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特集

『ヘルドッグス』岡田准一×坂口健太郎・対談インタビュー 艶と色気溢れる最凶バディが生み出した、「日本製フィルム・ノワール」の作り方

取材・文 河内文博(アンチェイン)

『ヘルドッグス』岡田准一×坂口健太郎・対談インタビュー

『関ヶ原』、『燃えよ剣』と司馬遼󠄁太郎原作の映画化でタッグを組んできた俳優・岡田准一と監督・原田眞人。二人が3度目のタッグの原作に選んだのは、小説家・深町秋生の傑作ノワール『ヘルドッグス 地獄の犬たち』。
元警官で、現在はある事件によって復讐の鬼と化した岡田演じる兼高は、警察に捕まり、自らの罪と引き換えにヤクザ組織の潜入捜査をさせられることに。そこでバディを組んだのは事前の調査で相性98%の「サイコボーイ」と称される室岡(坂口健太郎)。二人はヤクザ組織をのし上がっていくのだが…。
本作でバディ役を演じ、見たことのない激烈なアクションで男の艶と色気、狂気までをも体現した二人に、対談インタビューで原作への想いや撮影の裏側を聞いた。

「原作の力強い筆致とエネルギッシュな空気感が好き」(岡田)


――本作は深町秋生さんが2017年に刊行した原作の映画化です。まさにその魅力をフルに活かしきった作品かと思いますが、原作にはどんな印象をお持ちですか。

岡田准一(以下、岡田):僕は原作小説がすごく好きなんです。ただ、映画版はあくまで原田監督節にもなっているので、 原作ファンの方がどう思うかというのを、実は心配していました。でも、原作の深町秋生先生が好意的に観てくださったというお話を聞いて、ありがたいなと思っています。


――そもそも原作のどんなところがお好きだったのでしょう。

岡田:やはりハードボイルドな文体ですよね。力強い筆致でお話を描写される作品だと感じていまして、男たちが織りなす、そのエネルギッシュな空気感がとても好きです。


――坂口さんは?

坂口健太郎(以下、坂口):…実は僕、途中までしか読んでないんです。

岡田:監督から止められたんだよね?

坂口:そうなんです(笑)。僕が演じる室岡秀喜という男は、映画と原作では違ったキャラクターになっていると言われまして。だから、途中までしか読んでいないんです。

岡田:僕も同じことを言われたのですが、もう先に読んでいたので手遅れでした(笑)。

坂口:(笑)。確かに室岡のキャラクター性は、原作と映画では違うんです。そこは、脚本と現場で生まれるもので役を作っていこうと思ってました。


――キャラクター性という点でいえば、本作はとにかく、濃いキャラばかりですよね。

坂口:そうですね。撮影を終えて、もうすぐ封切りという今になってみると、 登場人物がみんな愛らしいと思えるぐらい「濃い」です(笑)。彼らはやっていることはめちゃくちゃだし、ひどいんですが、純粋さゆえの暴力というのか、この映画に出てくる、ぶっ飛んだ人たちが噛めば噛むほど愛しくなるんですよね。



「室岡秀喜という男に強烈に惹かれた」(坂口)


――お二人は、出演が決まったときはどんなことを考えましたか。

岡田:実は原田監督の前作『燃えよ剣』(21年)の撮影現場で、すでに『ヘルドッグス』のお話を伺っていたんです。最初に監督から企画の話を聞いたあと、台本が届いて、すぐにアクションの打ち合わせがありました(笑)。まだ映画の撮影が始まるかどうかもわからない状態でしたけど、出演が決まり、すごいスピード感でした(笑)。

坂口:そういうことがあるんですね(笑)。僕は原田組に参加したかったし、岡田さんと共演させていただきたいという強い想いがあったので、オファーは嬉しかったですね。でも、まずは室岡秀喜という男に強烈に惹かれた、というのが、出演が決まったときのいちばんの想いになると思います。


――不良性感度が室岡から滲み出ていました。

坂口:最初に台本を読んだとき、“室岡って良いヤツではないけれど、愛しいヤツだな”って思ったんです。ピュアすぎるがゆえの狂気を感じたというか。あと、僕は31歳なんですけど、多分20代だったら僕のところには来なかった役だろうなとも思いました。その意味でも新鮮でしたし、原田組の現場も想像通りのすごい体験でした。まるでハリケーンのようというか…。

