trial/sorazakana/c3h4ayr039c0.html



ひとつの怪談に考察を重ねる話が書きたかった


――横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈大賞〉のご受賞、おめでとうございます。受賞の感想を聞かせてください。

新名:よかった、というのが率直な感想です。書き終わって応募した時は自分ではあまり手ごたえがなかったんです。それが最終候補にまで残って、最終選考会の日も期待しないで待っていたら、大賞ですとご連絡をいただきました。喜ぶというよりはびっくりしていたので、その後2~3日してから嬉しいなと感じられるようになりました。


――選考会では非常に高い評価を受けて『虚魚』の受賞が決まりました。本作は「体験した人が死ぬ怪談を探す」物語ですが、着想はなんだったのでしょうか。

新名:小野不由美さんの『残穢』のような、ひとつ怪談があって、それを辿っていくと別の怪談が出てくるような作品を書きたかったんです。ホラー小説の主人公は幽霊のことを信じていることが多いと思いますが、『残穢』の主人公はあまり信じていません。幽霊が出たという話を聞いても怖がらずに下調べや考察をして真相に近づいていく。主人公が怪異から距離を置いた作品はあまり読んだことがなくて、面白いなと思ったんです。


――なるほど。他にも影響を受けた作品はありますか。

新名:Kindleにある「忌録: document X」という作品でしょうか。モキュメンタリー(編集部注:フィクションを、ドキュメンタリーのように見せかける表現手法)形式の怖い話が4編入っているんですが、結局これはどんな作品なんだろうという考察が何年も続いている。そういう、一個の怪談に対して考察を重ねていくような話も書きたかった。
 考察系のホラーって、だいたい最後まで答えは出ないんです。それは当然のことで、幽霊はいるかいないかというドキュメンタリー番組を見ても答えは出ませんよね。でも『虚魚』はフィクションなので、そこにきちんとオチをつけて終わりたいなと思って書きました。

怪談やキャラクターについて


――ホラーを書かれたのは今回が初めてですか?

新名:長いものを書いたのは初めてです。短いもので、『虚魚』を書く前にお試しで書いた怪談はあります。仏壇の前に海水が撒かれているところから始まって、過去の事件につながっていく話でした。こんな感じで短い怪談をいくつも書いていけば長編作品になるかな、と思って書き進めて完成したのが『虚魚』でした。


――怪談を追いかける三咲とカナちゃんは、それぞれ怪談を探す切実な理由を持っています。その切実さが、この作品を際立たせているように感じました。怪談というものについて、新名さんが感じられていることを聞かせてください。

新名:怪談は人の死生観や宗教観に関わる部分が多いので、軽々しく扱っちゃいけないんじゃないかという問題意識をずっと持っていました。
 例えば、「死んだ家族の幽霊が助けてくれて助かった」という、いい話っぽい怪談がよくあります。ただ、「先祖の霊が守ってくれる」という発想は普遍的なものではありませんし、それを「いい話ですね」で終わらせてしまってはだめなのではという感覚があったんです。他の例だと、自分の住んでいる場所を怪奇スポットのように紹介されて迷惑を受けている人なんかもいますよね。そういう怪談の負の側面も、怪談をテーマとして書くからには、けじめとして触れないといけないなと思っていました。


――三咲とカナちゃんの、お互いに信頼しているんだけど依存はしていないという距離感が、読んでいて心地よかったです。このふたりを書くときに気を付けたことはありますか。

新名:書き始めるときに、バディものにしようというのは決めていました。映画版の「残穢」の主人公もふたりの女性で、年上の冷静な女性とマイペースな女の子のコンビがとても良かった。そのイメージを膨らませつつ書いています。
 それと、それぞれのキャラクターはしっかり立てつつ、一般文芸として許されるくらいのリアリティを保とうというのは心がけました。しゃべり方や仕草など、20代の女性が読んで違和感のないように気をつけたつもりです。


――作中にはたくさんの怪談が出てきます。その一つ一つが怖さもあって素晴らしかったのですが、怪談を書く際に意識したことはありますか。

新名:よくある話に見えないように、目新しさを入れようと思っていました。地下に流れている川から聞こえる声、川の中に立つ何かなど、怪談ごとに印象的な風景がひとつはあるようにしています。



執筆歴や読書歴について


――もともと怪談はお好きだったのでしょうか。

新名:子どものころは「学校の怪談」「洒落にならないほど怖い話を集めてみない?」(通称:洒落怖)のシリーズが好きでした。今はYouTubeの怪談チャンネルや、Amazonプライムビデオでも怪談番組がいろいろ配信されているのでよく見ています。「怪談のシーハナ聞かせてよ。」という番組がお気に入りです。


――小説はいかがでしょうか。

新名:小学生の頃は「ズッコケ三人組」「かいけつゾロリ」などをよく読んでいました。本格的にミステリを読むようになったのは中学からですね。高校時代には、図書館に講談社文庫のミステリがたくさんあったので、それを端から読んでいました。大学(編集部注:早稲田大学)ではワセダミステリ・クラブ(以降「ワセミス」)という推理小説サークルに入って、読んだり書いたりしていました。


