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特集

「これは誰の人生なのか」リアルな〈入れ替わり後の日常〉に、きっとあなたも胸を打たれる。――『君の顔では泣けない』を読むべき3つの理由

担当編集者も涙。大型新人のデビュー作『君の顔では泣けない』のおすすめポイントをご紹介

第12回〈小説 野性時代 新人賞〉を受賞した、『君の顔では泣けない』。
「入れ替わり」という古典的ともいえる設定でありながら、徹底して「リアル」を追究した新しい物語。デビュー作にして続々重版中の話題作です。
本当は事前情報なしに読んでいただきたい作品なので、気になったらまず試し読みをおすすめします!
とはいえせっかく魅力をお伝えする場をいただいたので、いますぐこの作品を手に取るべき理由を3つ、担当編集者がご紹介します。

▼『君の顔では泣けない』試し読み
https://kadobun.jp/trial/kiminokaodewanakenai/20b7e3p7ok9w.html
▼『君の顔では泣けない』著者、君嶋彼方さんインタビュー
https://kadobun.jp/feature/interview/75numn33a38c.html
▼『君の顔では泣けない』刊行記念 君嶋彼方×辻村深月対談
https://kadobun.jp/feature/talks/6r6skle5hvk0.html

1.〈15年も元に戻らない〉入れ替わり

見出しにも書いてしまったこの事実、これもできれば知らずに読んでいただきたいところなんです。
冒頭からひとつ巧みな仕掛けがあって、読まれた方はきっと、最初の「30」の節の終わり(16ページ)でまず驚かれたはずです。
15年間一度も元も戻れず、周囲に隠したまま生きているという珍しい設定の本作。主人公・まなみは夫と娘と暮らす30歳の主婦で、彼女がひとり帰省をするシーンから始まります。実はこの“まなみ”の中に宿っているのは15年前に入れ替わってしまった高校の同級生 “陸”で、それが今や男性と結婚して子供もいる。入れ替わってからの15年間に、何があったのか。少しずつ明かされていく過去から目が離せません。

2.リアルで切ない、〈入れ替わり後の日常〉

この設定だけで素晴らしく、冒頭から引き込まれてしまいますが、本当に驚くべきはそのあとです。
入れ替わったことは家族にも友達にも隠しておくことにした陸とまなみですが、他人の顔をして生きていくのは、簡単なことではありません。バレないように異性を演じる苦労、家族も友達も自分のものではなくなってしまったことによる孤独、そして時が経つほどに湧いてくる「これは誰の人生なのか」という疑問。もうこのままずっと元には戻れないかもしれないなら、入れ替わる前の相手を演じ続けるより、新しい自分としてやりたいことをやって生きていくべきではないのか――。
「入れ替わり」は心躍る「奇跡の体験」などではなくて、不安と孤独の日々の始まりだということにはっとさせられます。もし自分が誰かと入れ替わってしまったら、きっとこういう気持ちになるのだろうと納得させられるほどリアルに描かれる二人の心情。作中では描かれないまなみ(入れ替わり後の陸)側の心情を想像させられる奥行きもあり、読み応え抜群です。

3.秘密を共有する二人の〈共犯関係〉

そんな不安と孤独の日々のなかでも、秘密を共有する陸とまなみは助け合ってそれぞれの人生を歩んでいきます。二人の関係は恋人とも家族とも違う、〈共犯者〉のようなもの。そして彼ら二人に共通する大きな魅力が、突然与えられた「借りもの」あるいは「もらいもの」の人生に対して、ずっと誠実さを失わないところです。この体も、人生も、本当は相手のものだから、それを預かっている自分は大切にしよう。大切にしてくれる相手がいるから、自分も前を向いて生きていける。そんな関係が自然に出来上がっているところに希望があります。
「君の顔では泣けない」というタイトルも、注目していただきたいところです。タイトルを変更するにあたっては、この二人の素敵な関係を表したものにしたいと考えていました。頭の片隅に置いて読んでいただけたら、そういう意味だったのかと思われる場所があるのではないでしょうか。

本作の魅力はまだまだ語り尽くせませんが、いま特にお伝えしたい3つをご紹介させていただきました。
新人ばなれしたハイレベルなデビュー作を、お見逃しなく!

作品紹介 『君の顔では泣けない』



君の顔では泣けない
著者:君嶋彼方
定価:1,760円(本体1,600円+税)

この顔も、体も、本当は君のものだから。

高校1年の坂平陸は、プールに一緒に落ちたことがきっかけで同級生の水村まなみと体が入れ替わってしまう。いつか元に戻ると信じ、入れ替わったことは二人だけの秘密にすると決めた陸だったが、“坂平陸”としてそつなく生きるまなみとは異なり、うまく“水村まなみ”になりきれず戸惑ううちに時が流れていく。もう元には戻れないのだろうか。男として生きることを諦め、新たな人生を歩み出すべきか――。迷いを抱えながら、陸は高校卒業と上京、結婚、出産と、水村まなみとして人生の転機を経験していくことになる。
詳細ページ:https://www.kadokawa.co.jp/product/322105000257/
amazonページはこちら

「ナキザカナプロジェクト」特設サイトはこちら
https://kadobun.jp/special/nakizakana/
*「ナキザカナプロジエクト」とは:
第12回小説 野性時代 新人賞受賞作『君の顔では泣けない』(著・君嶋彼方)と、10月刊単行本・第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈大賞〉受賞作『虚魚そらざかな』(著・新名智)という、ふたりの実力派新人のデビュー作を盛り上げるべく立ち上げられたプロジェクトです。文芸界の新たな才能をお見逃しなく!

著者プロフィール

君嶋彼方(きみじま・かなた)
1989年生まれ。東京都出身。「水平線は回転する」で2021年、第12回小説 野性時代 新人賞を受賞。同作を改題した『君の顔では泣けない』でデビュー。

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同級生と入れ替わって、戻れないまま15年。発売前から話題のデビュー作『君の顔では泣けない』試し読み#1
https://kadobun.jp/trial/kiminokaodewanakenai/20b7e3p7ok9w.html



こんな書き手を待っていた。〈小説 野性時代 新人賞〉受賞作『君の顔では泣けない』著者、君嶋彼方さんインタビュー
https://kadobun.jp/feature/interview/75numn33a38c.html



相手の気持ちが分からないからこそ、人は繋がれる。繋がりたいと思う。『君の顔では泣けない』刊行記念 君嶋彼方×辻村深月対談
https://kadobun.jp/feature/talks/6r6skle5hvk0.html


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