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特集

岡田准一主演!極道潜入捜査映画『ヘルドッグス』のエッセンスを原田眞人監督が語る 深町秋生『ヘルドッグス 地獄の犬たち』原作

取材・文=新谷里映
写真=冨永智子

映画『ヘルドッグス』原田眞人監督インタビュー

2004年、『果てしなき渇き』で第3回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞して以来、ハードボイルドな作風で活躍を続ける作家・深町秋生さん。『ヘルドッグス 地獄の犬たち』から始まる大人気シリーズが、『ヘルドッグス』として岡田准一さん主演で映画化されることになりました。9月16日の公開を前に、原田眞人監督にお話を伺いました。

憧れの題材を、3度目のタッグとなる岡田准一さん主演で映像化

「今まで観てきたフィルム・ノワールに対する自分なりの答えを表現してみたかった──」と、原田眞人監督が新たに挑んだ題材は、極道潜入捜査もの。深町秋生さんの小説『ヘルドッグス 地獄の犬たち』を最大限に活かしながら、原田監督が敬愛する映画のエッセンスを投入。「こんな映画が観てみたかった!」と思うような、日本的フィルム・ノワールを完成させた。



――「ヘルドッグス 地獄の犬たち」の出版後すぐに興味をもったそうですが、“極道潜入捜査”という題材はもともと原田監督が描きたかった題材だったのでしょうか。

「いつか自分もこういう作品を手掛けてみたい」と憧れていた題材でしたね。遡ってみると、子供時代に見たアメリカのTVシリーズ「タイトロープ」に大きなインパクトを受けています。


――それが、原田監督にとって最初に触れたフィルム・ノワールにして原点なんですね。

マイク・コナーズの演じるニックは潜入捜査官で、いつもタイトロープ(危険をはらんだ場面)を渡っているようなキャラクター。ニックは、犯罪組織の殺し屋とコンビを組むんだけど、僕のなかに記憶されているその殺し屋は、いつもコートを着て、黒い帽子を被って、ブルドッグのような顔をした、がたいの大きい男。ショットガンを持っていて凶暴だけど、ニックに対する忠誠心が強くて、最後は彼のために(自身が)犠牲になって死ぬ──というね。そんな男同士の友情を「タイトロープ」を通して見たとき、子供心に感動して。でかくてタフで優しい男って、格好いいなぁと思いました。


――憧れのような気持ちですか。

憧れもある。殺し屋の男も、彼に惚れられるニックも、なんだかいいなと。そんな男たちの関係を自分もやってみたいという想いは常に持っていましたね。ただ、作る側として、そういう機会にはなかなか恵まれなかった。観る立場としても、香港ノワールの『インファナル・アフェア』、それをリメイクした『ディパーテッド』はそれなりに面白いけれど、自分が求めているものは描かれていない。生まれも育ちも違う男同士の出会いと関係性、特に粗野な男との出会いがね、描かれていない。だから自分で、いつかやりたい、いつかやりたいと想い続けてきて、そして深町さんの小説「ヘルドッグス」と出会った。兼高も室岡も2人ともセクシーなキャラクターだけれど、そのセクシーさに粗野な男の感じ、自分が求めるエッセンスを入れられるなと。


――そのエッセンスの入れ方に深い映画愛を感じます。「タイトロープ」を含め、映画『東京暗黒街 竹の家』と『地獄の黙示録』を原田監督は「黄金の三角地帯」と呼んでいます。あとの2作も原作小説を読みながら、取り入れようと考えていたのでしょうか。

『東京暗黒街 竹の家』で、ロバート・ライアンとロバート・スタックが演じた役に、キャメロン・ミッチェルの役が嫉妬する設定は、兼高と十朱に室岡が嫉妬する形で注入できると考えました。原作小説には『地獄の黙示録』の影響が垣間見えたので、その要素ももちろん入っています。そうやって、いろいろな要素が積み重なっていきました。


