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特集

常識を超えた素敵などこかへ、あなたを誘う多元世界紀行『箱庭の巡礼者たち』 著者・恒川光太郎氏にインタビュー!

取材・文=門賀美央子
写真=澁谷高晴

『箱庭の巡礼者たち』 著者・恒川光太郎さんインタビュー

日本ホラー小説大賞を受賞した「夜市」でデビューして以来、卓越した想像力で、数々の幻想世界とそこに生きる人々の物語を描き続けてきた恒川光太郎さん。そんな恒川さんが『怪と幽』に掲載してきた個性豊かな六つの短編に、それぞれを繋ぐ五つの掌編を加えた最新刊『箱庭の巡礼者たち』が発売中。各編に込めた思いや裏話を伺った。



――『箱庭の巡礼者たち』は、『怪と幽』の創刊号から掲載してきた小説を一冊にまとめたものですね。ファンタジー色が強い連作短編集になりました。

恒川:最初は『ドラえもん』の幻想小説版というか、いろんな「ひみつ道具」が出てくる単発ものの短編というコンセプトでした。ただ、回を重ねるうちに「ひみつ道具」から離れてしまいまして(笑)道具括りにはならなかったものの、最終話を書く辺りで漠然と「連作にした方がいいかな」と思うようになり、書籍化にあたって各話を繫げる「物語の断片」を追加しました。


――すべての発端となる第一話「箱のなかの王国」の着想は?

恒川:あんまり覚えていないのですが、最初にあったのは「ものすごい豪雨が降って、箱が流れ着いて」みたいなイメージでした。そこからどんどん連想して、行き当たりばったり的に書いたと記憶しています。ただ、僕の従来作はブラックなオチで締めるものが多いので、今回は全作ポジティブなフィーリングを持つストーリーにしようと考えていたのは、はっきりと覚えています。当初のモチーフが「ひみつ道具」だったので、あんまり残酷な展開にならない方がいいなと思ったのはあるんですけど。今回はとにかく明るい、ハッピーエンド的な雰囲気を書いてみたかったんです。とはいえ、「箱のなかの王国」のラストには、ちょっとした胸の痛みがありますが。


――むしろ自由な魂の喜びを感じました。

恒川:そこは意識しました。最初の話だから、解放感に満ちたものにしようと。


――読後感が良質なジュブナイルに通ずるものがあり、若い世代を読者層として想定されたのだろうかと思ったのですが。

恒川:ジュブナイルや児童文学のテイストは意識していましたね。大人っぽいハードボイルド幻想ではなく、若い人が夢を抱いて世界に出ていく雰囲気が欲しかったんです。


――明るくてハッピーエンドという、これまであまり書いてこられなかった作風を志された理由は?

恒川:単純に作風の波です。本作より少し前に書いていた『化物園』の話が全体的に暗めだったので今度は明るいのを、みたいな感じで。同じテイストの作品はできるだけ連続して書かないようにしているんですよ。だから、たぶん次に書く作品はまた暗くなりますね。


――第二話「スズとギンタの銀時計」には、時間を未来にだけスキップさせられる「ひみつ道具」が出てきます。

恒川:完全に道具ありきの話です。でも、時計の設定に縛られてしまって、人間ドラマが展開しにくいというか、書くのに苦労した話でした。


――ご苦労があったとのことですが、メインとなるスズとギンタのキャラクターはすごくいいですし、しかも、この二人が後続の物語の種になっていくのがおもしろく感じました。

恒川:苦労した分、この作品に意味を持たせたかったので、そういう位置づけにしたんです。いろんな始点にしたかった。


――そんな二人を追いかける謎の存在が登場しますが、迫りくる異形の恐ろしさは恒川さんならではのホラー要素ですね。

恒川:この話は、時間を飛ばして人生をズルする二人の話だったので、ズルした分の責任を取らせる存在が必要だな、と思ったんです。最終的にひどい目に遭う結末も選択肢としてありましたが、今回はたまたま僕がハッピーエンド志向だったので、彼らは生き残ることができたんです。


――「ズル」というのは、時間をスキップして面倒事から逃れたことですか?

恒川:最初に二人で時間を飛んだ時に財布とか盗んでいるじゃないですか。そのお金を元手に、時間操作というズルでうまく立ち回って財産を築いているので。追いかけてくる異形は、後ろめたさの象徴であると同時に、ズルの代償を支払わせる存在です。だから、賢い子どもたちがうまく生きていく冒険がある一方、罰せられるストーリーラインもあるので、ちょっとスリリングな展開になっていると思います。


――二人をちょっと擁護すると、彼らは人生のスタートラインがマイナスから始まっているので、補塡としてちょっとくらいのズルはあり、のような気も。

恒川:そうですよね。応援したい感じになりますよね。僕もそう思います。


――ドラマづくりの柱として、因果応報や信賞必罰的な要素は重視されますか?

恒川:します、します。悪いやつは最後にひどい目に遭わないとおもしろくないです。カタルシスがないですから。僕が一読者で、悪いやつが得をして終わりだったら、もう本を投げちゃいます。フィクションの世界ぐらい、きちんとした因果応報がないと嫌です。現実は決してそうではないですからね。


――そこを際立たせるために悪人はより悪人らしくなったりするのでしょうか。

恒川:物語を構築する上では、非常に大事な部分だと思っています。悪者が徹底して悪いやつであるほど、最後に相応の報いを受けたら、スカッとしますよね。でも、今回はそんな風にはなっていません。主人公はまったく悪人ではないし、愚連隊っぽいのは出てくるけど、〝普通の悪いヤツ〟程度で、突出した悪ではありませんので。

まだまだ奥深い『箱庭の巡礼者たち』。不思議世界の秘密がさらに解き明かされていく!
インタビューのロングverは「怪と幽」Vol.11(2022年08月31日発売)に掲載されています。

書誌情報



『箱庭の巡礼者たち』
恒川光太郎
KADOKAWA
定価: 1,870円(本体1,700円+税)
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322104000336/
amazonページはこちら

恒川光太郎特設サイトはこちら



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