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特集

高橋一生「この映画は、ある意味で〝究極の愛の物語〟だと思っています」――『ロマンスドール』映画化記念インタビュー

撮影:小嶋 淑子  取材・文:奥村 百恵  ヘアメイク:田中真維(マービィ) スタイリング:秋山貴紀  

1月24日に公開される映画『ロマンスドール』は、ラブドール職人の男とその妻の日常を描いた物語。愛し合っていたはずのふたりが徐々にすれ違い、恋愛感情が変化していくさまを丁寧に描いた切ないラブストーリーだ。本作の主人公・哲雄を演じた高橋一生は、妻・園子役の蒼井優とともに、〝夫婦のリアルな距離感〟を繊細に表現。インタビューで、本作への想いに迫る。

 ◆ ◆ ◆

夫婦の日常を丁寧に描く

〝嘘〟をついている夫と、〝秘密〟を抱えた妻。夫婦の10年間の結婚生活を描く『ロマンスドール』は、2009年にタナダユキが発表した小説を、自ら脚本・監督を務めて映画化した作品。本作の主人公・哲雄は、美大の彫刻科を卒業し、ひょんなことからラブドール製作工場で働くことに。そしていつしか、ラブドールの魅力に憑りつかれドール製作に没頭していく。 手先を器用に動かしながら美しいドールの曲線美を生み出す一方で、人付き合いに関しては不器用な哲雄を  映画やドラマのオファーが絶えない高橋一生が深みのある演技で繊細に表現した。  


映画場面写

Ⓒ2019「ロマンスドール」製作委員会


――最初にオファーがあったとき、ラブドール職人という役柄に対して戸惑いなどはありませんでしたか。


高橋:それは全然なかったです。タナダ組と聞いたときから、ぜひこの役をやらせていただきたいと思っていました。タナダさんとは、以前ショートムービーでご一緒したことがあるのですが、こんなに早くまたご一緒できるのはありがたいと感じました。


――タナダ監督のどんなところに魅力を感じますか。


高橋:男性目線でもなく女性目線でもなく、常に中立の立場に立って、まったく偏らない感覚で作品を撮ってらっしゃる方なんだなと思いました。『ロマンスドール』に関して言うと、哲雄という人間は、生きるのが不器用で滑稽な男というふうに映っていてもいいのですが、観る方が男性か女性かで、哲雄の解釈は変わると思います。それを、あまり示唆的になりすぎないように考えて脚本を書かれている。タナダ監督は本当に繊細な方なんです。



――哲雄の妻・園子役の蒼井優さんとは、映画では『リリイ・シュシュのすべて』以来19年振りの共演だそうですね。撮影現場でも息がぴったりで、本番直前までリラックスしていて、いざカメラが回るとすぐに哲雄と園子になっていたと伺いました。


高橋:蒼井さんは、ご自身の俳優としての在り方をしっかりと持っている、素晴らしい方です。今回は、蒼井さんが会話の自然な雰囲気を大切に、常に園子として居てくださったので、僕たちはいつでも哲雄と園子になれました。


――哲雄は、園子に自分の職業を言えないまま一緒に暮らしていますが、高橋さんはこの哲雄をどのようなイメージで演じようと思われましたか。


高橋:それが、これといってないんです。脚本は、いわゆる〝夫婦の日常〟を描いていて、とくにダイナミックな事件が起きるわけでもないので。宣伝的には〝嘘と秘密〟がキーワードになっていますが、その先にある、もっとも重要なものがこの作品の中にはあると思っていました。


――それはなんでしょうか。


高橋:結婚生活の先にあるもの、つまり、〝そのあとも続いていってしまう日常〟だと僕は思っています。それを大事に演じていました。


映画場面写

Ⓒ2019「ロマンスドール」製作委員会


――撮影期間中は、哲雄として生き、現場にいらしたのでしょうか。


高橋:僕は基本、全部自分だと思ってお芝居をさせていただいているので、全くの別の人になりきろうという感覚は諦めています。どの作品にも言えるのですが、僕のある側面を強調したり拡大したりということをやっているんです。この作品は、2018年末はずっとラブドール工場のシーンを撮っていて、年明けの19年に蒼井さんとのシーンを撮り始めました。順撮りではないので、あまり考えすぎると確かめながら芝居をしてしまいそうで怖くて。できる限り脚本に則して、感情のつながりみたいなものはあまり意識せずに演じていました。


