ブックコンシェルジュ
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出会ったら、もう戻れない。「運命の出会い小説5選」
今日はクリスマス。
特別な日には、何か素敵なことが起きるのではないか、とつい期待してしまいます。けれど考えてみると、日常のなかでも、私たちは予想外の出来事を期待しているものです。たとえば電車に乗り遅れた月曜日。道に迷った水曜日。約束が急にキャンセルになった日曜日。予定通りにならないことや、思い通りにいかないことに苛立ちながら、「もしかしたら」と想像します。いつもと違う電車で懐かしい誰かと隣り合わせるかもしれないし、見知らぬ街で忘れられない光景を目にするかもしれないし、空いた時間に立ち寄った書店で感動的な本を見つけるかもしれない。そしてその人は、その景色は、その本は、私の人生を決定的に変えてしまう「運命」なのかもしれない、と。
小説のなかにも、「運命の出会い」が登場します。偶然出会った誰かが、人生をともに歩むパートナーになったり。反対に、ともに生きることもなければ、再会することもない人であっても、心のなかに残り続けたり。いずれにしても、「その人に出会った」というたった一つの出来事が、自分の人生を不可逆的に変えてしまうことがあります。そんな唯一無二の奇蹟を味わえる、おすすめの5作品をご紹介します。
人生を変える奇蹟と出会う。「運命の出会い小説5選」
奥田亜希子『求めよ、さらば』(KADOKAWA刊)
あなたの「愛」は、本当にあなたが感じたものですか? 令和最強の恋愛小説
理想の夫だったあの人は、私を、愛してはいなかった――。
三十四歳、結婚して七年、子供なし。夫には、誰にも言えない秘密がある。
翻訳家として働く辻原志織は、三十四歳。五年の交際を経て、結婚をした夫の誠太は、友人から「理想の旦那」と言われ、
夫婦生活は安定した温かさに満ちていた。ただひとつ、二人の間に子どもがいないことをのぞいては。あるとき、志織は誠太のSNSに送られた衝撃的な投稿を見つける。
自分の人生に奥さんを利用しているんですね。こんなのは本当の愛じゃないです。
二週間後、夫は失踪した。残された手紙には「自分は志織にひどいことをした、裏切り者だ」と書かれていて――。
(あらすじ:KADOKAWAオフィシャルHPより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322008000195/
藤野可織『ピエタとトランジ』(講談社文庫刊)
私たちの冒険は続く――「死」が二人を分かつまで。
親友の名前はトランジで、私はピエタ。
彼女に出会ったその日から、最高にクレイジーな人生がはじまった!
頭脳明晰な探偵のトランジと、彼女に惚れ込む助手のピエタ。トランジは殺人事件を誘発する体質の持ち主で、二人の周囲では次々に人が死んでいく! 事件を解決しつつ各地を転々とする二人だったが、トランジには人類を脅かすさらなる秘密があった――。芥川賞作家が放つ傑作ロマンシス・エンターテインメント!
小池真理子『アナベル・リイ』(KADOKAWA刊)
彼女の愛が、 私の人生を狂わせた――。幻想怪奇小説の到達点。
怯え続けることが私の人生だった。
私は今も、彼女の亡霊から逃れることができないのだ。
1978年、悦子はアルバイト先のバーで、
舞台女優の夢を持つ若い女・千佳代と出会った。
特別な友人となった悦子に、彼女は強く心を寄せてくる。
しかし、千佳代は恋人のライター・飯沼と入籍して間もなく、
予兆もなく病に倒れ、そのまま他界してしまった。
千佳代亡きあと、悦子が飯沼への恋心を解き放つと、
彼女の亡霊が現れるようになり――。
(あらすじ:KADOKAWAオフィシャルHPより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322103000629/
須賀しのぶ『荒城に白百合ありて』(角川文庫刊)
この世界で、ともに生きられない。だから、あなたとここで死にたい。
森名幸子から見て、母の鏡子は完璧な会津婦人だった。江戸で生まれ育った母は教養高く、武芸にも秀でており、幸子の誇りで憧れだった。薩長軍が城下に迫り、白装束を差し出して幸子に自害を迫った時も、母の仮面が崩れる事はなかった。しかし、自害の直前に老僕が差し出した一通の手紙が、母の、そして幸子の運命を大きく変えた。手紙から視線を外し、再び幸子を見た母は、いつもの母とは違うものに変わってしまっていた。その視線を見て、幸子は悟った。
――母は、この美しい人は、いまこの瞬間、はじめて私を「見た」のだ、と。
薩摩藩士の青年・岡元伊織は昌平坂学問所で学ぶ俊才であったが、攘夷に沸く学友のように新たな世への期待を抱ききれずにいた。そんな中、伊織は安政の大地震の際に燃え盛る江戸の町でひとりさ迷い歩く、美しい少女と出会う。あやかしのような彼女は聞いた。「このくには、終わるの?」と。伊織は悟った。「彼女は自分と同じこの世に馴染めぬいきものである」と。それが、伊織の運命を揺るがす青垣鏡子という女との出会いであった。魂から惹かれあう二人だが、幕末という「世界の終わり」は着実に近づいていて――。
この世界で、ともに生きられない。だから、あなたとここで死にたい。
稀代のストーリーテラーが放つ、幕末悲劇、いま開幕。
(あらすじ:KADOKAWAオフィシャルHPより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322206000470/
綿矢りさ『生のみ生のままで 上』(集英社文庫刊)
「男も女も関係ない。逢衣だから好き。ただ存在してるだけで、逢衣は私の特別な人になっちゃったの──」
女性同士のひたむきで情熱的な恋愛を描く長編。
25歳、夏。逢衣は恋人の颯と出かけたリゾートで、彼の幼馴染とその彼女・彩夏に出会う。芸能活動しているという彩夏は、美しい顔に不遜な態度で、不躾な視線を寄越すばかり。けれど、4人でいるうちに打ち解け、東京へ帰った後も、逢衣は彼女と親しく付き合うようになる。そんな中、彼との結婚話が出始めた逢衣だったが、ある日突然、彩夏に唇を奪われ──。女性同士の情熱的な恋を描く長編。
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