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特集

著者自ら語るシリーズ誕生から完結の秘密&今だから話せる連続ドラマ放送時の秘蔵エピソード! 神永学 トークイベント「山猫大感謝祭」

華麗なる義賊・山猫の活躍を描いた、神永学さんの人気ピカレスク・ミステリー「怪盗探偵山猫」。そのシリーズ最新作にして堂々の完結編『怪盗探偵山猫 深紅の虎』(KADOKAWA)の発売を記念して、10月26日(土)東京の三省堂書店池袋本店にて、神永さんのトーク&サインイベント「山猫大感謝祭」が開催されました。

シリーズ誕生の舞台裏や、完結の理由、ドラマ版で山猫を演じた亀梨和也さんとの秘蔵エピソードなど、興味津々の話題が飛び出したトークイベントの模様を、ダイジェストでカドブン読者にもお届けします!


トーク司会・文=朝宮運河


――シリーズ第1作『怪盗探偵山猫』が発表されたのが2006年。今から約13年前になりますが、当時のことは覚えていらっしゃいます?

神永:よく覚えていますね。デビューしてしばらく『心霊探偵八雲』だけに集中していたので、そろそろ違う作品を書きたいな、と思うようになっていた時期でした。当時の担当者が「俺を納得させる企画を出せたら許してやる」と言うので(笑)、温めていたアイデアを数本まとめて出したんですが、そのうちの一本が『怪盗探偵山猫』だったんです。


シリーズ第1作『怪盗探偵山猫』


――他にはどんなアイデアがあったんですか?

神永:ひとつは『浮雲心霊奇譚』の原型で、「時代劇は年寄りになってから書け」と言われました。もうひとつが『コンダクター』の原型だったんですが、「おのれのレベルを考えろ」と(笑)。幸い山猫のキャラクターは担当者にも好評で、初めて『八雲』以外の作品を書くことができたんです。


――クールなヒーローである山猫に、「音痴」という特徴を与えたのはなぜですか?

神永:僕自身、歌が苦手なんですよ。それもネタになるほど下手じゃなくて、笑えない程度の「絶妙な音痴」(笑)。だからカラオケにはほとんど行かないんです。山猫は完全無欠のキャラクターにしたくなかったので、僕にとって身近な音痴という欠点を与えました。ヒロインやサブキャラも含めてですが、僕は完全無欠なキャラクターって書きたくないんですね。たとえ欠点があっても、状況や場合に応じて、それが愛すべきポイントになることだってある。音痴な歌声が聞こえてくるシーンで、「あ、山猫だ」と愛着を感じていただけたら、狙いがうまくいったのかなと思います。


――テレビドラマ版の『怪盗 山猫』では、亀梨和也さんが音痴な山猫を好演されていましたよね。

神永:ドラマ版については印象的なエピソードがあるんです。放映開始に先立って、山猫役の亀梨和也さんと対談することになったんですが、先方からの要望でスケジュールが一度変更になったんです。その理由というのが、「原作の理解度が足りていないので、まだ原作者とはお会いできません」。後日あらためてお会いしたら、亀梨さんが目の前でいきなり〝音痴な〟生歌を聴かせてくださって。プロ意識の高い方だなあと感動しました。亀梨さんも、山猫のキャラクターには愛着を持ってくださっていたようです。


――では最新刊の『怪盗探偵山猫 深紅の虎』についてお話ししましょうか。本当にこの巻でシリーズは完結なんですよね?

神永:終わりです。最初からそのつもりで連載していました。完結の理由としては、あとがきにも書きましたが時代の変化が一番大きいですね。この20年の時代の変化のスピードってすごいじゃないですか。一作目の『怪盗探偵山猫』を単行本から文庫にする時に、だいぶ書き直さなければいけない点があって、たとえば単行本では勝村が駅で切符を買っているんですよ。今だったら雑誌のライターが、パスモやスイカを持っていないっていうのはありえないですよね。セキュリティでも最近は生体認証が当たり前になって、鍵を開けて忍び込むという山猫のスタイルが、時代に合わなくなってきました。かといって、山猫が仮想通貨を盗んでもあまり面白くないじゃないですか(笑)。万か一、この先山猫が再登場することがあるとすれば、今とはまた違った形になるんだろうなと思っています。


