2021年師走の駆け込み読書!これだけは読んでおきたいおすすめの本をご紹介
びっくりしました。
いつの間にか2021年が終わるまであと1か月切ってました。
読み逃してる本、ありますよね? 僕はありますよ!(きりっ)
KADOKAWA文芸編集部からは今年もたくさんの話題作を刊行できました。編集部から刊行している作品は全点ぜひお読みいただきたい!のですが、めちゃめちゃ点数もあるし他社から出てる本も読みたいしで到底無理だと思いますので、年末でとーっても忙しくて読書に割ける時間が限られているあなたに「絶対にこれだけは読み逃してほしくないしたぶん読んどけばいろんなところで本読みさんと楽しくおしゃべりできるよ!」な6冊をご紹介します!
(カドブン季節労働者N)
2021年中に、絶対にこれだけは読んでおいてほしい小説6選
佐藤究『テスカトリポカ』(KADOKAWA刊)
メキシコで麻薬密売組織を牛耳っていたバルミロは、敵対組織に命を狙われインドネシアのジャカルタへ逃亡。裏社会を生きる凄腕の日本人医師と知り合って「心臓密売」ビジネスを立ち上げると、その本拠地はまさかの川崎! メキシコ生まれジャカルタ育ちの川崎ノワール爆誕の瞬間です。
この設定だけで超面白いですやんと思って手に取ったら最後、ぐいぐい展開していくリアリティたっぷりなストーリーや次々現れる魅力的な裏社会の住人たちにぐいっと心臓をわし摑みにされて560頁一気読み不可避です。麻薬密売組織や心臓移植手術はもちろん、メキシコやインドネシアの風土や文化、銃の扱いや殺し屋の育て方からアステカの神々に至るまで、緻密に盛り込まれた情報量も凄まじい。かつ、それが物語と乖離していない。
こんな特大スケールのエンタメ小説はめったにお目にかかれませんよ。しかも第165回直木賞&第34回山本周五郎賞のW受賞作品。2021年を代表する大傑作、絶対に読み逃さないでほしいです。
(カドブン季節労働者N)
詳細はこちら⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322003000419/
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池井戸潤『民王 シベリアの陰謀』(KADOKAWA刊)
未知のウイルスが大流行。そんな非常事態だからこそ、リーダーに言ってほしい言葉がある、取ってほしい態度がある。現実の話ではなく、『民王 シベリアの陰謀』の話です。
作中で流行するウイルスはあくまで架空の存在ですが、読む側は現実のコロナウイルス禍と重ねてしまうと思います。しかしさすが池井戸潤さん、現実のドタバタを大きく乗り越えて、笑えてスカッとして最後は感動できる、超一級のエンターテインメント作品に仕上がっています。さらに、「陰謀論」をめぐる大きな驚きが待っているのですが……それはぜひ本作を読んでお楽しみください。
作中の、武藤泰山総理の「俺は国民を守る」というセリフには胸が熱くなります。まさに、非常事態だからこそリーダーにとって欲しい態度です。
しかし、考えてみれば人生は大体において非常事態ではないでしょうか。
国を揺るがすほどの大危機ではなくても、我々の生活は常に小さなピンチにさらされています。だからこそ、私達には池井戸潤作品が、言葉が必要なのではないでしょうか。
(カドブン季節労働者F)
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浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』(KADOKAWA刊)
あるIT企業の新卒採用、最終選考に残った六人が直面したのは「六人の中から一人の内定者を決める」グループディスカッション。どこからともなく現れた六通の封筒にはそれぞれへの告発文。だれが何のために、そして採用は誰の手に――?