岡田:原田監督は、役者に正解を探させる監督なんですよね。たとえば、原田組ではテイク数を重ねるんですが、監督が役者に求めることがその中で変わっていくんです。

坂口:体も酷使するけど、頭もめちゃくちゃ使いました。

岡田:そう、だから考えながらお芝居をしないといけないんだよね。セリフだけでなく、立ち位置だったり、ちょっとした仕草や表情にその「動きの理由」をちゃんと答えられないといけないし、「なんとなく」というのは全部ダメなんです。

坂口:そうでしたね。常に多角的に物事を考えて現場に立っていました。なので、カメラが回ってカチンコが鳴るときの緊張感も独特だし求められるレベルがすごく高いのを感じた現場でした。

「アクションをする人物の心理描写を全て考えていった」(岡田)


――岡田さんは今回共演されてみて、坂口さんの役者としての魅力をどんなところに感じましたか。

岡田:坂口くんは魅力しかないですよね。すごくピュアですし、きっと何色にでも染まれる方なんだろうなと思います。朝ドラ(連続テレビ小説『おかえりモネ』)や『余命10年』のような映画もできれば、今回の室岡のようなタイプの役もできる。これからの30代がますます楽しみですよね。

坂口:ありがとうございます。そういえば、『ヘルドッグス』の撮影が終わって、朝ドラの撮影に行って役のシャツを着たんですけど、パンプアップし過ぎで腕あたりがパンパンになりまして。スタッフの方にサイズを大きくしてもらいました(笑)。


――それはすごいですね(笑)。坂口さんから見て、岡田さんの魅力は?

坂口:初めてお会いする前から、僕の周りでも、岡田さんのアクションの素晴らしさを皆さん異口同音におっしゃるんです。ご一緒してみて、そのアクションへの情熱の凄まじさに魅了されたし、骨身に刷り込まれましたね(笑)。


――なるほど。岡田さんは、本作でアクション作りから関わられたということですが、どのような大変さがありましたか。

岡田:まず、アクションには、いろんな種類があるんですよね。たとえばワイヤーを使うと、現場で準備が必要ですから、芝居する人間の心の流れを遮ってしまう。そういうものは監督が好まれないので、この作品では使っていません。つまり、原田監督作品の場合は、あくまで芝居の延長線上で、ストーリーを逸脱せず、役者自身ができることを求めるアクションなんです。そのうえで、アクションをする人物の心理描写みたいなものを全部考えていかなければいけない。その大変さはありました。

坂口:でも、単純に岡田さん演じる兼高はアクション含めて、全てがカッコいいなと感じながら僕は現場にいましたね。だから、自然に室岡として存在することができたという感じがあります。そこで気づいたのは、アクションは人としての「深み」が出るものだということ。実際にアクションを交わす中で、岡田さんの「深み」に触れられたことが、自分にとって、すごく大きな経験でした。

岡田:やっぱり監督は、アクションもそうだけど、70年代のアメリカ映画のような色気のある男にフォーカスした映画を作りたいという思いがあったと思います。いわゆる日本の任侠映画とは違う、「日本製ノワール」と言えばいいのかな。それってどんな映画なんだろうというところに、すごく惹かれてこの映画を作っていました。



「自分を新しい色に染めてくれた作品」(坂口)


――お二人が演じた、兼高と室岡以外で、印象深いキャラクターはいますか?

