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特集

綾辻さんと担当編集者がふり返る、「Another」誕生秘話! オンラインイベント「『Another 2001』&シリーズ誕生秘話」レポート

文:朝宮運河

11月5日の夜にオンライン上で行なわれた、イベント「【新作発売記念】綾辻行人が担当編集者と語る 『Another 2001』&シリーズ誕生秘話」。
ネタバレ有りを前提として開催、当日は、著者みずから「鈍器」と呼ぶ分厚い作品を読了した読者が200名弱もの数、参集!
ネタバレ全開の大盛況イベントを、記事「ほぼ10分でわかる!「Another」シリーズ超入門」も執筆くださった怪奇幻想ライター・書評家の朝宮運河さんに、「ネタバレなし」でレポートいただきました!
年末のミステリランキングにも続々ランクインの本書、すでに読んだ人もこれからの人も、『Another 2001』の世界を味わってみてください。 (編集部)

綾辻さんの仕事部屋から配信


綾辻行人さん


 今年9月、7年ぶりの新作長編となる『Another 2001』を刊行した綾辻行人さん。その刊行を記念するオンライントークイベント「【新作発売記念】綾辻行人が担当編集者と語る 『Another 2001』&シリーズ誕生秘話」が、11月5日に開催されました。タイトルどおり、『Another 2001』の話題はもちろん、「Another」シリーズ全体についてもたっぷり語られた濃密なイベントの模様をレポートしたいと思います。

 21時過ぎ、イベント参加者がオンライン会議ツール「Zoom」の画面を開いて待機するなか、綾辻さんが登場しました。この夜のイベントは、綾辻さんの京都のご自宅からの配信。自室の部屋の奥から登場する演出で、WEBカメラを前に席に着いた綾辻さんは、「こんばんは、綾辻行人です」と参加者に挨拶、イベントがスタートしました。
 これまで多くのサイン会やトークイベントを経験してきた綾辻さんも、オンラインでこのような形式でのイベントは初めてだそう。「全国どこからでも参加できるのは、ラッキーなことだと見なしましょう。僕の書斎に遊びにきたつもりで、どうか楽しんでいってください」と述べたうえで、参加者の画面をひとりずつ確認したり、声をかけたりしていました。

 ここでトークのお相手を務める編集者、金子亜規子さんが東京のKADOKAWAのオフィスビルより参加。「Another」シリーズに最初期から携わってきた金子さんとの対話形式で、トークが進められました。
 まず話題になったのが「Another」シリーズの成り立ち。「角川書店(当時)でまた書いてくださいとお願いしたのは、『最後の記憶』が出た直後の2002年でしたよね。当初は『暗黒館の殺人』が終わったら、というお話だったんですが、綾辻さんがお忙しくて」と金子さん。執筆スケジュールはしばらく先まで埋まっており、企画が具体的に動き出すまでにはしばらく時間を要したそうです。


書影

角川文庫『最後の記憶』


 画面に表示される年表を見ながら、当時をふり返っていくお二人。長期連載を経て完成した大作『暗黒館の殺人』(2004年)、佐々木倫子さんのマンガに原作を提供した『月館の殺人』(2005~06年)、「館」シリーズ8作目にあたる『びっくり館の殺人』(2006年)の刊行を経て、ついに『Another』の連載がスタートしたのは2006年初夏のことでした。「この頃はよく働いていますね。『びっくり館』が出た年の夏から連載を始めてるんだ。まだエネルギーが満ちあふれている感じ」と綾辻さんがしみじみ呟き、金子さんの笑いを誘いました。

ヒロインの名前は「由伊」だった!?

 執筆の際はいつも創作ノートを作っている綾辻さん。久しぶりに開いたという『Another』の創作ノートを捲りながら、さらにシリーズの誕生前夜をふり返っていきます。2005年12月に書き始められた一冊目のノートでは、ヒロインの名前が「見崎鳴」ではなく「由伊」だったということが発覚。綾辻ホラーにしばしば登場するミステリアスな女性・由伊が、『Another』にも登場している可能性があったとは驚きです。


書影

角川文庫『Another』(上・下)※画像リンクは上巻


 私たちのよく知る「Another」シリーズの世界観がはっきりと現れたのが、2006年春のこと。「打ち合わせのために京都にうかがったら綾辻さんが、さっきシャワーを浴びていたら根幹のアイデアを思いついた、とおっしゃって。そこから一気に作品が形になっていきましたよね」と金子さん。試行錯誤を経ながら、作品世界が徐々に形作られてゆく過程は、読者にとってとても興味深いものでした。

