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特集

セックスで最もたいせつなこと 長谷川瞳『ヒアリングセックス』

元セクシー女優として50本以上の作品に出演し、引退後は現役のソープランド嬢として今も働く長谷川瞳さんが新刊『ヒアリングセックス』を上梓しました。
長谷川さんはこの本を書いた最大の理由を「贖罪を果たすため」と言います。今回、カドブンでは『ヒアリングセックス』から本文を引用する形で記事化し、シリーズにて長谷川さんの思いをお届けいたします。

>>#1 私が贖罪としてセックス指南本を書いた理由
>>#2 セックスの最中に「演技」を続けた女性の末路

写真/渡辺愛理

本当のあなたはS? それともM?

 
「SかMかでいえばどっち?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか? 飲み会などでは定番の話題かもしれませんよね。今日もどこかの合コン現場で、きっと同じ質問がされていることでしょう。

 そして、「俺、超ドSだから」なんてしたり顔で答える男性もたくさんいるはずです。でも、本当にそうなのでしょうか? 「男はSのほうが格好いい」「Mは恥ずかしい」という妙な思い込みからそう発言し、「S」という仮面を着けることで自分を守っているだけではないですか? なかには、若くて性経験が少ないために、自分がSなのかMなのかわかっていないまま、Sを語っている人もいるでしょう。

 多くの人が勘違いしていますが、言葉遣いや振る舞いがただ乱暴な人がSというわけではないのです。逆に、女性の場合は、Mのほうが男性ウケがいいと思っている人が多いですよね。

 セックスに関するコミュニケーションを取るうえで、正直であること、素直であることは本当に大切なこと。「俺ってもしかしたらMなのかな?」と感じるのならば、パートナーに素直にそう伝えたほうがセックスをもっと楽しめるようになりますよ。それも、「俺はMだ」と言うのではなく、「自分でははっきりわからないけど、Mかもしれない」と正直に伝えるべきです。

 自分のS気質を感じながらも、Mを語る女性もいますぐに考えをあらためましょう。だって、本当はSなのに、男性ウケを気にするばかりにMのふりをしてセックスをしなければならないなんて、そんな苦痛なことってないじゃないですか。SとMには、格好いいも格好悪いも可愛いも可愛くないもありません。もっと言えば、SとMのどちらかに二分する考え方もなくしてしまったほうがいいでしょうね。

 多かれ少なかれ、誰もがSとMのどちらの気質も持っているのですから、その日の気分によって責めたり責められたりして楽しめばいいのです。Mだという女性がたまにSっぽい表情を見せれば男性はゾクッとしますし、Sッ気の強い男性がいつもとちがってMっぽい振る舞いを見せてくれれば女性は可愛いと思うものですよ。愛するパートナーとのセックスには嘘は禁物。素直に、正直になれば、もっといいセックスができるようになり、もっと強い快楽を得られるようになります。
 

コミュニケーション不足が招く「シャワー問題」

 
 女性の立場から、コミュニケーション不足が招く悲劇のひとつをお教えしておきます。それは、「シャワー問題」です。男性の読者のみなさんに知っていただきたいのは、ほとんどすべての女性はセックスの前にシャワーを浴びたいということ。もちろん、なかには男性の汗の匂いが好きだとか、自分もシャワーを浴びないままでも平気という女性もいます。でも、そういう女性はあくまで少数派です。

 もし、シャワーを浴びずに行為に及んだとしたら、わたしだったら「臭いと思われたらどうしよう」「もしトイレットペーパーが残っていたら……」なんて、いろいろなことが頭のなかに渦巻いて、セックスどころじゃありません。これで気持ちいいセックスをしようというのが無理というもの。

 そして、女性の読者のみなさまに言いたいのは、シャワーを浴びたいのだったら、ちゃんとその希望を男性に伝えるべきだということです。男性のリードに任せてしまって、あなたがセックスに集中できないのだとしたら、それがふたりのセックスをより良いものにすることから遠ざけてしまっているのですからね。

 男性はとにかくシャワーに無頓着過ぎるかもしれません。というより、むしろあえてシャワーを浴びない方向に誘導していると感じることもあります。恋人やセックスフレンドといった、すでに男女の関係になっている相手にはそうではないのかもしれませんが、ようやく口説けそうな相手との初セックスや、ナンパや合コンなどで知り合った行きずりの相手とのセックスの際にはその傾向が強く感じられます。

 おそらく、シャワーというワンクッションを挟むことで「その気になってた女性の気持ちが変わるんじゃないか」「やっぱり帰る、なんて言い出すんじゃないか」「だったら、なし崩しにセックスに持ち込んでしまおう」なんて考えているのではないですか?

