最新作『この本を盗む者は』が本屋大賞にノミネートされるなど、多くの書店員さんの支持を集める深緑野分さん。物語の世界に侵食される街を少女たちが駆け抜ける『この本を盗む者は』、若き合衆国コック兵が戦場で遭遇する“日常の謎”を綴った『戦場のコックたち』、1945年の戦後ドイツで少女がある目的を胸に秘め旅に出る『ベルリンは晴れているか』など、幅広い作風で読者を楽しませてくれています。
そんな深緑さんが「作家になるにあたって影響を受けた作品」を選書したフェアが東所沢の「ダ・ヴィンチストア」で開催中。なんと元書店員の深緑さん直筆のPOPもあるということで、お店を訪問してきました。
ダ・ヴィンチストアにて「深緑野分選書」フェア実施中!
JR武蔵野線・東所沢駅から徒歩約10分、巨大な岩のような建物(角川武蔵野ミュージアム)が目印の「ところざわサクラタウン」。その2階に、KADOKAWA直営の体験型書店「ダ・ヴィンチストア」があります。
コンセプトをもとにした書棚「発見×連想ギャラリー」など、ここでしか見られないラインナップの棚もあって気をひかれますが、今回のお目当ては「深緑野分選書」のコーナー。ストア入り口からすぐ目に入る一等地に、深緑さんご自身の著作とともに展開されています。
さっそく、深緑さんお手製のPOPとともに、選ばれた3作品をご紹介します。
深緑野分が影響を受けた3作品
壮麗さと醜さが同居した雰囲気が大好き
『レベッカ 上下』 ダフネ・デュ・モーリア著、茅野美ど里訳(新潮文庫)
東京創元社主催のミステリーズ!新人賞に投稿し、佳作入選となった短編「オーブランの少女」はこの『レベッカ』から多大な影響を受けています。
ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た。
(『レベッカ』上巻 第一頁第一文より)
この第一文と、最後の一文はオマージュです。
「“マンダレー”ってどこ?」という強い惹き込みから、憧れ、ざわざわした不穏感、嫌らしさ、謎、美しい庭と死んだはずの女主人の気配……壮麗さと醜さが同居した雰囲気が大好き。
14才でもし読んでいたら危うい人生を歩んでいた。
『少女には向かない職業』 桜庭一樹著(創元推理文庫)
「お前の中にはまだ火種があるよ」と教えてくれ、その火をぶつける対象に小説を選ばせてくれた本。
初めて読んだのは、まだ何者でもなかった20代はじめの頃。色々と面倒なことが身辺で起きていて、すべて諦めようとしていた私に火を思い出させた本なのです。
桜庭さんの言葉は強い。
命を燃やそうと思わせてくれます。
原初の読書体験
『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ著、上田真而子 佐藤真理子訳(岩波書店)
まだろくに字も読めなかった幼い頃、夜、母が読み聞かせをしてくれました。
空想は幼ごころにも芽生え、大きく膨らみ、どこまでも遠くへ飛んでいきました。
作家の種が私にあったとしたら、この本がそれを育ててくれたんだと思います。
深緑さんから寄せられたメッセージを読んだら、3作品すべて、手に取らずにはいられなくなりますよね!
それぞれへの強い想いが伝わってくるPOPとともに、ダ・ヴィンチストアでは3作品を店頭展開中です。ぜひ深緑さんの著作とともにお楽しみください。
『この本を盗む者は』について
本に夢中になった、いつかの自分に会いにゆこう。
2021年本屋大賞ノミネート作品。
【STORY】
書物の蒐集家を曾祖父に持つ高校生の深冬。父は巨大な書庫「御倉館」の管理人を務めるが、深冬は本が好きではない。ある日、御倉館から蔵書が盗まれ、父の代わりに館を訪れていた深冬は残されたメッセージを目にする。
“この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる”
本の呪い(ブック・カース)が発動し、街は物語の世界に姿を変えていく。泥棒を捕まえない限り元に戻らないと知った深冬は、私立探偵が拳銃を手に陰謀に挑む話や、銀色の巨大な獣を巡る話など、様々な本の世界を冒険していく。やがて彼女自身にも変化が訪れて――。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000257/
★特設サイトはこちら
https://kadobun.jp/special/konohon/
★深緑野分『この本を盗む者は』、魅力的な作中作4つの試し読み
https://kadobun.jp/trial/8o2bpi5i3wkk.html
深緑野分(ふかみどり・のわき)
1983 年神奈川県生まれ。2010 年「オーブランの少女」が第7 回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。13 年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。15 年に刊行した長編小説『戦場のコックたち』で16年本屋大賞第7 位、第18回大藪春彦賞候補。18 年刊行の『ベルリンは晴れているか』で第9 回Twitter 文学賞国内編第1 位、19 年本屋大賞第3 位、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補。20年刊行の『この本を盗む者は』でキノベス!2021 第3位、21年本屋大賞第10位となる。