『怪盗探偵山猫 深紅の虎』


――悪を討つ痛快さもこのシリーズの魅力でした。時代が変われば、また新しい悪人たちも生まれてくるでしょうしね。

神永:このシリーズを始めたのは、ちょうど振り込め詐欺が出始めた頃でした。それまでは一般人が詐欺師と関わり合いになることなんて、まずなかった。ところが振り込め詐欺によって、誰でも被害者になる社会になったんです。普通に生活している人から大金を騙し取った悪人が、大手を振って歩いていることへの鬱憤が、シリーズの背景にはあったと思います。時代が進むにつれて、また僕らが山猫を必要とするような状況が、生まれてくるかもしれないですね。


――さて、今日は会場の皆さんからいくつか事前に質問をいただいています。まずは「神永さんが山猫シリーズの中で自分に似ていると感じるキャラクター、共感するキャラクターは誰ですか?」という質問から。

神永:勝村ですね。僕も勝村みたいに、とにかくトラブルを拾っちゃうタイプなんですよ。生きているだけでトラブルが降りかかってくる。昨日、サラリーマン時代の同僚や上司と久しぶりに会っていたんですが、「お前はそういう奴だったよね」と言われました。自他ともに認める勝村タイプです(笑)。


――「次にどんな作品を書いてみたいですか? たとえば恋愛ものとか?」という質問もいただいています。

神永:恋愛ものは一度書いてみたいですね。どこも書かせてくれないんですよ。「ミステリーを絡めた恋愛ものなら」と言われるんですが、それはもはやミステリーなので(笑)。ミステリー要素のない恋愛小説にも、挑戦してみたい気持ちがあります。ちなみにすでにオファーをいただいているものだけでも、現在すごい数の作品が動いているので、楽しみにしていてください。KADOKAWAさんともびっくりするような「隠し球」案件が進行中です。


――おお~、それは気になりますね。気になるといえば、『心霊探偵八雲』最終巻の12巻はいつ頃になりそうですか?

神永:来年です。ここで宣言しますね。東京オリンピックまでには必ず出します。


――会場の皆さんが証人ですね。夏までというと、結構もうすぐですが。

神永:出せると思います。まだ一行も書いていないですけど(笑)。その他にもいろんな仕掛けを用意しているので、どうかご期待ください。


――『山猫』が完結し、『八雲』も一段落を迎えて、2020年は神永さんの新しいシーズンが始まる年になりそうですね。

神永:今はとにかくモチベーションが上がっていて、小説を書きたくて仕方ないんですよ。ではせっかくなので、会場の方の質問にも直接お答えしましょうか。聞きたいことがある方は手を挙げてください。あ、さっそく手が挙がりましたね。


――(来場者)山猫が好きなお酒がジャック・ダニエルなのは、何か理由があるんでしょうか?

神永:いい質問ですね。『セント・オブ・ウーマン』という映画の中で、元軍人役のアル・パチーノがジャック・ダニエルのことを「ジョン」と呼んでいるんです。「俺はつき合いが長いからジョンでいいんだよ」っていう台詞がとにかくかっこ良くて、当時通っていた映画学校の連中はみんな味も分からないのにジャック・ダニエルを飲んでいましたね(笑)。そこからジャック・ダニエルといえばかっこ良いもの、というイメージが刷りこまれているんです。


――(来場者)神永先生はお酒をあまり飲まれないんですか?

神永:ほとんど飲めません。飲めてビールか焼酎を一杯ですね。以前取材のためにウイスキーのテイスティング講座に行きましたが、たちまち具合が悪くなりました(笑)。唯一ウイスキーで飲めるのがメーカーズマークというバーボンで、それはよく勝村に飲ませています。(作中に登場する)STRAY CATのモデルになったお店があって、そこで初めて飲ませてもらったんですよ。「あまりお酒が飲めないんです」と言ったら、マスターが出してくれて。


――なんと、STRAY CATにはモデルがあったんですか。

神永:そうなんです。友人に連れていってもらったんですが、僕が「お腹が空いた」と言っていたらマスターが「しょうがねえな」とボロネーゼを作ってくれた。それがめちゃくちゃ美味しくて感動しました。後で聞いたら、マスターは帝国ホテルの元料理人だったそうですね。2回目に行った時に「僕のことを覚えていますか?」と聞いたら、「知らん」と言われて(笑)。あのマスターの言動は、山猫のモデルになっているところがありますね。


――では最後にこれから『深紅の虎』を読まれる皆さんにメッセージをお願いできますか。

神永:〝山猫節〟を存分に楽しんでもらえれば嬉しいですね。色んな思いを込めて書いた作品です。最終巻ですが、ラストについてもきっと納得していただけると思います。ぜひ楽しんでください。


――神永さん、本日はどうもありがとうございました。(会場拍手)


当日配布された号外(表面)


山猫新聞(裏面)


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