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特集

セックスの最中に「演技」を続けた女性の末路 長谷川瞳『ヒアリングセックス』

元AV女優として50本以上の作品に出演し、引退後は現役のソープランド嬢として今も働く長谷川瞳さんが新刊『ヒアリングセックス』を上梓しました。
長谷川さんはこの本を書いた最大の理由を「贖罪を果たすため」と言います。今回、カドブンでは『ヒアリングセックス』から本文を引用する形で記事化し、シリーズにて長谷川さんの思いをお届けいたします。

>>#1 私が贖罪としてセックス指南本を書いた理由

写真/渡辺愛理

気持ちいいセックスには安心感が必要

 気持ちいいセックスをするためには、「コミュニケーション」が必要。それは、そもそもなんのためかと言えば、男女がともに安心感を得るためです。安心感のないセックスでは、本当の快楽を得ることは絶対にできません。これは、わたしが自信を持って断言できることです。

 ここでわたしの経験談をお話しますね。まだAV女優として活動していたころですから、もう十数年も前のことです。ひょんなことから知り合った男性ふたりと3Pをすることになりました。AVでは定番のプレイですが、じつはわたしもプライベートでするのははじめての経験。

 ふたりの男性がわたしひとりを愛撫してくれるのですから、「さぞかし気持ち良かったのでは?」と思うでしょう。ところが、実際にはまったく気持ち良くありませんでした。それどころか、なぜなんの愛情もない相手に体を許してしまったのかと、ひどく後悔したくらいです。自己分析してみると、それは安心感が決定的に欠けていたことが原因なのだと思います。心から信頼し、安心して体を預けられる相手とではないと、本当に気持ちいいセックスはできないのだと感じさせられた出来事でした。

 では、どうすれば安心感を得られるのでしょうか。それは、とても単純なこと。自分のことを知ってもらう。ただ、それだけのことです。なにもセックスをする相手に限った話ではありません。あなたの周囲にいる、一緒にいてあなたが安心できる人、一切の緊張感なくふたりきりで会える人の顔を思い浮かべてみてください。その人は、あなたのことをよく知ってくれている人ではありませんか?

 気持ちいいセックスをするためには、安心感が必要不可欠。もちろん、安心感を得るためには相手に自分を知ってもらわなければならない。そして、相手に自分を知ってもらうためには、コミュニケーションが必要。これこそ、いいセックスにはコミュニケーションが重要だとわたしが考える理由です。

体の相性はコミュニケーションを通じて高めていく

 いいセックスをするためにコミュニケーションが重要だと考えると、あるものの存在が疑わしく思えてきます。それは、いわゆる相性です。相性という言葉は、セックスを語る際には必ずついて回るものですし、この本のようなハウツー本や女性誌のセックス特集では必ず登場するキーワードかもしれません。けれど、そんなものは本当に存在するのでしょうか? あなた自身の経験ではどうですか?

 出会った瞬間から馬が合った人、逆にどうしても受け付けなかった人がいた経験を持っている人もいるでしょう。ただ、それらはあくまでも「心の相性」ですよね。「体の相性」の場合はどうでしょうか? わたしは、体の相性とは、男女のコミュニケーションによって高めていくものであり、お互いを知り、徐々につくっていくものだと捉えています。ということは、体の相性とは、結局は心の相性だということになるのかもしれません。

 そして、心に決めた人と体の相性を高めていくためには、最初のセックスがとても肝心。そこでのポイントは、「自分を良く見せよう」と思わないことです。それは、セックスに至る前からはじまっています。はじめてのデートで格好良く思われたい、可愛く思われたいというのは当然の感情ですよね。でも、それって本当のあなたの姿でしょうか? 「特別なデートだから」と張り切ってしまうと、その次から無理が出てきてしまうものです。

 たとえば、男性が女性を最初のデートで高級レストランに行ったとして、毎回、そんなデートはできませんよね。あなた(男性)と相手(女性)の立場を入れ替えて考えてみてください。2回目のデートで連れて行かれたのが赤ちょうちんのお店だったとしたら……。「前より手を抜かれている」と思って、ちょっと気持ちが冷めてしまうかもしれない。だとしたら、最初のデートからなじみの赤ちょうちんに連れていくほうがいいし、それでダメな印象を持たれてしまうようだったら、結局は長続きしませんよね。

