教養文庫6レーベルの編集長が集い、ライバル他社の本をレビューする合同フェア「チチカカコヘ」の季節が今年もやってきました。今日は「チチカカコヘ」の4文字目、【カ】=河出文庫の編集長が推す8冊をご紹介します。
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・【チ】=ちくま学芸文庫の編集長が推す8冊
・【チ】=中公文庫の編集長が推す8冊
・【カ】=角川ソフィア文庫の編集長が推す8冊
「チチカカコヘ」とは?
2021年1月下旬より、全国の書店約500店舗にて、第7回「チチカカコヘ」フェアがスタートしました。「チチカカコヘ」とは――、
という6つの文庫レーベルの頭文字。つまり、6つの教養文庫の編集長が出版社の垣根を越えて集まり、読書界を盛り上げたいという熱い思いから毎年開催しているフェアなんです。
今年のテーマは「教養と生きよう」
7回目にあたる2021年のテーマは「教養と生きよう」。
新型コロナウイルスの世界的流行のなかで、日々、答えのない課題に直面している私たち。いまこそ本は、過去の出来事にヒントを求め、科学と向き合い、生きることの意味を問い直し、どうやって社会を維持していくのかを模索する――そんな手がかりを私たちに与えてくれるのではないでしょうか。こうした願いをこめて、48点の推薦タイトルが選ばれました。
河出文庫編集長が推す8冊
今日はその中から、河出書房新社の藤﨑寛之編集本部長が推薦する8タイトルをご紹介します。
各社編集長がライバル他社の本を読み込んで「本気で推す」というのが、この合同フェアならではの試み。読者と教養文庫の新しい出会いのきっかけになりましたら幸いです。
日本語をみがく小辞典
森田良行
角川ソフィア文庫
本体1560円 + 税 978-4-04-400515-3 電子版あり
https://www.kadokawa.co.jp/product/321903000154/
【藤﨑編集長よりひと言】
使い方は書いてない。目次(すこぶる魅力的だ)に誘われて気になる項目を開く。例えば「先走る」と「先駆ける」の違いが説かれる。止まらなくなる。
増補 無縁・公界・楽 日本中世の自由と平和
網野善彦
平凡社ライブラリー
本体1165円 + 税 978-4-582-76150-4 電子版あり
https://www.heibonsha.co.jp/book/b160341.html
【藤﨑編集長よりひと言】
実は読者の招き方が秀逸。生徒の純粋な問が端緒であるとし、本編は「エンガチョ」の話で平易に始まる。どの章も第一文から引き込まれる。さすがだ。
論語 増補版
加地伸行[全訳注]
講談社学術文庫
本体1630円 + 税 978-4-06-291962-3
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000211442
【藤﨑編集長よりひと言】
一家に一冊ならぬ、一生に一冊。人生必携。「『論語』を読みこんでみよう」と誘い、そのためのフルセットを提供してくれる。「手がかり索引」も有難や。
科学哲学への招待
野家啓一
ちくま学芸文庫
本体1100円 + 税 978-4-480-09575-6 電子版あり
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480095756/
【藤﨑編集長よりひと言】
狙いも構成も筆致も、明快で着実でバランスがよく、圧倒的な安心感がある。文庫化に際し洗練された工夫が施されている。教養入門のお手本のような本。
形を読む 生物の形態をめぐって
養老孟司
講談社学術文庫
本体960円 + 税 978-4-06-518546-9 電子版あり
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000330343
【藤﨑編集長よりひと言】
科学の客観主義が「自分」の隠蔽を招くとする冒頭からスリリング。かの「馬鹿の壁」の初出箇所を見届けつつアクセル全開。知的快楽を存分に味わえる。
細菌と人類 終わりなき攻防の歴史
W・ハンセン/J・フレネ
渡辺格[訳]
中公文庫
本体900円 + 税 978-4-12-205074-7 電子版あり
http://www.chuko.co.jp/bunko/2008/11/205074.html
【藤﨑編集長よりひと言】
感染症と無縁ではいられないことを痛感させられた私たちは、歴史に学ぶ好機を得たとも言えるとすれば、まさに絶好の一冊。テンポがほどよく、網羅的。
死ぬ瞬間 死とその過程について
エリザベス・キューブラー・ロス
鈴木晶[訳]
中公文庫
本体1100円 + 税 978-4-12-206828-5
http://www.chuko.co.jp/bunko/2020/01/206828.html
【藤﨑編集長よりひと言】
ロングセラーは何かしら普遍性を宿していましょうが、徹底的に具体的な声から普遍性に辿り着いた確信のようなものが底流に流れていて、グッときます。
山海経 中国古代の神話世界
高馬三良[訳]
平凡社ライブラリー
本体854円 + 税 978-4-582-76034-7
https://www.heibonsha.co.jp/book/b160225.html
【藤﨑編集長よりひと言】
奇怪ないきもの(?)の絵に目を奪われるが、ほとんど見かけない漢字も丁寧に組まれルビが振られている。おかげで人類の想像力の奥行きを体感できる。
店頭では、お薦め48タイトルをまとめた小冊子を配布しています。各編集長の似顔絵入り手書きポップと合わせて、書店でお待ちしております!
▼河出文庫とは――?
1980年創刊。現代作家の小説のイメージが強いかもしれませんが、ドゥルーズをはじめとする現代思想や古典現代語訳シリーズなど、教養・学術ラインも粒ぞろいです。近年は、民俗学や科学読み物などへも幅を広げてきました。文庫専門の編集部を設けておらず、守備範囲の異なる編集者たちが企画を自由に出し合う体制であることが大きな特徴。何が飛び出してくるか、企画会議が毎回楽しみです。今後も、「知のゲリラ」としての活動に、いっそうの磨きをかけたいと考えています。
▼チチカカコヘ「教養と生きよう」フェア小冊子は電子版(無料)もダウンロードできます。
https://bookwalker.jp/de55e323ea-2e1a-4e1d-908b-d14c4ec9d5a3/
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