 その後も年表に沿って、『Another』の刊行と大ヒット、2012年に相次いだメディアミックス、「館」シリーズ第9作の『奇面館の殺人』を挟んで執筆された『Another エピソードS』(2013年)の話題へと続きます。
 印象的だったのは、綾辻さんは『Another』がここまで読者に支持されるとは予想していなかったというお話。「学園ホラーの『Another』を出しても、ミステリファンにはあまり喜ばれないだろうな、と。まったく期待はしていなかったんですよ」。
 しかし蓋を開けてみると、『Another』は大ヒット。その年の「このミステリーがすごい!」3位にランクインし、綾辻さんの新たな代表作となりました。参加者からも「『Another』をきっかけに、『館』シリーズを読むようになりました」など、『Another』との出会いをふり返るコメントが続々。チャット機能を利用して、お二人のトーク内容にレスポンスすることができるのもオンラインイベントならではです。



ここでは書けないネタバレトークが全開に

 イベント後半はいよいよ、新作『Another 2001』の話題へ。前作『Another エピソードS』のラストで何気なく3年後の〈災厄〉につながるシーンを書いたことで、『Another 2001』が生まれることになったと話す綾辻さん。「この時点で『2001』を書きたいと思いついちゃったんだよね。比良塚想くんをもっとひどい目に遭わせようと(笑)」。当初は2、3年で完結するはずだった『Another 2001』が、約5年に及ぶ長期連載になったことについては、「連載で読んでくれていた人は、ごめんなさい。出来には満足していますが、いくらなんでも時間がかかり過ぎだよね」と苦笑していました。


書影

角川文庫『Another エピソードS』


 ここから話題はさらにディープな方へ向かいます。この日のイベントは『Another 2001』を読み終えていることが前提なので、核心に触れる発言がどんどん飛び出します。〝あの〟キャラクターが再登場した経緯や、『Another』とは異なるベクトルゆえの難しさ、2001年という時代設定とあるシーンの繋がり、などなど。ミステリ系のトークイベントで、ここまでネタバレ全開トークがくり広げられるのも珍しいかもしれません。

 時計の針が22時半をまわったあたりで、綾辻さんへの質問コーナーへ。「『Another 2001』を書いていて迷ったことは」「見崎鳴という名前の由来は」「推敲でどんな点に気をつけているか」など、参加者から事前に寄せられていた質問に対し、綾辻さんがひとつひとつ丁寧に答えていきます。
「もし三年三組のメンバーだったら〈死者〉に立候補できますか」との質問については、「できると思います。辛いだろうけど、学校だけならば何とかなるかな。でも三年三組に入ったら、逃げ出すのが一番ですよ」と、「Another」世界の怖さを知り尽くした作者ならではのアドバイスをしていました。


書影

『Another 2001』


気になる次回作と、「Another」シリーズのこれから



 これにてイベントは無事終了、と思いきや「綾辻さんに詰め寄ろう!」の文字が画面に表示され、新たなコーナーが始まりました。普段なかなか聞けないことを、この機会にズバリ聞いてしまおうという企画のようです。
 詰め寄りその1は、「次回作は『館』シリーズになる?」というものでした。次回作がどんなものになるのかは、ファンにとって気になるポイント。金子さんの質問に内心グッジョブ!と思った参加者は少なくないはずです。ちなみに綾辻さんの答えは、「はい」。来年から本格的に新しい「館」が動き出すことになりそうです。
 続いての詰め寄りは、「『殺人鬼』シリーズの新作は?」というもの。このところエイプリルフールのジョークによく使われる「殺人鬼」シリーズ新作ですが、執筆する気もアイデアもあるそうなので期待しましょう。

 そしてこの日最後の質問は、「Another」シリーズのさらなる続編について。こちらももちろん書かれる計画があるそうで、すでに『Another 2001』にも新作への布石を打っているとか。少なくとも「館」シリーズ第10作の刊行後になりそうなので、首を長くして待ちたいと思います。「これまた書くのが大変でね」と口にする綾辻さんですが、きっと私たちの予想を上回る作品を書いてくれるに違いありません。この日のシリーズ創作裏話を聞いた人たちは、みんなそう確信したはずです。



 新型コロナウイルス感染拡大を受け、オンライン開催となった今回のトークイベントですが、結果としては綾辻さんと参加者の距離が近い、アットホームなイベントになったように思います。綾辻さんもこの点に触れて「全国から、遅い時間に参加してもらえた。こういう状況でなければ、この場はありませんでしたね」と感想を述べました。そして「いろいろ不安もあると思います。でもきっと抜けますから。楽しめることは楽しんでいきましょう。どんな状況になっても、三年三組よりはましです」と、「Another」シリーズになぞらえて参加者にメッセージを贈りました。

 こうして、予定時間より大幅増量しての約2時間15分のイベントはすべて終了。心落ち着かない世の中をしばし忘れ、フィクションの世界にどっぷり浸るのは、とても楽しく有意義な経験でした。ぜひ今後も同様のイベントの開催を期待したいと思います。


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▲「Another」シリーズ特設サイト


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