――ラブドールを作っているシーンの高橋さんの真剣な眼差しや、器用に彫刻刀を持って造形している姿が印象的でした。事前に監修の方とどんなやりとりをされましたか。


高橋:実際のラブドール造形士の方が監修につかれたのですが、その方は、普段とても淡々と語られるんです。たとえば、「これをこうすれば、簡単にできます」というふうに。撮影前に研修を受けたのですが、造形士のみなさんが、各パートに分かれて黙々と作業されていました。肌の色を配合する人、髪の毛を植える人、というふうに。僕なんかが肌の色を配合すると、ちょっとの差でピンクになってしまう。そんな繊細な作業でした。魂が入る一歩手前までの人形を作ってしまうわけですから、やっぱり造形士の方は〝職人〟なんだと感じました。けれど、僕がそう伝えると、彼らは『そんなことない』と謙遜するんです。そのストイックな姿がより一層素敵だと思いました。



――同じもの作りをする人として、良い刺激になったのではないですか。


高橋:僕ら役者ももの作りなどと言いますが、お芝居は本当に無形なので、ものを作ったという実感が伴ってくるかと言ったら、なかなかそこは難しいところではあるんです。ドールのように形になって、具体的にこれは成功だ、これは失敗だというのがわかるとどんなに気持ちいいだろうと思ってしまいます(笑)。


映画場面写

Ⓒ2019「ロマンスドール」製作委員会


――お話を聞いていたら、あらためて哲雄がドール作りに没頭する様子が蘇ってきました。哲雄は、手先は器用ですが、結婚後の園子に対する愛情表現は少し不器用な男でもありましたね。そのギャップがとても興味深かったです。


高橋:やはり、この作品で観ていただきたいところは、結婚後の哲雄の園子への愛情であり、ふたりの心の行方だと思っています。お互いの愛の形がどう変化するか、どこに落ちていくのか、ある意味で〝究極の愛の物語〟だと思って作品作りに参加していました。タナダ監督や蒼井さんをはじめ、素晴らしいスタッフとキャストに囲まれてこの作品に参加できて、とても幸せに思っています。

原作情報


角川文庫『ロマンスドール』

角川文庫『ロマンスドール』


『ロマンスドール』(角川文庫)
著者:タナダユキ
定価:648円(本体600円+税)
発売日:2013年6月25日
https://www.kadokawa.co.jp/product/321903000338/

映画情報


映画メイン画像

Ⓒ2019「ロマンスドール」製作委員会

『ロマンスドール』
脚本・監督:タナダユキ
出演:高橋一生 蒼井 優 
浜野謙太 三浦透子 大倉孝二 ピエール瀧 渡辺えり きたろう
配給:KADOKAWA
1月24日(金)より全国公開 romancedoll.jp Ⓒ2019「ロマンスドール」製作委員会

story

哲雄(高橋)は、自身がラブドール職人であることを隠しながら、一目ぼれした園子(蒼井)と結婚。幸せな結婚生活を送っていたが、哲雄が仕事に没頭すればするほど、徐々に園子とすれ違ってしまう。そんなある日、園子が家出。久々に家に帰ってきた園子は、哲雄にある秘密を告白する……。

関連記事▶『ロマンスドール』完成披露試写会 舞台挨拶レポート



高橋 一生

1980年生まれ、東京都出身。近年の主な出演作は、『引っ越し大名!』(19年/監督:犬童一心)、ドラマ「凪のお暇」(19年/TBS)など。スナフキンの声を務めるアニメ『ムーミン谷のなかまたち』(NHK BS4K)のシーズン2が放送中のほか、2月から舞台『天保十二年のシェイクスピア』(日生劇場ほか)に出演する。

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