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特集

ほぼ10分でわかる!「Another」シリーズ超入門/朝宮運河

世界で愛読されるホラー&ミステリの金字塔

「Another」シリーズ待望の新作『Another 2001』が、9月30日ついに刊行されます。「Another」シリーズは、日本の本格ミステリシーンをリードしてきた人気作家・綾辻行人さんが手がけるホラー&ミステリ小説です。

 2009年に刊行されたシリーズ第1作『Another』は、綾辻さんの新たな代表作として高く評価され、テレビアニメ化(2012年)などのメディアミックスも手伝ってベストセラーとなりました。現在ではシリーズ第2作『Another エピソードS』(2013年)とともに各国語に翻訳され、世界のファンに愛読されています。

 このほど発売される『Another 2001』は、“3年後の夜見山よみやま北中学校”を描いた「Another」シリーズの正統的な続編。綾辻さんの長編が発売されるのは『Another エピソードS』以来約7年ぶりということもあって、発売前から大きな話題を呼んでいるのです。

 このタイミングで「Another」シリーズを読んでみたい、と思っている方も少なくないはずなので、ごく簡単に「Another」の基本をおさらいしておきましょう。このコラムと本サイトの〈作品世界解説〉に目を通しておけば、最新作の予習はばっちり、だと思います。

 ただし! シリーズの基本設定やあらすじ(特に第1作の『Another』の)に触れざるを得ないので、その点はご了承を。このコラムの主旨と矛盾するようですが、予備知識なしにまっさらな状態で手にするのが、「Another」シリーズとの理想的な出会い方ではないか、と私自身は思っています。

すべてはここから始まった。戦慄の学園ホラー『Another』


角川文庫『Another』(上)


 冒頭で述べたとおり、「Another」シリーズは2009年刊行の長編『Another』によって幕を開けました。物語の舞台は、夜見山というある地方都市。1998年春、東京から同地の中学校へ転校してきた主人公・榊原さかきばら恒一こういちは、クラスの様子がおかしいことに気がつきます。

 何かに怯え、何かを隠しているようなクラスメイトの言動。周囲の人間と関わろうとしない、幽霊のような女子生徒・見崎みさきめいの存在。「いないものの相手をするのはよせ」という友人の警告――。物語の序盤から得体の知れない雰囲気が、じわじわと作品世界を覆ってゆきます。

 実は、恒一が転入した夜見山北中学校の三年三組は呪われたクラスなのでした。26年前に起こった悲劇をきっかけに、このクラスは「死」の世界に大きく接近してしまい、生徒やその家族が相次いで死亡する、という異常事態が続いていたのです。

〈災厄〉と呼ばれる死の連鎖は、2年に1度かそれ以上の間隔で発生すると言われており、毎年三年三組に進級した生徒たちには、呪いへの対策方法がひそかに申し送りされています。転校生である恒一が抱いた違和感は、この三年三組の特殊な事情と関わりがあったわけです。

 1998年は呪いが〈ある年〉なのか、〈ない年〉なのか。その答えが判明すると同時に、悲劇が恒一たち三年三組の関係者に降りかかります。


角川文庫『Another』(下)



『Another』(巻)詳細はこちら
https://www.kadokawa.co.jp/product/201106000725/
『Another』(巻)詳細はこちら
https://www.kadokawa.co.jp/product/201106000724/

極上の恐怖と謎、そして青春小説としての魅力

『Another』は刊行直後から、ホラー&ミステリ好きの間で評判を呼びました。いったいどこが読者を惹きつけたのでしょうか。私見ですが『Another』の魅力としては、大きく3つのポイントがあげられると思います。

 第1は、物語を支えている独創的なアイデアです。〈ある年〉にあたった三年三組の関係者は「死」に引き込まれやすくなり、ある者は病気で、またある者は事故や事件で命を落としてゆきます。その無慈悲さと容赦のなさは、まさに〈災厄〉という言葉がふさわしいもの。

 モンスターでも幽霊でも殺人鬼でもなく、超自然的なシステムがもたらす死の連鎖を描いたという点で、『Another』は画期的なホラーでした。「死」そのものとほぼ同義といってもいいような怪異を相手になすすべはあるのか? 大胆な、それでいて確固たるリアリティのあるこの設定が、物語にとてつもない怖さとサスペンス性をもたらしています。

 第2はミステリとしての完成度の高さです。言うまでもなく、綾辻さんといえば「館」シリーズなどで知られる本格ミステリの名手。『Another』でも、読者を欺き、あっと言わせるテクニックが遺憾なく発揮されています。ネタバレを避けるためこれ以上の深入りは避けますが、すみずみまで伏線が張りめぐらされた構造と、クライマックスに待ち受ける衝撃的な展開は、本格ミステリそのもの。ホラーとミステリが高いレベルで融合しているところに、『Another』のすごさがあります。