 もちろん、お金に余裕があって日頃から高級レストランで食事するようなグルメな人であれば、そういうお店をチョイスしなければなりません。つまり、本当に好きな人、近づきたいと思う相手にこそ、ありのままの自然な姿で接するべきなのです。もし、それで距離が縮まらない、振り向いてくれないとしても、悲しむ必要はありません。そういう人は、そもそも〝本当のあなた〟とは縁がなかった相手なのですから。

素直に正直に過去の性経験を伝え合う

 意中の人のパートナーになることができたのに、想像していたよりセックスが良くなかったと感じた経験がある人もいるかもしれません。行きずりの相手ではなく、「この人だ」と心に決めた相手とのセックスがあまり良くなかったらショックですよね。

 でも、「体の相性が良くなかったのかな?」なんて心配する必要はまったくありませんよ。なぜなら、体の相性はコミュニケーションで高めていくものなのですから。最初から最高のセックスである必要はないし、そうできるはずもありません。ふたりでコミュニケーションを積み重ねて、より良いセックスをできるようにしていけばいいのです。

 まずは、お互いに過去の経験や性的嗜好についての会話をしてみましょう。ここで大切なのは、変に照れたりしないこと。性感帯や好みのプレイ、過去のどんなセックスが良かったか、逆にどんなセックスや愛撫が苦手なのか、オーガズム経験の有無などの性経験を素直に伝え合いましょう。

 注意点を挙げるとすれば、お互いに「焼きもちを焼かない」と約束して話すことでしょうか。男女問わず、パートナーの過去の恋人というのは気になってしまう存在です。だからといって、ここで耳をふさいでしまうと本当にいいセックスにたどり着くことはできません。子どもっぽい嫉妬心を抑えて、いまこそ大人になるべきときです。

 あなたと知り合う前のセックスを含むすべての経験が、あなたが心を惹かれたたパートナーをかたちづくった。そう思えば、パートナーの過去を含めたすべてを愛おしく感じることができて、より深い関係を築くことができるはずです。

 なんて偉そうに語ってしまいましたが、わたし自身にも、愛する人ときちんとコミュニケーションを取れなかった苦い思い出があります。大好きだった男性との思い出です。すごく好きだったからこそ、つい意気込んじゃったんですよね。当時のわたしはまだAV女優でしたから、「セックスで満足させてあげなきゃ」という気持ちがとても強かった。それで、本当の自分を全部隠しまったんです。AVのなかのわたしを再現して、セックス中も演技してばかり。彼はそれなりによろこんでくれましたが、それは偽物のわたしとのセックス。

 本当のわたしを曝け出して彼と体を重ねていれば、わたしはもちろん、彼にとってももっと気持ちいいセックスができただろうなと、いまになって感じるのです。結局、彼とは別れてしまって、「ちゃんとセックスをできなかったな」という思いだけが残りました。

 それだけじゃありません。別の男性とのお付き合いでも大失敗をしています。ソープ嬢に転身した後のことでした。わたしが20代後半のとき、あるお客さまとのプレイ中に電マなどの道具を使わずにはじめてイクことができました。それだけでもわたしにとっては一大事で本当にうれしい出来事だったのですが、やっぱり、お客さまだけではなく、愛する人にもイカせてもらいたいじゃないですか。それで、当時の恋人に、お客さまがしてくれたものと同じプレイをしてもらおうとお願いしたら、「どういうこと?」となった。

 なぜなら、彼とのセックスではずっとイッたふりをしていたんです。電マなどの道具を使わずにイッたことがなかったのです。それを明かしたら、彼に激怒されちゃって……。当然ですよね。彼によろこんでほしい一心でのセックス中のイク演技でしたが、最初から素直に本当のことを告げていたら、と心から後悔しました。

 今後、みなさんがわたしのような思いをしないためにも、ぜひ、素直に、正直にセックスについてパートナーと語り合ってください。


>>#3 セックスで最もたいせつなこと


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