着物にまつわる人情話に、胸がじんわり温まる。
こころ華やぐ時代小説『とわの文様』の推しポイントを徹底解説。
新田次郎文学賞など三冠を達成した『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』、直木賞候補作となった『女人入眼』、さらにはミステリ仕立ての時代小説『木挽町のあだ討ち』で、いま読書界から最も注目されている歴史小説家の永井紗耶子さん。「時代小説を知りつくした」と絶賛される永井さんが、待望の書き下ろし時代長篇『とわの文様』を刊行しました。
読み始めるとページを繰る手が止まらなくなる!? 本作の見所を、担当編集Wが語り尽くします。
1、しっかり者の妹と、遊び人の兄とのギャップがたまらない!
主人公は呉服屋・常葉屋の看板娘とわ。常葉屋は「ここにしかない品がある」と、着物に五月蠅い江戸っ子たちにも評判のお店です。とわは失踪してしまった母の代わりに、お店を繁盛させようと日夜奮闘しています。ところが、兄の利一は芝居にうつつを抜かしてばかり。信頼し合った兄妹のテンポの良いかけあいに、思わず顔がほころんでしまいます。
2、着物にまつわる蘊蓄がたっぷり
本作の鍵となるのは、着物の「文様」。着物に造詣の深い永井さんならではの着眼点で、きらびやかな江戸の世界観がリアルに描き出されます。安産祈願の思いが込められた「麻の葉の文様」、幸せをつかみ取るという意味のある「蜘蛛の文様」……。さまざまな美しい文様を通して、心震わす物語を楽しむことができます。
3、ほろりとしたい人は必読。江戸ならではの人情話が泣ける
面倒事を背負い込む名人・利一の気まぐれによって、やくざ者に追われる妊婦をはじめ、常葉屋にはたくさんのトラブルが持ち込まれます。とわの一家は、人情を重んじる女将・律の日頃の教えにならい、一致団結して人助けをしようとします。おきゃんなところがありつつも、とわはまだ十六歳。自分の言葉を紡いで、他人の痛みに寄り添おうとする姿に、思わずほろりと涙が零れます。
永井紗耶子の新境地!
華やかな人情劇『とわの文様』をご堪能ください
おすすめしたいポイントはまだまだありますが、ここではどうしてもお伝えしたいポイントを3つだけご紹介させていただきました。
この春は『とわの文様』を読んで、賑やかな江戸の世界に旅立ってみるのはいかがでしょう。
『とわの文様』について
とわの文様
著者 永井 紗耶子
定価: 704円 (本体640円+税)
発売日:2023年03月22日
呉服屋の箱入り娘が、着物の力でよろず解決 兄妹が織りなすお江戸人情劇
江戸は西河岸町の呉服屋・常葉屋は、「ここにしかない品がある」と着物に五月蠅い江戸っ子たちにも評判お店。
箱入り娘のとわは、失踪した母の代わりに店を盛り立てようと日々奮闘している。
芝居を愛する兄で若旦那の利一は、面倒事を背負い込む名人。
犬猫を拾う気軽さで、ヤクザ者に追われる女性を連れて帰ってくるが、それにより大騒動が巻き起こり……。
詳細ページ:https://www.kadokawa.co.jp/product/322107000435/
amazonページはこちら
著者プロフィール
永井紗耶子
1977年神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒。新聞記者、フリーランスライターを経て、2010年「絡繰り心中」で小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。20年刊行の『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』で、細谷正充賞、本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞を受賞。22年『女人入眼』が直木賞候補となる。他の著書に『大奥づとめ よろずおつとめ申し候』『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』『横濱王』『木挽町のあだ討ち』などがある。
こちらの記事もおすすめ!
“市井もの”に収まりきらないストーリー。――永井紗耶子『とわの文様』レビュー【評者:細谷正充】
https://kadobun.jp/reviews/review/entry-47914.html
リアルに疲れた時に読みたくなる「市井もの」の魅力 梶よう子×永井紗耶子 対談
https://kadobun.jp/feature/interview/entry-47942.html
担当編集者が語る、『28歳フリーターが総理大臣と総選挙で戦ってみた』を読むべき3つの理由
https://kadobun.jp/feature/readings/entry-57823.html