――『ヘルドッグス』という土台に、原田監督がやりたかったもの、敬愛するものを取り入れる作業というのは、どんな時間でしたか。

楽しかった。ほんと楽しい時間でしたね。以前、『ヘルドッグス』に近い脚本──香港が返還された時代を舞台にした香港ノワールを書いたことがあって、その時も「タイトロープ」の2人のイメージを使っていて。その脚本(企画)は、残念ながら映画にはならなかったけれど、そこで書いていたクライマックスの殺し合いのシーンは、今回の『ヘルドッグス』に使っています。そんなふうに、今まで自分が観てきたものや書いてきたものを、うまく組み合わせることができた。原作から離れた部分もあるけれど、深町さんが快く受け入れてくれて、楽しんでくれた。それはとても有難かったです。



――『ヘルドッグス』を観ると、黄金の三角地帯の三作を観たくなりますし、最初に予習をしてから『ヘルドッグス』を観ると、こんなところにオマージュが!と、発見も多いです。そして、監督が原作を読んで感じたという「セクシーさ」、岡田准一さん、坂口健太郎さん、MIYAVIさん、それぞれがそれぞれのセクシーさをキャラクターに反映させていましたね。

ほんと格好いいんですよ。3人それぞれが男の色気を出していて、男くささに惹かれる。彼らの(男くさい)格好良さを活かすためのひとつが、音楽の存在です。脚本を書きながらイメージしていたのは、ニック・ジョナスの「Chains」という曲。ベニチオ・デル・トロ主演の『エスケープ・アット・ダンネモラ〜脱獄〜』でその曲が使われていて(聴いて)シビれた。それまで彼の曲にあまり興味を持っていなかったけれど、その映画で使われていた「Chains」を聴いて、犯罪映画にものすごくあうトーンだなと。『ヘルドッグス』の一番最初に流れるビートのきいた曲は、「Chains」をヒントに土屋(玲子)さんに作ってもらった曲です。あまりにも格好いいので、最後にも流しています。


――「アルハンブラの思い出」も良かったです。

本当は別の曲を考えていたけれど、使用料が高くて(笑)。でも、十朱が聴いているという設定でもある曲なので、(誰にでも聞き馴染みのある曲であることは)正解だったと思います。ほかにも、ヴェルディの「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」は、『トラブルシューター』(1995年)など過去に何度も使っている曲。今回は、熊沢をジャン・ヴァルジャン(吉原光夫さんのこと。吉原さんは、舞台『レ・ミゼラブル』でジャン・ヴァルジャンを演じている)が演じるので、彼が演じる以上は、オペラ調でやってもらおうという狙いがありました。そこから発展させたのが、熊沢の葬儀の合唱。ヤクザたちが一生懸命にイタリア語で熊沢のために歌っているのって、ものすごく可愛らしい(健気な)シーンでもあります。


――確かに、可愛らしさがありました(笑)。続いて、俳優についても伺います。岡田准一さんとは『関ヶ原』『燃えよ剣』に続く3度目のタッグとなりましたが、岡田准一=兼高昭吾、合致度がものすごく高いですね。

岡田さんとは、『燃えよ剣』の土方歳三を「もっとセクシーにしようね」という話をしていました。兼高というキャラクターを演じるにあたり、岡田さんはダークサイドのセックスアピールを意識している。ずいぶんと工夫して演じていたと思います。随所で色気は出ていたけれど、たとえば、前半で室岡と訓練をするシーン。訓練場所に到達するまでの兼高の歩き、雰囲気、何気ない動きだけれど、そこに居るだけで(これまでとは)違う色気が出ていると感じました。一方で、ラブシーンは意外にも緊張していて。恵美裏とのキッチンテーブルのシーンですね。恵美裏は積極的に攻めていくタイプなので、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』の逆をいこうというコンセプトで、兼高がキッチンテーブルに押し倒されるシーンになっています。


――無敵のような兼高が恵美裏に押し倒される、その意外性も、ある種のセクシーさですね。そして、今回もキャラクターにあわせたアクションを考案しています。

岡田くんは、こういうのできます、ああいうのできますって、まるで死の商人が武器を並べるように、次々とアクションのパターンをプレゼンテーションしてくれる。いろんな武術に通じているので、その引き出しはものすごく多いですね。