 そして第3は青春小説としての魅力。呪われたクラスに在籍しているとはいえ、三年三組の生徒たちはどこにでもいる14、15歳の少年少女です。運命に翻弄されながら、中学生活最後の年を送る彼ら彼女らの姿を、綾辻さんは繊細かつ鮮やかなタッチで描いています。死とは何か。大切な人との別れにどう向き合うべきか。そうした普遍的なテーマを含んだ哀切な青春小説としても、『Another』はとても印象深い作品なのです。

二度読み必至のスピンオフ、『Another エピソードS』


角川文庫『Another エピソードS』

『Another』は、アニメ化などメディアミックスの影響もあり、それまで綾辻作品に触れたことがなかった若い読者の間でもブームとなりました。そんな好評に応える形で発表されたのが、シリーズ第2弾『Another エピソードS』。1998年の夏休み、〈災厄〉の裏側で起こっていたある事件を描いたスピンオフ的長編です。

 主人公は三年三組の生徒のひとり、見崎鳴。左目を眼帯で覆った彼女は、『Another』の世界のアイコンともいえる人気キャラクターです。

 家族とともに湖畔の別荘にやってきた鳴は、3か月前に謎の死を遂げた賢木さかき晃也てるやという男性の幽霊と出会います。自分の死体を探すという晃也と鳴の、謎めいた冒険の行き着く先は?

 綾辻さんには珍しいゴースト・ストーリーである『Another エピソードS』は、恐怖と謎をじっくり味わうタイプの作品。古めかしいお屋敷を舞台に展開する物語は、どこかノスタルジックで静謐な雰囲気をたたえています。

 とはいえ、物語に秘められた仕掛けは、相当に大胆なもの。綾辻マジックが炸裂するラストには、誰しも言葉を失うことでしょう。『Another』に比べるとショッキングシーンは控えめなので、ホラーが苦手な方は、ここからシリーズに入るのもアリ、かもしれません。

※『Another エピソードS』詳細はこちら
https://www.kadokawa.co.jp/product/321512000081/

新しいアプローチが光る、もうひとつの『Another』


『Another 2001』(KADOKAWA)

 9月30日に刊行される『Another 2001』は、前2作の3年後である2001年が舞台。この年新たに三年三組に進級した生徒たちは、〈災厄〉を避けるため、ある〈対策〉を講じます。果たして悲劇を未然に防ぐことはできるのでしょうか?

 あの恐怖が再び味わえる、というだけでファンにはたまらない作品ですが、同じ設定をベースにしながらも、『Another』と『Another 2001』では物語のアプローチが若干異なっています。

 たとえば〈死者〉(〈災厄〉が起こる年に三年三組に入りこんでいる超自然的存在)の正体が、第1作ではぎりぎりまで読者の目から隠されていました。しかし『Another 2001』では、物語の早い段階でその素性が判明します。それは読者もよく知るあの人物で……と、ここから先は読んでのお楽しみですが、前2作の内容を知っている人ほど、新作のアプローチには驚かされるはずです。

『Another』のさまざまな達成を踏まえつつ、新しい恐怖と謎を創出する。そんな難事に挑んでいるのが、『Another 2001』という作品なのです。そしてその試みは、見事に成功しています。

 主人公は、前作『Another エピソードS』に登場した少年・比良塚ひらつかそう。家庭の事情から夜見山に越してきた彼は、呪われた三年三組に進級し、〈対策〉に関わることになります。見崎鳴や図書館司書の千曳ちびきさんなど、『Another』本編のキャラクターが出演するのも、嬉しいポイント。高校3年生になった鳴は、お姉さん的なポジションで想にさまざまな助言を与えます。

 なお、単行本の装画を担当するのは、『Another』『Another エピソードS』同様、イラストレーターの遠田志帆さん。800ページ超のボリューミーな本を、美しく彩っています。内容はもちろんですが、所有欲をそそるオブジェのような造本も、注目したいポイントです。

※『Another 2001』詳細はこちら
https://www.kadokawa.co.jp/product/321911000247/

読み始めるなら、今!

 さて、「Another」シリーズの全体像が伝わったでしょうか。

 極上のホラー小説は、恐怖によって私たちの心を揺り動かし、生涯忘れがたい経験を与えてくれます。「Another」はそうした感動をもたらす稀有なシリーズ。新作『Another 2001』の刊行によって、この傑作にあらためて光が当たることは間違いないでしょう。

 つまり、読み始めるなら今が絶好のタイミング。これまで気になっていた方は迷わず手を伸ばし、夜見山の町を訪れてみてください。底知れぬ恐怖と謎が、あなたを待ち受けています。

◎「Another」シリーズ特設サイトはこちら
https://kadobun.jp/special/another/


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