岡田:体は大きいけど気は小さい、お歯黒というキャラクターが好きですね。ちょっとした撮影秘話ですが、演じている吉田壮辰さんは映画の現場に怯えられていて、飲み込まれそうなほどだったんです。

坂口:そうでしたね。

岡田:みんなで“どうやってお歯黒を救うか”と現場で話していたんです。すると、吉田さんはペースを取り戻し、役が膨らんでいったんです。そういうことが起きる現場は楽しいし、思い出深いキャラクターですね。

坂口:僕が愛着のあるキャラクターは、吉原光夫さん演じる組織の会長秘書・熊沢伸雄ですね。僕が演じる室岡って、組織の中でも凶暴だから、どこか爪弾きにされているんですよ。だけど、熊さんだけは物語が進むにつれて、理解を示してくれる。熊さんの室岡に対するアドリブも楽しかったですね。吉原さんは、僕がアドリブを受けて反応すると、面白がってくれたのも嬉しかったです。すごく室岡に愛を持って現場に臨んでくださいましたね。


――本作では、兼高と室岡を中心に、そういった男同士の関係性も一つのテーマになっていますよね。いまお聞きしていて、映画で描かれるものと重なるところがありました。

岡田:「男のセクシーさ」みたいなものがフィルムノワールの代名詞だと思うので、キャストみんなが意識していたとは思います。男同士が人間として惚れ合う感じを出したかったんですよね。特に僕と室岡は、二人でひとつのバディというか、いつの間にか互いに大きな存在になっていくという二人なので、よりその距離感は大事にしていました。


――坂口さんは、そうした「セクシーさ」について、どんな考えで臨まれたのでしょう。

坂口:美術や照明、いろんなものに囲まれて、役の衣裳を着て、共演者の皆さんとお芝居をする中で自然にそういうものが滲み出るときがあって。たとえば、兼高に対して、少しずつ愛情を感じたり、それが憎しみに変わる瞬間もあったり、複雑な感情が出てくるんです。すると、カットがかかったあとに「色っぽいシーンになりましたよ」とスタッフさんから言われたり。いま、思い出してみると、たぶんこの現場の空気が、自然と役の「セクシーさ」みたいなものに繋がっていったんだろうなという感覚があります。


――あらためて、この作品はお二人にとってどういったものになりそうでしょうか。

岡田:すごく好きとおっしゃってくれる方もいると思いますし、苦手だとおっしゃる方もいる作品なんじゃないかなと思います。でも、それは一つの表現物としての正しいあり方だとも思うんですよね。そういう映画が少なくなる中で、「一緒にやってほしい」と原田監督にお声がけいただけたのは、役者としての僕の次のステージが始まる作品だなと思っています。

坂口:今まで呼んでいただいた作品もいろんな色を僕につけてくれたと思うんです。たとえば、これまで演じてきたのは誠実な男子像が多かったのですが、それとは違う、新しい色に染めてくれた作品だと感じます。やはり役者として、色ってどうしてもついてしまうものですが、これまでの色んなイメージにも囚われずにお芝居をしたい。そんな気持ちにしてくれた大事な作品になりました。

プロフィール

岡田准一(おかだ じゅんいち)
1980年大阪府生まれ。95年にV6のメンバーとしてCDデビュー。14年にNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』で主演を務める。第38回日本アカデミー賞では映画『永遠の0』で最優秀主演男優賞、『蜩ノ記』で最優秀助演男優賞をW受賞した。近年の主演映画に『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』、『燃えよ剣』など。2023年の大河ドラマ『どうする家康』(NHK)で織田信長役を演じる。

坂口健太郎(さかぐち けんたろう)
1991年東京都生まれ。14年に映画初出演。17年に映画『64-ロクヨン- 前編/後編』で第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。18年に『シグナル 長期未解決事件捜査班』でドラマ初主演を果たした。近年の主演作に映画『余命10年』、ドラマ『競争の番人』など。現在、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に出演中。



『ヘルドッグス』
9/16(金)より全国公開
監督・脚本 原田眞人
出演 岡田准一 坂口健太郎 松岡茉優・MIYAVI・北村一輝 大竹しのぶ
原作 深町秋生『ヘルドッグス 地獄の犬たち』(角川文庫/KADOKAWA刊)
配給 東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト www.helldogs.jp
©︎2022「ヘルドッグス」製作委員会

イベント情報

2022年9月29日(木)に、原田眞人監督と原作者深町秋生さんのトークイベントが開催! 製作秘話満載のスペシャルな内容です。
詳しくはこちらから⇒
https://kadobun.jp/special/fukamachi-akio/helldogs/

▼原作小説〈ヘルドッグス〉シリーズ特設ページはこちら
https://kadobun.jp/special/fukamachi-akio/helldogs/

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