 でも、よく考えてみてください。彼女はすでにあなたの部屋やホテルについて来て、あなたとふたりきりになっているのです。よっぽど警戒心が薄い女性じゃなければ、それは「OK」のサインを出しているということ。もう心のパンツは脱いでいると言ってもいいでしょう。

 であれば、ほとんどの女性が希望するシャワータイムを挟んであげたほうが、その後のセックスが盛り上がることは確実です。キスや服の上からの軽い愛撫の後で、「シャワー浴びる?」と聞いてあげたほうが、スマートでちゃんとした人だとも思われますし、断然お得ですよ。シャワーを浴びている間、女性のドキドキ感も高まりますしね。
 

とにもかくにもセックスはコミュニケーション

 
 まだセックスをする関係に至っていない相手を口説く際に気をつけてほしいのが、嘘をつかないということ。「なにもしないから」なんて言いながら、女性をホテルに誘ったことがある男性も少なくないのではないですか? それは絶対にダメ。だって、嘘ですからね。むかしの男性情報誌に影響されて口にしているのかもしれませんが、「先っぽだけ」というせりふも絶対にNGですよ。以前、数人のAV女優さんたちと「先っぽだけ」議論をしたことがあるんです。みんな、「あの口説き文句だけはない」「あんなのあり得ない」と怒り狂っていました。

 おそらくは、そのものズバリの言葉で口説くのが恥ずかしいと思っていたり、断られたときのショックを和らげたいがために冗談めかして言ったりしているのでしょう。でも、そんな弱腰の男性の言葉に女性が惹かれるわけがないじゃないですか。むしろ、誠実さが感じられなくて、それまでは「ちょっといいな」と思っていたとしても、途端に冷めてしまう可能性のほうが圧倒的に高いでしょうね。
 
 冗談めかして言うにしても、「なにかしちゃうかもしれないけど、来る?」という感じだったらまだOKかな。嘘じゃないし、可愛さも感じられますからね。でも、やっぱり、「あなたとセックスしてみたい」というストレートな言葉が、どんな相手にも一番響くはずです。それは、女性から男性にアプローチする場合も一緒。ですから、ストレートに誘ってみてください。見ず知らずの相手ならいざ知らず、女性が勇気を振り絞って「セックスしてみたい」と言ってくれたのに、うれしくないという男性がいるはずがありませんよね。実際に事に及ぶかどうかは別として、それだけ異性としての性的魅力を感じてくれているということなのですから。

 これも結局はコミュニケーション力の問題です。相手の立場に立ってふたりの関係性を見ることができれば、意中の異性へのより効果的なアプローチ法が見えてくるはずですよ。

 意中の相手を口説くにも、男女がともに気持ちいいセックスをするにも、重要なのはとにもかくにも「コミュニケーション」です。ぜひ、肝に銘じておいてください。
 

特製〝セックス・ヒアリングシート〟でパートナーをより深く知る

 
 体の相性はセックスを重ねながら高めていくものです。互いの願望を〝くみ取り〟、性感帯や好みのプレイを〝感じ取る〟なかで、セックスの質は徐々に向上していきます。しかし、それだけではいずれ限界が訪れます。あなたにも経験があるのではないですか? 「もっとこういうこともしてみたいな」「このプレイ、本当はあんまり好きじゃないんだけど」なんて思いながらも、恥ずかしさが先立って、あるいは相手に気を遣うあまりに正直に相手に告げられないといったことが。逆に言えば、パートナーも同じようなことを思っている可能性は大です。

 どんなに深く愛し合っている関係であっても、やはり〝くみ取る〟〝感じ取る〟ということには限界があるのです。その限界を突破して、ふたりのセックスをさらなる高みに押し上げるには、やはり自分の願望を正直に告げ、相手の願望を聞き出すしかありません。

 でも、年間セックス回数が世界最低というデータもあるほどセックスに疎くなってしまった現代の日本人にとっては、たとえパートナーが相手といえども、そういう会話をすることに抵抗を感じるという人は多いことでしょう。相手のことを聞くだけならまだしも、セックスに関する自分の性的嗜好や願望を話すのは、やはりそんなに簡単なことではありません。

「クンニを30分くらいされると挿入でイキやすくなる」「乳首を舐めてもらいながらペニスをしごいてほしい」「じつは痛いくらい強く乳首をつままれるのが好き」「少しだけスパンキングされたい(してみたい)」くらいのことならともかく、「本当は相互オナニー鑑賞をすると異様に興奮する」「別のカップルとスワッピングをしてみたい」なんていう〝上級者〟の性的嗜好や願望を持っているかもしれません。

 ふたりそろってこの本を読んでくれているカップルなら、その重要性を共有してくれているでしょうから、正直にそれぞれの思いを語り合うこともできるかもしれません。ただ、ひとりでこの本を読んでいる人なら、パートナーに拒否されるのではないかと不安に思ってしまうこともあるでしょう。

 そこで、この本では「セックス・ヒアリングシート」というものを用意しました。いわば、病院で診察を受ける前に記入する問診票のようなものです。これなら、必要以上に恥ずかしがることなく、ゲーム感覚で互いの性的嗜好やセックスに関する願望を知ることができます。

 性経験やセックスの好み、パートナーとのセックスに関していままで相手に伝えられなかったことなどを正直に記入したら、交換して相手のセックス・ヒアリングシートをじっくり読んでみてください。きっと、いままでまったく気づかなかった大きな発見があるはずです。たとえば、互いに〝おもちゃ〟を使ったプレイをしてみたかったのにふたりとも言い出せなかったというようなことを知ったり、いままで後背位での激しいセックスが好みだろうと思っていた彼女が、本当は後背位を苦手と感じていることに気づかされたり。

 もしかしたら、ショックを受けるようなこともあるかもしれません。けれど、パートナーの本心を知ることこそ、本当にいいセックスをするための大きな第一歩。このセックス・ヒアリングシートを今後のセックスに存分に生かして、より良いセックスライフを築いていってください。

※ヒアリングシートはこちらのページでご覧いただけます。
https://www.kadokawa.co.jp/product/321801000012/


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