――ワセミスでミステリを読み漁っていたわけですね。好きな作家さんを何人か教えていただけますか。

新名:たくさんいます。ミステリだと綾辻行人さん、有栖川有栖さん、麻耶雄嵩さん、島田荘司さん、蘇部健一さん。ホラーだと小野不由美さん、貴志祐介さん、澤村伊智さん、三津田信三さんなどでしょうか。


――せっかくなので好きな作品もいくつか教えてください。たくさんあると思うので、先ほど名前を挙げられた方々の作品の中からぱっと思い浮かんだものをどうぞ。

新名:綾辻行人さんの『迷路館の殺人』『時計館の殺人』、有栖川有栖さんの「学生アリス」シリーズ、貴志祐介さんの『天使の囀り』、澤村伊智さんの『ずうのめ人形』が特に好きです。

横溝賞応募のきっかけとこれから


――小説はいつから書かれていたのでしょうか。

新名:お話を書くという意味だと、小学生の頃にクラスメイトと漫画を描いていたのが最初です。小説だと、高校生のときに流行っていたアニメの二次創作を書いて2ちゃんねるに投稿していました。大学に入ってからはワセミスの部内誌に、犯人当てやSFなどいろいろ書きましたね。新人賞に応募して、最終候補に残ったこともあります。社会人になってからは、友人と好きなコンテンツの二次創作を年に2作は書いて夏冬のコミケに出していました。


――ずっと書くことは続けられていたわけですね。今回、横溝賞に応募した理由などあるでしょうか。

新名:きっかけは、コロナで2020年夏のコミケが開催されなかったことでした。毎年書いていたものがなくなったので、この機会にオリジナルのものを書こうと思ったんです。自分が読みたい『残穢』みたいな作品を書こう、せっかく書くならどこかに応募しよう、と。『残穢』みたいなものを書くのであれば、応募先は日本ホラー小説大賞だろうと思って調べて、数年前から横溝正史ミステリ&ホラー大賞にリニューアルされていたことを知りました。応募〆切まで3ヵ月あったので、間に合いそうだと思って、応募を決めたんです。


――まさかコミケの中止がきっかけになっていたとは……。横溝賞に応募いただけてよかったです。横溝賞の応募締め切りは9月末なので、7月に思い立ってから一気に書かれたということですか?

新名:そうです。あまり時間もなかったので、プロットも作らずに書きました。書く前に決めていたのは、「釣り上げたら死ぬ魚がいるという怪談があること」「原因を探して川を遡っていくこと」「呪いを試したい人と呪いで死にたい人がいるということ」です。あとはアドリブです。


――それで『虚魚』が書き上がるんだからすごいですね。これは2作目の完成も早いのでは、という気がしてきましたよ。最後に、これからどんな作品を書いていきたいかをお聞かせください。

新名:ミステリ&ホラー大賞でデビューしたので、ミステリとホラーが融合した作品は書き続けたいと思います。いずれは本格ミステリやSFも書きたいです。
 2作目としては、大学院で平安文学を研究していたので、その知識を盛り込んだ作品を準備しています。平安文学にまつわる怪談で、ホラーでミステリな作品になる予定です。楽しみにお待ちいただけたら嬉しいです。

作品紹介



第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞<大賞>受賞作
虚魚
著者 新名 智
定価: 1,815円(本体1,650円+税)
発売日:2021年10月22日

わたしは探している。<人を殺せる>怪談を。 横溝賞<大賞>受賞作。
“体験した人が死ぬ怪談”を探す怪談師の三咲は、“呪いか祟りで死にたい”カナちゃんと暮らしている。幽霊や怪談、呪いや祟り、オカルトや超常現象。両親を事故で亡くした日から、三咲はそんなあやふやなものに頼って生きてきた。カナちゃんとふたりで本物の怪談を見つけ出し、その怪談で両親を事故死させた男を殺すことが、いまの三咲の目標だ。
ある日、「釣り上げた人が死んでしまう魚がいる」という噂を耳にした三咲は、その真偽を調べることにする。ある川の河口で似たような怪談がいくつも発生していることがわかり、ふたりはその発生源を求めて、怪異の川をたどっていく。“本物”の怪談に近づくうち、事情を抱えるふたりの関係にも変化がおとずれて――。
選考委員の絶賛を浴びた第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞<大賞>受賞作。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322106000335/
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プロフィール



新名智(にいな さとし)
1992年生まれ。長野県上伊那郡辰野町出身。2021年『虚魚』で第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞<大賞>を受賞し、デビュー。

『虚魚』大ボリューム試し読み



〈釣り上げたら死ぬ魚〉がいるらしい――。横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈大賞〉受賞作!『虚魚』試し読み#1
https://kadobun.jp/trial/sorazakana/c3h4ayr039c0.html

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