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特集

今年はどんな年にする? そうだ、エッセイに学ぼう

自分自身にも新しい風を吹かせるためには、やっぱり新年の抱負をもつことが大事。そうはいってもどうしていいかわからない、という人のためにあるのが「本」。経験豊富な著者たちの言葉から、今年一年をよりよくするためのヒントを探してみよう!
※本企画はダ・ヴィンチ2019年2月号の転載記事です

文・構成:立花もも

1:今年こそ、自分を変えたい!というあなたに

日常の悲しみを、笑って乗り越えていく
イ・ラン:著 呉 永雅:訳『悲しくてかっこいい人』(リトルモア)



〈今年はひとつのことだけを考えている。「楽しく生きよう」〉。悲しみはそこかしこに溢れている。初めて付き合った人との別れ。浮気ばかりしていたお父さん。いつだって逃げられなかったという想い。死について語ること……。そのすべてを自問自答で乗り越えていく、気鋭アーティストの笑顔の裏側。

人にも自分にも優しくなることが幸せの秘訣
しいたけ.『しいたけ.の部屋 ドアの外から幸せな予感を呼び込もう』(KADOKAWA)



ご縁の半分は勘違い。チャンスは逃したほうがよい。結婚は、茶色のオーラをまとってる……占い師・しいたけ.の脱力した文体と感性で綴られる初エッセイ。仕事がうまくいかない、なかなかいい恋愛に恵まれない、人と会った帰り道なぜか気持ちが沈んでしまう。ちょっとした心の穴を埋めてくれる一冊。

「でも」「だって」はやめて、とにかく行動あるのみ!
横澤夏子『追い込み婚のすべて』(光文社)



地元の同窓会で味わった悔しさを糧に、婚活を始めた芸人・横澤夏子。理想を最低限に減らし、1年に1回は告白し、料理教室にも通って出会った恋人だが、結婚へたどりつくまでの道のりはさらに険しかった……。あらゆる手段を駆使して外側からも囲い込み、27歳で成婚するまでの実録超アクティブエッセイ。

2:今年こそ、丁寧に暮らしたい!

すべては、心を尽くした過程があってこそ
樋口直哉『おいしいものには理由がある』(KADOKAWA)



いまや世界遺産の和食。ふだん当たり前に手にしている食材すべてにつくる人の物語がある。工場長が歌いながら仕込む群馬の醤油、津波がきっかけで生まれた西伊豆の鰹節、江戸前文化を継承する東京の佃煮。料理人であり小説家でもある著者が日本全国を渡り歩いた取材記。

誰かとごはんを食べた優しい記憶が心を癒やす
宮下奈都『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』(扶桑社)



大雪の日、どこにも行けない子どもたちと焼いたパンケーキ。豚肉が苦手な妻のため、夫が作った最高の豚汁。初仕事の編集者との距離を縮めた喫茶店のメニュー。四半世紀ぶりに再会したスープ。誰の思い出にも必ず食べものは潜んでいて、情景を色濃く残してくれる。些細な日々の幸せを集めた食エッセイ。

3:今年は笑って福を呼び込みたい!

面白がる視点が、世の中を楽しくしてくれる
三浦しをん『お友だちからお願いします』(だいわ文庫)



ウォシュレットってどこからやってきた水なのか? 加齢とともに湧き上がるオヤジギャグ。有能さや人柄を滅却する「破壊の呪文」……。些細な日常もこんなにユーモラスになるのだと驚く、著者の思考と視点の数々。

ぐるぐる思考は、人生最大の娯楽である
森見登美彦『太陽と乙女』(新潮社)



『古事記』由来のペンネーム。四畳半開拓時代の思い出。ひとりぽっちの鉄道旅や、東京散歩。作家仲間と興じるヘンテコな遊び。アニメ化の裏側……。デビューから14 年、各所に寄せた小説以外の文章をほとんど集め、台湾の雑誌に寄せた初公開のコラムや書き下ろしも加えた、まさに森見登美彦決定版の一冊。

どうせ生きるなら、笑ったほうが人生は楽しい
さくらももこ『もものかんづめ』(集英社文庫)



著者のまわりには愉快な人が多いのか、はたまた著者のシニカルでユーモラスな視点がそう見せるのか。読めば笑わずにはいられない、エッセイの金字塔。『ちびまる子ちゃん』のモデルとなった家族との思い出や、タイで命の危機を覚えた恐怖体験、結婚式の裏話などから見えてくる“まる子”の素顔。

4:“生きる”ってなにか、考えたい

川上未映子『きみは赤ちゃん』(文春文庫)



〈そこからのわたしの食欲は、これまでに体験したことのないほど凄まじいものだった。〉など、小説のような語り口で読ませる出産・育児エッセイ。妊娠に伴う身体の変化、いくたびも訪れる夫婦の危機、ぬぐいきれない孤独感。試練を乗り越えてきた著者の、赤裸々な感情と冷静な考察に、共鳴せずにはいられない。

誰もが“その日”を乗り越え、生きていく
益田ミリ『永遠のおでかけ』(毎日新聞出版)



〈大切な人がこの世界から失われてしまったとしても、「いた」ことをわたしは知っている。知っているんだからいいのだ〉。大好きだった叔父が亡くなって1 年後、父が余命半年であると知らされる。短気ですぐカッとなる、でもまじめで愛情深いお父さん。見送り、そして残されたあとも紡がれていく日常を書き綴る。

愛するものとの日々が、生きる強さをくれる
村山由佳『猫がいなけりゃ息もできない』(ホーム社:発行 集英社:発売)



父が亡くなり、4匹から5匹に増えた著者宅の愛猫たち。なかでも特別なのはもみじ。著者以外の誰にもなつかない三毛猫の彼女だけを連れて家を飛び出して以来、人生のすべてを共有してきた。だがもみじが癌であると、エッセイ連載中に発覚し……。盟友と過ごした最後の1年をリアルタイムで綴る。

5:今年こそ、知的好奇心を満たしたい!

知りたい、という好奇心は最上級の愛情
細川博昭『鳥が好きすぎて、すみません 驚異の能力、人生の楽しみ方、鳥たちとの暮らしから教わったたくさんのこと 』(誠文堂新光社)



鳥はバカと思われがちだが、好奇心旺盛で、感情もあり、道具を使う賢さもある。鳥たちのために、鳥に対する世の理解を深め、鳥がもっと生きやすくなるために人生を費やす、と亡き愛鳥に誓った著者。日本における鳥の歴史や、自身が鳥とともに過ごしてきた経験から、その驚くべき生態と鳥への愛を語りつくす。

学びの一歩は、そこに描かれた風景を感じること
最果タヒ『百人一首という感情』(リトルモア)



言葉が生まれなければただの苦しみで済んだのに、それを「恋」と表してしまったせいで考えることをやめられない――初恋を詠んだ31字からたどりつく考察。ほか、1000年以上前に詠まれた感情の集大成たる百人一首すべてを、現代を代表する若き詩人・最果タヒならではの瑞々しさと痛さをもって読み解いていく。


今回紹介した本は、いずれも著者たちのさまざまな想いが込められている。
今年1年をより良く過ごすためのきっかけとして、ぜひ手に取ってみてほしい。


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