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特集

名もなき青年が、たった一人で“国家”に立ち向かう――佐藤亜紀の『天使・雲雀』に寄せられた熱狂的な興奮をお届け!『スウィングしなけりゃ意味がない』の熱狂を再び味わってください。

佐藤亜紀さんの長編『天使』と、短編集『雲雀』が1冊になり、『天使・雲雀』として角川文庫で新たによみがえりました! 見本ができてからわずか1週間足らず。「読みました。あまりの面白さに一気に……!」「傑作です」「コメントの文字数が足りない!」との言葉とともに、編集部に寄せられた熱烈なコメントの数々、そして物語の世界観を体現したカバーを作ってくださったデザイナーさんや、画家さんの思いをご紹介します。

あらすじ

名もなき青年が、たった一人で“国家”に立ち向かう!
第一次世界大戦前夜のヨーロッパ。生まれつき特殊な力を持つジェルジュは、ウィーンの権力者に見出された。不穏な政治情勢の中、間諜となった彼を待ち受ける壮絶な闘いが圧巻の『天使』と、その後を描く『雲雀』を合本した完全版。


書影

佐藤亜紀『天使・雲雀』(角川文庫)


編集部に届いた熱烈コメントをお届けします。

■内側に触れ、歓びを聞き、音を見て、痛みを嗅ぎ、色を味わう──少年が受けとめ、やがて放つことになる〈感覚〉。佐藤亜紀さんが文字で描写したその姿を読んでいると、感覚の一部分が共振し躍り出します。装丁の方向を担当編集さんと検討しながら、第一次大戦前夜のウィーンの街を白い服の少年が彷徨うイメージに焦点を定め、画家の浅野信二さんが繊細にイメージを広げて、羽と雪が降りそそぐ歪んだ街を歩いていく少年、ジェルジュ・エスケルスの姿が現れました。
(装丁・柳川貴代さん)

何という小説だろう。読み返す度に、物語にうっとりと溺れつつ、不可知に触れでもしたかの様な感覚に眩暈を覚え、切り詰められた端正さに溜息が漏れる。ブダペスト、ウィーン、ペテルブルク、そしてパリ……二十世紀初頭の欧州、暗雲立ち込め複雑に錯綜した情勢を背景に、さりげなくも緻密に描かれた絢爛たる歴史活劇を、いま改めて堪能している。
(装画・浅野信二さん)

選ばれし者の恍惚と孤独。帝国と名家の栄光と没落。その悲哀と諦観。エスピオナージュ(諜報)小説の不穏と、歴史小説の教養と、ビルドゥングスロマンの快感と、恋愛小説の甘美と、サイキックウォーの興奮を具えた『天使』と『雲雀』が、今回一冊にまとまって文庫復刊されることが嬉しくて、嬉しくて嬉しくてならない。
(本書解説より抜粋/書評家・豊崎由美さん)

これほど緊張感を強いるスリリングなエンタテインメントはめったにない。小説でよかった。これを映画でやられたら、面白さに悶絶していたと思う。
(翻訳家・金原瑞人さん)

■特殊な"感覚"を備えたジェルジュはその力で大戦の謀略に関わる。青年期の『天使』、成熟期の『雲雀』二冊を一つにしたことで彼の変化を途切れなく堪能。SF読者クラブ会長は"感覚"による超常戦闘描写にヤラれました!
(三瀬弘泰さん)

■人の精神を覗きこみ、操作する異能の青年ジェルジュ――この天才を持って第一次世界大戦の諜報戦の最前線に投入される筋立てと聞けば、絢爛たるスパイ映画を想像してしまうが、佐藤亜紀がそんな安手の活劇を書くわけがない。

開幕早々に仲間は惨殺され、姿の見えない血なまぐさい暗闘だけが進行する。人並みはずれた超能力を持ってしても、歴史の渦を押し止めることは出来ず、ただただ旧き時代の秩序の終焉――“神々の黄昏”を見送ることしかできない。彼が敗北のたびに溜め込んでいく退廃感と憂鬱な心象は、傍観者たる者=天使の憂鬱であり、ヴィスコンティmeetsル・カレとでも言いたくなる深い無力感を醸し出すばかりだ。

しかし、これは決して対岸の火事ではない。今日我々もまた、ジェルジュと同じ暗い淵を覗き込んでいる。

突如、姿もなく生活を破壊しはじめたコロナウィルスは大戦前夜の暗鬱、プロイセンとロシアに挟撃され権謀術策渦巻くウィーンの宮廷政治は、まさに米中の利害衝突に翻弄される霞が関の迷走を彷彿とさせ、否応なく〈ニューノーマル時代〉に突入させられた21世紀の我々の今日と見事に響き合う。

この作品が書かれてから既に20年、今回の文庫化はあまりにも時宜を得すぎていて、ゾッとする。

まさに神からの恩寵――いや、100年を超えて未だ代わり映えのしない我々の愚劣を笑う、天使のイタズラなのかもしれない。
(Livewire・井田英登さん)

■佐藤亜紀さんの小説はいつも、描かれていない無数の人物やエピソードが背景にあるのを感じさせる。氷山のように、隠れている膨大な部分が、海上の美しく輝く物語を支えているような。『天使・雲雀』は、『天使』で海上の極上の物語を味わった後、『雲雀』で海中もちらりと覗けるという贅沢を味わえる本なのだ。
(翻訳家・三辺律子さん)

人間業とは思えないほどの完成された美しさに畏怖する歓び。
 『天使・雲雀』を読む至福は、これに尽きる。
 欧羅巴、戦争、間諜、そして異能者たちの戦いを、
 磨き抜かれた黒檀のごとき物語に仕立てた、
 現代最高位の小説家の絶技を見よ!
(ときわ書房本店・宇田川拓也さん)

■目に視えぬものに触れ、手に触れられぬものを感じとり、自在に操る力を持つ青年たち。死の気配がたちこめる街を背に、上下する胸の息づかいと、傷ついた命のほとばしりが聞こえる。儚くも力強い美学の物語だ――。
(リブロ新大阪店・浦田美穂さん)

■翻訳作品を読んでいるような、その独特な世界にすうっと惹きこまれました。
不思議なのはその町もその時代背景も知らないのに彼らの姿がくっきりと見えてしまったことです。
物語の激しさ凄惨さは感じたけれどジェルジュの優しさに救われました。
何だろうこれが頭を覗くってことなのかな? 彼らの表も裏も見れた気がします。
最高なスリルと彼らの想いを是非読んでいただきたい、
読み終えた時何故かニヤニヤしてしまいました。
(八重洲ブックセンター・狩野大樹さん)


佐藤亜紀『てん使雲雀ひばり詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000256/


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