――見とれるアクションでした。室岡役の坂口健太郎さんは、サイコパスというなかにセクシーさを滲ませ、今までにない坂口健太郎を披露しています。

健太郎は、室岡役の第一候補でした。実際に会ってみて、彼でいこうと即決。コロナで撮影が延びたことで、予定よりもアクション練習に時間を割いてくれました。でも、役づくり(アクション)に熱くなっても、役としては熱くならない、クールなキャラクターとして室岡をしっかり掴んでいましたね。彼の芝居のなかで面白いな(いいな)と思ったのは、犯罪者の遺族と犯罪被害者の遺族が集まるシーン。健太郎に言ったのは、カードゲーム(大貧民)をしながら、そこにいる1人1人を殺すとしたら、どういうテクニックで殺すのか、という眼差しでいてほしいということ。そうしたら、ハチロー役の内藤聖羽がアドリブで「そんな人を殺すような目で見ないでくださいよ」というセリフを入れてきて──。


――坂口さんの視線が、そう言わせたんですね。十朱を狙った女刺客ルカとのシーンも、室岡は楽しそうに闘っていて、サイコパスなんだなってゾクッとしました。

室岡の壊れている部分を楽しんで演じてくれましたね。あとは、死の接吻のシーン。躊躇するかなと思ったら、なんの躊躇もなく唇に接吻していた。死の接吻は、実際のアメリカやイタリアのマフィアの儀式であるけれど、日本のヤクザで死の接吻は初めてだろうし、かなりインパクトのあるヤクザになったと思います。


――そして、十朱役のMIYAVIさんもセクシーでした。

十朱は、ちょっと間違うと劇画のキャラになりそうなのに、MIYAVIさんが演じるとリアルに見える、ハマっている、素晴らしいよね。十朱の役づくりとしては、『東京暗黒街 竹の家』のロバート・ライアンの歩き方を参考にしてほしいと伝えました。彼は、何かを考えているときに歩き回るけれど、その歩き方、体のバランスを真似ることで、色っぽいものが出てくるといいよねと。サミュエル・フラー監督は、第二次世界大戦でビッグ・レッド・ワン(合衆国第一歩兵師団)に参加しているので、相当数の人を殺めている。ロバート・ライアンも戦場の経験がある。だからこそ、『東京暗黒街 竹の家』の描写には、裏切り者を始末するときの葛藤、その対象が愛する者であったときの逡巡に、妙な説得力を感じる。『東京暗黒街 竹の家』が好きなのは、そういうところでもありますね。


――また、十朱の役には『地獄の黙示録』のカーツ大佐が重なります。

深町さんの小説にも『地獄の黙示録』を意識した部分がありましたが、十朱というキャラクターに直接カーツ大佐を入れるのは違うと思った。そこで『地獄の黙示録』から何を借りることができるだろうか?と考えて──カーツが読んでいた本、カーツのまわりにある書籍や絵にたどり着いた。十朱の部屋にあるターナーの絵は、カーツが読んでいた「The Golden Bough」の挿絵から発展させたもの。そもそもフランシス・フォード・コッポラが、カーツ大佐を描くときに参考にしているのが「The Golden Bough」なので、それは取り入れたかった。また、僕自身『地獄の黙示録』のロケ現場に行ったことがあって。ただ、どんなものが置いてあったのかはっきりとは覚えていなくて、改めて『地獄の黙示録』を見直して、チェックして、美術史の資料を買って読んだりして、今回の映画の参考にしました。映画のなかで一番わかりやすいのは「The Golden Bough」の本。十朱のデスクの上にも置いてあります。


――中盤から後半にかけて登場する廃墟ホテル、その建物の名称も「The Golden Bough」でしたね。

物語の設定としても、あの建物は絶対にそう命名しなくてはならないと決めていました。セリフとしても出てくるけれど、その建物の地下には「House of Bamboo」(東京暗黒街 竹の家)というレストランがあったという設定になっている。だから「HELL DOGS IN THE HOUSE OF BAMBOO」は、実は間違いで(笑)。竹の家を通り過ぎたところがクライマックスの殺し合いの場になっている。でも、そういう裏設定を含めて、映画のなかにいろんなオマージュを見つけてもらえたら、映画ファンに楽しんでもらえたら、嬉しいですね。



映画情報

『ヘルドッグス』
9/16(金)全国の映画館で公開
出演 岡田准一 坂口健太郎
松岡茉優・MIYAVI・北村一輝 大竹しのぶ
監督・脚本 原田眞人
配給 東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©︎2022「ヘルドッグス」製作委員会


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