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特集

ライオンのオスが父親の自覚に目覚めた理由とは? ――『いきものたちのサバイバル子育て図鑑』より小菅正夫先生のコラム特別公開!

旭山動物園元園長・小菅正夫先生に聞いた「忘れられないライオンの親子」の話

昨年は上野動物園で生まれた双子パンダ、シャオシャオとレイレイが話題を呼びましたが、今年はいったいどのような動物の赤ちゃんが誕生するのか、楽しみですね!

いきものの子育てと言うと、親が我が子にお乳をあげる様子や、毛づくろいをする様子など、おだやかな場面が思い浮かぶかと思うのですが、実は必ずしもそうとは限りません。
メスが4ヶ月もの間絶食して育てた子をオスが食べてしまうことがあるホッキョクグマや、お母さんと一緒にいられるのはたった2週間のタテゴトアザラシ、なんと子に自分を食べさせるコブハサミムシなど、驚きの子育て術をとるいきものがたくさんいます。

そのようないきものの子育て話を旭山動物園元園長の小菅正夫先生のコメントと、『キモイけど実はイイヤツなんです。』などのイラストが人気の川崎悟司さんの絵でお見せする、いきものたちのサバイバル子育て図鑑



今回は特別に、単行本収録の小菅先生が動物園で体験されたライオンの子育てコラムを抜粋してお送りいたします!


川崎悟司さん絵の小菅正夫先生イラスト

川崎悟司さん絵の小菅正夫先生


コラム:忘れられない「ライオンの親子」

私が園長になって3年目、旭山動物園に猛獣館ができて、メスとオスのライオンを1頭ずつ飼育していた時のこと。メスが出産をすることになったのですが、そこには大きな問題がありました。野生と動物園の一番の違いは、群れで飼育できないことです。群れがあれば、メスが出産した時に仲良しの他のメスを通じてオスに「子どもが生まれたよ」と紹介することができますが、動物園の場合は群れが無いのでオスがメスの出産に気付かないのです。そのため、オスにメスの出産を知らせなければオスが子どもを襲って食べてしまうことも考えられると困ってしまいました。
そこで飼育係は、動物は人間と違って嗅覚がもっとも発達していることを考え、メスの糞と生まれた子どもの糞がのった麻袋をオスの檻に入れてみたのです。毎日それを続けて、オスにメス以外の存在がいること(つまり、メスが子どもを産んだこと)を知らせたのです。
しばらくしてオスへの準備が十分に整ったころ、いよいよオスにメスと子どもを対面させて同じ放飼場に入れる日がやってきました。動物園に来るお客さんの前で何か起きたら大変なので、動物園が休みの日に飼育係みんなで先を布でくるんだ長い棒や消防ホースや鍋などを用意して、万が一の時にライオンと戦えるよう準備してその日を迎えました。私もとても緊張しました。
メスの後ろから4頭の子どもが出てきたのですが、その内の1頭がメスから離れてチョコチョコチョコッと飛び出してきました。するとオスが、その子どもめがけて襲いかかろうとしました。子どもはコテンとひっくりかえって、腹をむけていました。その腹にオスは大きく口を開け、見ていた誰もが「やられたぁ」と思いました。しかし、オスはかみつかずに、子どものにおいをかいだのです。メスが気づき、オスの首筋めがけて体当たりしました。オスはワーッと逃げました。その後にメス、オス、子どもたちが「群れ(プライド)」となり無事に共同生活が始まったのです。おそらく、オスはかみつこうとした瞬間に、においを思い出したのだと思います。メスの糞と一緒にあったにおいを……。
自然界であれば群れがあり、メス同士が団結するのでオスは絶対にメスの団結を崩せず子どもは守られることになります。だから、このライオンの親子たちの通過儀礼にも見えるすがたは「動物園ならではの光景だなあ」と思い、とても印象に残っています。
談=小菅正夫 取材=編集部

さまざまないきものの子育て話が楽しめて、親子にもおすすめ!
『いきものたちのサバイバル子育て図鑑』

動物園で野生動物が子どもを産み育てるためには、工夫が必要なのですね。各地の動物園、水族館の動物の赤ちゃん誕生のお知らせの後ろには、飼育員のみなさんの努力がつまっているのかと思うと、よりあたたかく感じられます。

『いきものたちのサバイバル子育て図鑑』では、コラムでも取り上げられたライオンの子育ての他、さまざまないきものの子育て話が楽しめます! 親子で楽しむにも、おすすめの一冊、ぜひお手にとってみてください。






いきものたちのサバイバル子育て図鑑
監修 小菅 正夫、絵 川崎 悟司
定価: 1,210円(本体1,100円+税)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322007000467/
amazonページはこちら

▼特別ためし読み!!連載
https://yomeruba.com/serial/essays/kosodatezukan/

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小菅 正夫(こすげ・まさお)

獣医師。北海道大学客員教授、旭川市旭山動物園元園長。1948年、北海道生まれ。10年以上続けているNHKラジオ第一「子ども科学電話相談」での回答は、ライフワークのひとつとなっている。総監修に『角川の集める図鑑GET! 動物』、ほ乳類、鳥類監修に『角川の集める図鑑GET! 危険生物』、著書に『<旭山動物園>革命』(以上、KADOKAWA)など多数。

川崎 悟司(かわさき・さとし)

古生物研究家、イラストレーター。恐竜・古生物をはじめとして生物のイラストを数多く手がけ、著書に『カメの甲羅はあばら骨』(SBクリエイティブ)などがある。『キモイけど実はイイヤツなんです。』(KADOKAWA)ではイラストを担当。古生物・現代生物・未来生物を解説したWebサイト『古世界の住人』を運営している。

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