浅倉秋成さんの異名は「伏線の狙撃手」。狙撃手って聞くとなんか“一撃必殺のスナイパー”みたいなのを僕は思い浮かべるのですが、伏線張られまくりの本作でびっくりするたびに狙撃されたと考えるとマシンガンとか持ってるタイプの狙撃手なんだなと思った次第です。
それはさておき、このミステリの素晴らしさはふたつに分かれた構成だと思うのです。内定を奪い合う「就職試験」が前半、試験後が描かれる「それから」が後半。もし「就職試験」までで終わっていたら、ただの超面白いミステリでした(十分すごい)。しかし、「就職試験」の先に続いている物語にこそ凄みがある。その瞬間だけでは知りえなかった事実があり、わかった気になっていたことがひっくり返って、ひとりひとりの人間が浮かび上がる。ミステリの枠組みを超えて読まれるべきエンタメ小説です。
(カドブン季節労働者N)
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辻村深月『闇祓』(KADOKAWA刊)
人間の心の闇、という言い方があります。人間が一番怖い、という言い方もあります。
ある種すわりの良い言葉ではありますが、ホラーについてそのような言い方をするときに、恐怖は単純化されて消費しやすい形になっているのではないかと思います。
『闇祓』はまったく新しいホラー小説であり、読んだことの無いような構成のミステリです。
そこに描き出されるのは千差万別、いうなれば七色の闇。人間の心の闇にはこんなに無数のバリエーションとグラデーションがあるのか、とゾッとします。各章の舞台となる高校、団地、会社、……と、身の周りのコミュニティで起こる人間関係のモヤモヤを圧倒的なリアリティで描きつつ、その先にある恐怖へと一気になだれ込んでいきます。
この小説を読むと、身の周りのあらゆる「モヤっとすること」「ザラっとすること」がヤミハラ案件に思えてきます。人にされたこともそうですし、恐ろしいことに自分も結構ヤミハラしてるかも……と思えてきます。
そう、『闇祓』が本当に怖いのは、自分の中にもヤミハラの芽があると突きつけてくることなのです。マウンティングの気配に敏感なのは、自分の中にもその傾向があるからかもしれない。自分のマニュアル化された共感が、他人の暴走を助長しているのではないか……。
もう、読む前には戻れません。ヤミハラ以前/以後で、世界は変わってしまったのです。
(カドブン季節労働者F)
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米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA刊)
日常の謎からクローズドサークルまで、あらゆるタイプの傑作ミステリを生み出してきた米澤穂信さんが新たに挑んだのは、戦国時代を舞台とした歴史ミステリ。織田信長を裏切って有岡城に立て籠もった荒木村重が城内で遭遇する4つの事件。村重ひとりで解ききれず頼りにするのは、牢に捕らえていた軍師・黒田官兵衛。つまり、”米澤穂信が綴る安楽椅子探偵・黒田官兵衛 in 牢獄”ですよ。どう考えても面白い。
特に素晴らしかったのは、今を生きる我々とは違う当時の死生観が、この物語の土台となっていること。なぜ隠さなければならなかったのか、なぜ死ななければならなかったのか、なぜ謎を解かねばならないのか。ミステリをミステリたらしめる問いかけのすべてに、この時代、この城、このシチュエーションである必然性がある。歴史小説の土台の上に、こんなミステリを組み上げられたらもう、脱帽です。ミステリ史に燦然と輝き続けることになる大傑作ですよこれは!と思っていたのは僕だけではなかったようで、年末のミステリランキング4つで1位獲得。さらに第12回山田風太郎賞も受賞してなんと5冠!
今年の年末は、官兵衛は牢獄でたいへんだなー、と思いながらこたつに入って本作を読んでください。
(カドブン季節労働者N)
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君嶋彼方『君の顔では泣けない』(KADOKAWA刊)
文芸編集者をしていると、時折小説家の行動について驚嘆することがあります。
一文字一文字、数ヶ月、時には数年の歳月をかけて何十万文字も文章を書き、しかもそれが最初から最後まで嘘なのです。そして、読む側についても驚嘆します。数十万文字の嘘を読みながら、まだ見ぬ世界を頭の中に作り上げ、この世には存在しない人物の浮き沈みに腹を立てたり涙を流したりするのですから。もし仮に、この現実世界に完全にフィットして、居心地最高だぜという人間がいれば、その人にとってはきっとフィクションなど必要では無いのでしょう。しかし、悲しいことに何かが過剰だったり決定的に欠けている世界に生きているからこそ、私たちは物語を必要とするのかもしれません。
『君の顔では泣けない』は、入れ替わりについての小説であり、入れ替わらなかった者についての小説でもあります。同級生女子と入れ替わった男性主人公は、その体に違和感を覚え、自らの人生に強烈な居心地の悪さを抱えながら、本来あるべきだった場所に戻れないまま、人生を歩んでいきます。その姿は、時に物語を必要としてしまう我々の姿と重なります。
入れ替わった経験は無いけれど、これは私の物語なのではないかと思うのです。世界とのずれを感じながら、泣くことすら出来ない。そんな彼が感情を爆発させる終盤のシーンで、私もまた「ごめん、こんな人生で。」と涙しました。入れ替わったこともない私が謝った相手はだれなのだろう、その先にいるのはどういう存在なのだろうと思いながら。
(カドブン季節労働者F)
詳細はこちら⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322105000257/
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KADOKAWA刊・文芸単行本一覧(2020年12月~2021年11月)
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