藤沢金剛町駅そばのスクランブル交差点で、寺原長男の背中を槿(アサガオ)が“押した”瞬間から始まる、殺し屋たちの生存競争を描いた『グラスホッパー』。その続篇、『マリアビートル』から7年。
連作短篇集というかたちで帰ってきたシリーズ最新作の殺し屋は、“仕事”を辞めようとしていた。
主人公・兜は、40代半ば。文具メーカーのベテラン営業社員だが、業界では一目置かれた凄腕の殺し屋でもある。妻子があり、“仕事”を辞めたいが、仲介業者から「辞めるにはお金が必要」と言われ、そのお金を稼ぐために殺し屋業に勤しむ不本意な状況が数年来続いている。
『マリアビートル』で登場した、蜜柑・檸檬の果物コンビ再来の表題作「AX」は、兜の恐妻家ぶりを堪能するお話である。
妻の機嫌を損ねないよう、日々気遣いを忘れず、失敗を重ね、息子である克巳の進路も気にかける。でも“仕事”が長引き、大事な三者面談に遅刻したりと、努力はイマイチ報われない。それでも兜はご近所の平和と克巳の身の安全のために、陰ながら活躍するのだ。
続く「BEE」。『グラスホッパー』でおいしい獲物をかっ攫い、『マリアビートル』でも登場していたスズメバチ(♂)が登場。その頃兜は、家族が刺されたら一大事と、自宅の庭木にできたスズメバチ(虫)の巣を駆除しようとがんばっていた。
「Crayon」では、兜に初めてパパ友にして恐妻家仲間ができる。一緒にボルダリングを楽しみ、呑みに行き、妻の愚痴を言いあう。しかし楽しい時間はあっという間に過ぎていき……。

書籍

『AX アックス』

伊坂 幸太郎

定価 1620円(本体1500円+税)

発売日:2017年07月28日

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